民間月面探査レース、日本のHAKUTO含む5チームに

Google Lunar XPRIZEのファイナリストが決定、2017年中に月へ

2017.01.27
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インドのバンガロールを拠点とするTeam Indusは、インド宇宙研究機関のロケットを使って「ECA」という名のローバーを打ち上げる。(ILLUSTRATION COURTESY GOOGLE LUNAR XPRIZE)
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 月をめざす5つのチームは、2017年中に打ち上げを成功させなければ敗退だ。

 2017年1月24日、XPRIZE財団とスポンサーのGoogle社は、「Google Lunar XPRIZE(グーグル・ルナ・エックスプライズ)」にエントリーした33チームのうち、5チームのみが月面探査レースへの挑戦に必須の打ち上げ契約を締結できたことを発表した。(参考記事:「世界初の民間商用宇宙船開発に携った日本人」

 目下のところ、「Moon Express」「SpaceIL」「Team Indus」「Synergy Moon」「Hakuto」の5チームが接戦を繰り広げている。

どのチームが最初に月に着陸すると思いますか? 各チームの概要は記事の後半で紹介しています。

 今回勝ち進んだこの5チームは、次は2017年12月31日までに探査機を月に送り出さなければならない。さらに、月面に着陸した探査機は、どのチームよりも先に500m以上移動して探査を行い、地球に高解像度の映像と画像を送信する必要がある。それができなければ2000万ドル(約23億円)は手に入らない。(参考記事:「米スペースX、壮大な火星移住計画を発表」

 2着のチームには500万ドル(約5億7500万円)が贈られるほか、月面を5km以上移動する、月面に液体の水が存在する証拠を発見する、月面の過酷な環境で機能を失うことなく一夜を明かすなどの顕著な業績をあげたチームにも総額500万ドルの賞金が振り分けられる。(参考記事:「月で銀を発見、水の起源を示す?」

 Google Lunar XPRIZEは、民間の大胆なイノベーションを刺激することを目的とする賞金レースだ。2004年には、「高度100km以上の宇宙空間に乗客を連れていくことのできる再利用可能な宇宙船」を最初に実現させたチームが、別のXPRIZEを受賞した。ヴァージン・ギャラクティック社は、このときの宇宙船「スペースシップワン」の改良型による宇宙観光の実現をめざしている。(参考記事:「飛べ!宇宙へ 宇宙観光の夜明け」

 ファイナリストの5チームは、それぞれが宇宙への正式な片道切符を手に入れた。もちろん、レースは今このときも続いている。さあ、探査機をロケットに積んで、エンジンを始動させ、ショーを始めよう。

SpaceIL(イスラエル)

イスラエルのSpaceILの月面探査機は跳躍型だ。(ILLUSTRATION COURTESY GOOGLE LUNAR XPRIZE)
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 米国のカジノ王から資金提供を受けているSpaceILは、5チームの中で最も早い2015年10月に宇宙へのチケットを確保した。打ち上げにはスペースX社のファルコン9ロケットを使用する(ファルコン9は2016年9月に爆発事故を起こして打ち上げを中断していたが、2017年1月14日に打ち上げを再開した)。SpaceILの「小さくてスマート」なロボット探査機は月面の最初の着地点から跳ね上がり、500m離れた場所に着地することで条件をクリアする予定だ。(参考記事:「スペースXのロケット爆発、悲劇から学ぶ」

Moon Express(米国)

 フロリダを本拠地とするMoon Expressは、2番目に打ち上げ契約を結んだ。順調に行けば今年後半に、Rocket Labという新興の航空宇宙企業のロケットで打ち上げを行う予定である。チームはXPRIZEでの勝敗にかかわらず、月面でレアメタルなどの資源を採掘する技術の開発を続ける予定である。(参考記事:「米社が月面採掘計画、土地の所有権は?」

Team Indus(インド)

 Team Indusの月面探査車は、2014年に火星周回軌道に探査車を投入することに成功したインド宇宙研究機関のロケットを使って月に行く。この探査車が月で何をするのかは、まだ完全には分からない。噂によると、さまざまなチームがロボットに搭載する機械の開発を競っており、月面でビールを作るなどの意表をつく仕事をする可能性がある。

HAKUTO(日本)

 HAKUTOの月面探査車は、四輪ローバー「ムーンレイカー」が二輪ローバー「テトリス」を引っ張る形になっていて、月の表面を覆う砂の下にある溶岩トンネルの中を探索する。Team Indusの探査車と相乗りして月をめざす。

Synergy Moon(国際チーム)

 Synergy Moonは、今回のレースに最初にエントリーした33チームのメンバーの一部からなる合同チームだ。打ち上げには、チームのメンバーであるInterorbital Systems社のネプチューン8ロケットを使用する。ランダーで月面に着陸し、ローバーが月面を走り回って探査を行う。

文=Nadia Drake/訳=三枝小夜子

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