「Mr.クレーマー」石破茂氏、譲位の党内議論で執行部批判 自民総務会
自民党の石破茂前地方創生担当相が27日の党総務会で、天皇陛下の譲位をめぐる党内議論について「一人でも多くの議員が意見を出せる環境をつくることが執行部の責任だ」と訴え、月内に所属議員に書面で意見を受け付ける執行部の対応を批判した。
だが、全議員参加の議論の要求といった具体的な提案はないまま。これまでも執行部を批判してきた石破氏は「Mr.クレーマー」として煙たがられている。(酒井充)
「この進め方には多くの問題がある」。総務会でこう切り出した石破氏は「閉ざされた場で、限定された人数でやることが『静かな議論』だとは思わない」と苦言を呈した。
石破氏は総務に就いた昨夏以降、総務会で何度か譲位の問題を取り上げたが、共感は得られなかった。石破氏は27日、記者団に「譲位、法形式、憲法との関係、皇室が安定的に続くことについて、いろいろな知識を得て議論に臨むべきだと申し上げたが行われなかった」と不満を漏らした。
石破氏は総裁任期の延長や憲法改正などについて、総務会やメディア出演、講演などの場で議員による勉強と議論の重要性を主張してきた。「自民党から議論がなくなったとき、この党は国民の信頼、支持を失っていく」との危機意識があるからだ。
だが、ある総務は「石破氏の話は演説だ。『また始まったか…』という雰囲気になり、まともに相手にしている人はいない」と総務会の様子を明かす。
自民党は譲位をめぐる法整備に関し、高村正彦副総裁を座長とする懇談会で意見集約を図る。メンバーは役員ら14人に限定。大島理森衆院議長は2月中旬以降に各党の意見聴取を行うため、時間の制約がある中では少人数の議論が適切と判断した。400人超の全議員対象の議論は混乱が予想され、「静かな議論」とならない懸念があるからだ。
だが、懇談会のメンバーから外れた石破氏は27日の総務会で「(年始のあいさつや国会で)議員が一番忙しい1月のわずか数日でこの大変な問題の紙が出せるとは思わない」と注文をつけた。天皇陛下が譲位のご意向を示されたのは昨年8月。半年もたつのに譲位に関する考えをまとめていないならば議員失格であり、石破氏の時間がないとの主張は言い訳でしかない。
しかも石破氏からは「具体的にどうすべきか」との明確な提案は聞かれない。全議員対象の議論や勉強会が念頭にあるようだが、「議論が必要だ」の一点張りだ。石破氏は執行部が目指す一代限りの特例法に賛同するのか、別の考えなのかも明らかにしていない。
27日の総務会で、懇談会座長代理の茂木敏充政調会長は、事情次第で2月以降も意見を受け付ける考えを示した。石破氏も受け入れ、期限内に提出して内容を公にすると明言した。
それでもなお不満の石破氏は記者団に「短い期間でばたばた決める結論にあまりいいものがない」と述べた。「ポスト安倍」を意識してか、さまざまな注文をつける石破氏を党首脳はこうあてこすった。
「単純なことを、大いに問題があるように言うのがうまいよな…」