三浦弘行九段の件の時系列まとめ記事(その4)。 3分で振り返るマーカー付き

三浦弘行九段の件(スマホによるカンニング疑惑、ソフト指し疑惑があるとされたが、第三者調査委員会の調査の結果不正はなかった件)については、これまで3度にわたって時系列でまとめてきました。

時系列まとめその3は、追記に追記を重ねてすぎて長くなりすぎたので、ここであらためて、余計な情報は削除したり、第三者調査委員会の報告書を反映したりしまとめておきます。

それでも長すぎて読みにくいので、重要な箇所はピンクのマーカー引いときました。この部分だけ読めば3分もかからずにこれまでの流れを振り返ることができるはずです。

しかし、本来、情報というものはこのようにまとまったものを読むのは危険だと思いますし、たとえば私が何か意図があって作為的に情報を抽出したり、マーカーを引いている可能性があります。振り返り程度にご利用いただければと思います。

2016年7月26日。竜王戦挑戦者決定トーナメント、三浦九段vs久保利明九段。

7月29日関西月例報告会にて久保九段が、対戦相手の31分の離席やソフト指しの疑いを指摘。この場では名指しではなかったが、後に、東理事に三浦九段のことだと伝えた。なお後にわかることだが31分の離席は実際はなかった(離席時間はそれぞれ約6分弱、約3分20秒、約5分弱の合計約14分間)。

8月4日。常務会に疑惑が報告される。

8月8日。この日付で常務会から「電子機器取扱通知」が送付された。不正を疑われる行為は避けるべきだなどの内容で、中旬に三浦九段も確認し、以後10分以上の離席をなるべく避けるようにした。

8月15日、26日、9月8日竜王戦挑戦者決定三番勝負 三浦九段vs丸山九段。3局とも理事が監視したが、不審な行為はなかった。三浦九段が2勝1敗で挑戦者に決定。

9月20日。常務会。竜王戦七番勝負における金属探知機の導入、荷物検査の実施を決定。三浦九段も了承。

9月26日。東西合同月例報告会。電子機器の取扱、新たな規制等について話し合い。三浦九段は「実施したほうが疑われずに済み対局に集中できる(いっそ丸裸にしてもらった方がすっきりする)」などと述べた。

10月3日。A級順位戦。渡辺竜王vs三浦九段。

この時点で渡辺竜王は、三浦九段の離席の多さは感じたがソフト指しをされた印象は持たなかった。しかし、翌日以降に観戦記者や千田六段(当時五段)との意見交換、自ら技巧を用いた検証、久保戦の情報を得たことにより「間違いなくクロだ」と確信。同時に、週刊文春に疑惑が掲載されるという情報を掴んでいた。

10月5日。新規定が12月14日から施行されると棋士らに通知。

10月7日。渡辺竜王が島理事に電話。

10月8日。渡辺竜王が週刊文春の記者に「これ(前日の近藤四段戦)が最後になるかもと思いながら指してました」などというメール(意図は不明)。

10月10日。週刊文春に「極秘会合」と書かれた会合。渡辺竜王、谷川会長、島理事、佐藤(天)名人、羽生三冠、佐藤(康)九段、千田六段が、島理事宅に集合。久保九段が電話で参加。久保九段が31分の離席などを説明した後、渡辺竜王と千田六段が一致率や離席、リモートデスクトップアプリなどのことを説明。渡辺竜王からは週刊文春に掲載されるという旨も説明された

結論というべきものはなかった。会合の後、島理事が三浦九段に電話し疑惑を伝えた。

10月11日。常務会。三浦九段からの聞き取りの前に、常務会メンバーで疑惑内容を共有。谷川会長、佐藤(秀)理事、島理事、中川理事、杉浦理事、渡辺竜王が参加。関西からテレビ電話で東理事、井上理事も参加。遅れて片上理事も出席。渡辺竜王から疑惑の説明があった。

午後1時頃。三浦九段から聞き取り。青野理事、千田六段も参加。

この聞き取りにおける事実関係の説明は、三浦九段側と第三者調査委員会で異なる。三浦九段側は理事から「竜王戦七番勝負が開催されなくなった。大きな損害だとわかっていますか」などと言われ休場届を要求されため、休場届の提出をこの場では了承したと説明。

一方、連盟側は休場は三浦九段から申し出たものとしている。第三者調査委員会は「多数の者による追及的な雰囲気の中で、やむを得ず申し出た側面があったことは否定できない」などとしている。詳しくは後述する示す資料を参照ください。

聞き取り後、三浦九段らは携帯電話販売店へ。島理事は読売新聞社の将棋担当に三浦九段の休場を伝達。杉浦理事は丸山九段に連絡。

ただ、三浦九段は会議の録音をしていた(参加者の同意を得て)つもりだったが、録音に失敗していたことに気付き、急遽聞き取りの一部の再現が行われた。このあたりの詳細や、三浦九段の電子機器提出のくだりは後に示す資料を参照ください。

三浦九段は休場届の提出可否について、12日に代理人と話し合ってから決めたいと連盟に伝えた。一方連盟は、竜王戦七番勝負日程上の都合から、12日15時までに提出しないと厳しく処分する旨を三浦九段に伝えた

10月12日。連盟は遅くとも午前中までに読売新聞社から挑戦者交代の了承を得た

午後1時頃、三浦九段代理人から島理事に休場届は出さないと電話連絡

連盟は竜王戦七番勝負における混乱、信用失墜の回避などのためとして、三浦九段の出場停止処分を決定した。

午後7時。連盟が処分発表、挑戦者変更の会見。

以下、処分後の主な出来事。

10月13日。連盟が二度目の会見。

東京新聞に渡辺竜王のコメント掲載「残念です。(将棋ソフト問題で)疑わしい要素がいくつか出ている状況で、やむを得ない措置ではないかと思う」。

橋本崇載八段が疑惑について「1億%クロ」とツイート。

将棋フォーカスの再放送が、竜王戦特集回から、かりんさん実力テスト回に、差し替えられた

10月14日。竜王戦七番勝負第1局前夜祭。金属探知機で対局者が調べられた。

10月18日。渡辺竜王がブログで「ブログはしばらく対局のことだけにします」などと投稿。

夜。三浦九段が「対局中のソフト使用は一切ない」「連盟に一方的に処分された」などとする反論文書1を発表

同日、三浦九段がNHKのインタビューで「竜王戦は将棋界最高峰の棋戦ですから、辞退するわけがない」などと反論。

連盟はこれまで「これ以上の調査はしない」としていたが、この反論を受け「調査を続ける」とコメント

10月19日週刊文春がWEBの速報で渡辺竜王のインタビューを報じる。渡辺竜王は「指し手の一致、離席のタイミング、感想戦での読み筋などから「間違いなくクロだ」」「最悪のシナリオは『疑惑を知りながら隠していたという事が発覚する事だ』と判断した」などと応えている。

10月20日。疑惑の記事が掲載された週刊文春が発売。同日発売の週刊新潮にも疑惑の記事が掲載された。

10月21日。連盟が、一連の経緯について所属棋士・女流棋士向けに説明会を開催。

丸山九段は会の後、朝日新聞の取材に「三浦九段との対局で不審に思うことはなかった。一連の経緯には今も疑問が残っている」、スポーツ報知の取材には「発端から経緯に至るまで(連盟の対応は)疑問だらけです」、処分の根拠が一致率ということに「僕はコンピューターに支配される世界なんてまっぴらごめんです」と応えている。

連盟は、第三者調査委員会を発足させ本格的な調査をすると発表。説明会における羽生三冠の発言が同委員会発足のきっかけとなった、あるいは発足に尽力されたようだ。

同日、三浦九段が「スマホの提出を拒否していない。そもそも連盟が望まなかった」「スマホ等を(連盟ではなく)調査会社に提出して調べてもらい、結果をそのまま公表する」などとする反論文書2を発表。

10月22日。渡辺竜王がブログを更新。「今回の件、遅かれ早かれこの話が世に出た時には今と同じを立場を取っていたと思います。(棋譜を調べた観点から) 調査中ということもあり、ここでは多くを語れないことをご了承下さい」

10月27日。この日発売された週刊文春が三浦九段の反論に再反論。前回の4ページの記事に比べて、今回は1ページ弱の規模の記事。内容も「言った言わない」程度。

同日、連盟が本件に関わる第三者調査委員会を発足

10月29日千田翔太五段が、自身の意見や意図と、報道や伝わっている内容が異なっている(?)とツイート。具体的にどの報道のことなのかは、わかりません。

10月30日橋本崇載八段が、「私が三浦弘行九段の不正を断定した。という事実はありません」などとツイート。「1億%クロだと思う」のツイートはスタッフがしたものだと示唆(?)。ちなみにこの「スタッフ」の部分のツイートは遅くとも2017年1月22日までに削除されたようだ。

10月31日連盟の月例報告会が開催、渡辺竜王本人からも経緯が説明されたようだ

終了後、渡辺竜王がスポーツ報知の取材に応え、「三浦さんを処分してほしいとは全く言っていない」と発言。産経が報道した「(三浦九段を処分しないなら)竜王戦は指さない(出場しない)。タイトルを剥奪されても構わない」との発言も事実ではない、と話した。

11月1日渡辺竜王がブログで、上記の報道について「自分の発言については島さんとの間での言葉のあや、解釈の違い、さらに報道を介すことで自分の本意ではない形で世に出てしまいました」「常務会が竜王戦の開幕前に三浦九段に話を聞く、までが自分の行動意図です」と経緯説明。

11月2日渡辺竜王が連日のブログ更新。報道されたことの誤解を解く努力をしなかったことを反省。「急所を自分のブログで書くのを怖れてメディア任せにしたのもいけなかった」「島さんや千田君にはピンチの時に助けてもらって本当に感謝」と記す。

11月4日連盟第三者調査委員会が初会合

11月6日渡辺竜王がブログで「今回の件で将棋ファンの皆さまにご迷惑をお掛けしたことをお詫びします」とお詫び。

11月7日(竜王戦七番勝負第3局初日)。三浦九段が、連盟に処分撤回を求める3度目の反論文書を発表。

11月12日週刊文春デジタル「文春砲Live」で、本件について放送。記事を書いた中村徹記者は出演せず。

12月10日。橋本崇載八段が著書を発売。この中で三浦九段の疑惑にも触れています。感想をこちらの記事に書きました。

12月16日。週刊金曜日が本疑惑に関する記事を5ページ掲載。こちらの記事に感想などを書きました。

12月22日。竜王戦七番勝負第7局が終了。渡辺竜王が防衛。丸山九段は対局後のコメントで「(交代は)びっくりして一度は拒否したが、盤上ではベストを尽くそうと思った」と発言(毎日新聞)。

12月26日第三者調査委員会が会見。概要は「疑惑の根拠とされたものいずれも実質的な証拠価値は乏しく、不正の証拠はない」「出場停止処分の妥当性は、七番勝負開幕戦を直後に控えた状況で、連盟所属棋士および公式戦における規律権限の範囲内であり、当時の判断としてはやむを得ない」こちらの記事をご覧下さい。

12月27日。第三者調査委員会の報告書を受け、三浦九段と将棋連盟がそれぞれ会見。三浦九段側は報告書の一部を不当だとし、連盟側は報告書を受け入れたようだ。こちらの記事をご覧下さい。

2017年1月3日。「YAMADAこども将棋大会」(群馬県高崎市のヤマダ電機 LABI1高崎)に、出場停止処分が明けた地元出身の三浦九段がサプライズで登場し挨拶。連盟は三浦九段の出席を一旦取り消していたが、ヤマダ電機が「名誉回復の機会に」と、昨年末に連盟や三浦九段側に掛け合い、急きょあいさつの場が設けられることになったとのこと。(毎日新聞)

1月4日。「上州将棋祭り」(群馬県高崎市のヤマダ電機 LABI1高崎)で、谷川浩司会長が謝罪。「三浦さんに2ヶ月半に渡り辛い思いをさせてしまいましたこと、上州将棋祭りへの出演に関しヤマダ電機様はじめ関係の皆様にご迷惑おかけしたこと、三浦さんの地元でファンも多いと思います、将棋ファンの皆様にご心配おかけしたこと、深くお詫び申し上げます」

1月5日。羽生善治三冠が指し初め式後、三浦弘行九段についてコメント。「一日も早く三浦さんが復帰して、将棋界がいつも通りに戻ることを願っています」(報知)

1月12日週刊新潮に三浦九段の件。昨年の処分直後の同誌記事内容を元に経緯の振り返り(文春が報道した経緯とはやや異なる)と、匿名の連盟関係者の話を元に記事構成。

1月16日。日本将棋連盟が、公式サイト上で第三者調査委員会の報告書(概要版)を開示。しかしドラフト版も同時に公開してしまうハプニングも。

1月17日。竜王就位式で渡辺竜王が挑戦者の変更について「(週刊誌の)取材に応じたことで三浦(弘行)九段、読売新聞社様、将棋ファンの皆様方にご迷惑をおかけしました。申し訳なく思います」と謝罪(朝日新聞)。

1月18日。連盟の谷川会長が辞任するとの報道。後任には佐藤康光九段、外部招聘などの声があるとのこと(報知)。

同日、谷川会長が辞任を発表。記者会見で、辞任の理由は「将棋ファンのみなさま、主催者・協賛社のみなさま、そして三浦弘行九段に誠意をお伝えする」ことと、自身の体調不良だとしています。(朝日新聞)

1月19日。連盟の理事会で谷川会長、島理事の辞任が承認される。

1月21日。月例報告会。会長らの辞任が報告された。一部の棋士からは他理事の信任を問う請求書が提出されたとのこと(スポニチ)。

田丸昇九段が会の様子をブログに書いており、それによると「約20人の棋士が発言しました。大半が常務会を批判する内容」だったとのことですが「発言はしないけど、常務会を支持する、現状維持を望む、穏やかに収めてほしい、事態を見守る、などという棋士たちも多くいます」と。

1月25日。後任の理事に、佐藤康光九段、井上慶太九段が立候補。新会長は佐藤九段が有力とされる。(毎日新聞)


今後の予定

2月6日、連盟臨時総会にて新理事が決定。その後の理事会にて新会長が決定。

2月13日、三浦九段の復帰戦である竜王戦1組ランキング戦、対羽生善治三冠戦。

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資料

第三者調査委員会の報告書(概要版)が最も詳しいです。この記事の多くは同報告書を参考または引用しています。

第三者調査委員会からの結果報告書の開示|将棋ニュース|日本将棋連盟

三浦弘行九段のソフト不正疑惑の時系列まとめ記事(その3)

三浦弘行九段の処分に関する第三者調査委員会の記者会見概要

第三者調査委員会の報告を受けた三浦弘行九段と日本将棋連盟の会見概要

管理人より。

今回記事を作った目的は、この記事の冒頭に書いたことに加えて、前回の記事(上記のその3)にいまだにアクセスが多くて、情報が古いにも関わらずこの状態を放置しておくのはまずいと思ったためです。

この記事は今後も新情報が出てくれば更新していきます。また新情報がたまってきたら次の記事を書くことにしますので、よろしくお願いします。

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コメント

  1. JL より:

    管理人さんへ

    まとめ記事ありがとうございます。こちらのサイトは皆さまの意見交換のサロンのような感じもありますね。ちょっと記事で気になった点を挙げさせていただきます。ご参考としていただけますと幸いです。

    >31分の離席は実際はなかった

    6分、3分、5分の合計3回だった、という情報を記載したほうが正確では、と思います。
    (久保九段が錯覚するだけの要素はあったかと。)

    >この時点で渡辺竜王は、三浦九段の離席の多さは感じたがソフト指しをされた印象は持たなかった。しかし、翌日以降に観戦記者や千田六段(当時五段)との意見交換、自ら技巧を用いた検証、久保戦の情報を得たことにより疑惑を確信。

    疑惑を確信、という表現はちょっと変かなという気がしました。

    私の見解ですが、週刊文春では竜王は黒と確信との記載、渡辺さん自身は文春の記事は概ね間違っていないとブログに書いていることから、不正をされたと確信を持ってしまったのだろうなぁと思っています。

    渡辺さんは、まずは限られた情報では確信せず疑惑のレベルにとどめ、いろいろな人の意見を聞く、もっと多くのデータで分析する、等を経て確信するような考え方を持つべきであったと思いますし、今後はそうあって欲しいと願っています。

    • 管理人 管理人 より:

      ご指摘ありがとうございます。後ほどまとめて修正します。
      取り急ぎお礼まで。

  2. 平岡組中部支部 より:

     管理人さま、新たなまとめ、ありがとうございます。

     JLさんが指摘された渡辺竜王のくだり、調査報告書(概要版)の表現は「疑いが確信に近づいた」ですね。引用部分はできるだけ原文通りに書く方がいいかと思います。もっともこの部分、ドラフト版の表現は「疑いを強めた」で、改変疑惑がかかった部分の1つですが。

     そのドラフト版、手違いでサーバーにアップされていたようで、確かにファイルはそこにあったのですが、ファイルへのリンクを貼ったりしていたわけではないので、公開したと言えるかどうかはちょっと微妙かと。

     他にも気になる部分はいろいろありますが、管理人さまが最初に「振り返り程度にご利用いただければ」と断られている通り、全体の流れや前後関係、日時などを確かめるにとどめ、利用者の側でできるだけ一次資料にあたることが望ましいと思います。現在もネット上にはいろいろな方がいろいろなことを書いていますが、連盟を批判する方も、その逆の方も、最近どちらも事実誤認や認識不足が多く目に付くのがちょっと気になっています。

    • 管理人 管理人 より:

      ご指摘ありがとうございます。

      表現については、ご指摘の部分を含め、修正してまいります。今は渡辺竜王自身も認めている文春の表現(「これは間違いなくクロだ」。そう確信した・・・)を採用してみました。

      この記事、最初は「3分でわかる」をコンセプトに、さらっと読めるように(なるべく文字数を減らすように)書いていて、途中で無理だと気付いたため(マーカーすることにしました)、正確な引用が出来てない部分があります。徐々に直していきます。

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