トランプ米大統領、選挙公約の“目玉”「メキシコ国境に壁」大統領令に署名
トランプ米大統領(70)は25日(日本時間26日)、不法移民の流入を阻止するため、メキシコ国境に壁を「直ちに建設する」と表明し、国境管理強化を指示する大統領令に署名した。不法移民の一部に就労許可を与えるなど寛大だったオバマ前政権の政策を転換し、大規模な強制送還に乗り出す構え。31日に予定されているペニャニエト大統領との会見を前に、両国間の問題の新たな火種となることは間違いない。
選挙戦の公約で“目玉”として何度も繰り返した「国境の壁」の実現に向けて、トランプ氏が大統領令に署名した。
この日、トランプ氏は国境管理や移民政策を管轄する国土安全保障省を訪問。「今日から国境管理を取り戻す」と述べて国境警備隊員を5000人、入管当局者を1万人それぞれ増やす方針を示した。米メキシコ国境は3200キロにわたり、「直ちに建設する」と表明。ABCのインタビューでは、米国が建設費用を当初負担してもいずれメキシコが支払うと述べ、建設着手は「数か月内」と語った。
20日の就任からわずか1週間で次々と重要公約の早期実現に道筋をつけたのは、トランプ氏を支持する白人の中低所得者層(プア・ホワイト)に実行力をアピールする狙いがある。インタビューでは、オバマ政権が禁じたテロ容疑者に対する「水責め」など過酷な尋問の復活にも意欲。シリアなど中東諸国からの移民や難民の受け入れも大幅に制限する方針で、排外主義的な風潮が懸念される。
また、トランプ氏はこの日、治安対策の強化を指示する大統領令にも署名。不法移民に公共サービスを与えるなど寛容な措置を取る「聖域都市」への補助金を停止するとした。シカゴやニューヨークなどが対象とみられ、不法移民の取り締まりを迫った。
これに対し、メキシコのペニャニエト大統領は「残念であり、非難する」と国民向けにテレビで述べ「メキシコは壁(の効果)を信じていない。費用は払わない」と繰り返した。米メディアはペニャニエト氏が31日に予定されているトランプ氏との会談中止を検討していると伝えたが、別のメディアは首脳会談は予定通り実施されるとビデガライ外相が述べたと報じた。
会談前のタイミングでの大統領令署名により、ペニャニエト氏の面目は潰された形。トランプ米政権への対応が「弱腰」だとして、ペニャニエト氏の支持率は低迷しており、強い姿勢を取る必要に迫られている。
メキシコ市に住む技師、ハイメ・マルティネスさん(39)は米大統領令について「壁の建設は(移民問題の)解決にならないと思うし、メキシコに費用を払わせるなんてとんでもない。メキシコの大統領はもっと強い姿勢で拒否すべきだ」と憤慨した。
◆米大統領令 立法手続きを経ずに米大統領が直接、連邦政府機関や軍に発する命令。1942年2月19日にルーズベルト大統領が出した大統領令9066号は、日系人の強制収容につながった。