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【主張】
財政再建目標 黒字化の道筋を洗い直せ
実現できそうもないまま看板を掲げるのは、財政再建への取り組み自体の現実味や信頼性を損なうのではないか。
内閣府が、平成32年度の国と地方の基礎的財政収支(PB)が8・3兆円の赤字になるとの試算を示した。税収減などが原因で、昨年7月時点の予測から2・8兆円も赤字幅が拡大した。
経済再生と財政再建を両立させて黒字化を果たす、という安倍晋三政権の目標は、すでに疑問視されていたものだ。成長に伴う税収増で黒字化できるという説明に、もはや説得力はないだろう。
現状では目標達成が絶望的な状況を正直に国民に説明し、黒字化への道筋を洗い直す。それが政権のなすべきことである。
首相は施政方針演説で、アベノミクスの成果を重ねて訴えた。だが、消費税増税を2度にわたり延期し、経済対策を講じても、景気に力強さはみられない。むしろ、円高に伴う企業収益の悪化や消費の伸び悩みで、税収の見積もりは想定よりも落ち込んだ。
試算は名目3%、実質2%という高めの成長率を前提にしている。高すぎるという批判は当初からあった。思ったほど税収が伸びないことが、それを裏付けている実態を直視すべきだろう。