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混じり合うオオカミとコヨーテ「コイウルフ」
image credit:Smithsonian Magazine
ヨーロッパ人の移住者がカナダ、オンタリオ州南部へ向かうと、農場を作るために大量のオオカミを殺した。まったくの偶然であるが、これが進化の引き金を引き、新しい種を登場させた。「コイウルフ」である。
オオカミという脅威が減少したことで、草原のコヨーテが彼らのテリトリーにまで侵入。パートナー探しに苦労していたオオカミはコヨーテや移住者が飼育するイヌと交配することにした。
こうしてコイウルフが誕生した。親よりも大きく、強靭で、体重はコヨーテの2倍もある。足が速く、筋肉質で、顎も大きいため、ハンターとして有利な条件を備えている。
現在、北アメリカ東海岸には無数のコイウルフが生息する。森から聞こえる鳴き声は特徴的で、オオカミのように低いうなり声から、コヨーテの金切り声のような高音に変わる。
9. 羽が短くなりつつあるツバメ
ネブラスカ州の道路では、サンショクツバメがわずかだが重要な進化を遂げている。
このツバメは通常断崖で暮らしている。ところが、この場所は嵐の季節には危険な場所となり、しばしば巣が流されてしまう。そこでツバメは道路や橋などに巣を作るようになった。
最初は上手く行っていないように見えた。無数のツバメが車に轢かれて、その死骸が道路に残された。すると不意に死骸の数が減少したのだ。
調査からはツバメの羽が短く進化していることが判明している。ミリ単位の違いでしかないが、これによって車が接近したときに素早く飛び立てるようになった。機敏に動けるようになったことで、交通事故で死ぬ個体が減ったのだ。
8. 木々の高い場所に引っ越したトカゲ
フロリダに浮かぶ島に生息するグリーンアノールというトカゲはたった15年で劇的な変化を遂げた。
本来の生息場所は、キューバから侵入したブラウンアノールによって、それまでのような暮らしができなくなっている。同じ餌を巡って競合しなければならないことに加え、ブラウンアノールはグリーンアノールの子供を食べるという習性があるのだ。
そこでグリーンアノールは木のより高いところに引っ越すようになった――そして体も変化している。過去15年でつま先のパッドが大きくなり、足の鱗もくっつきやすくなっている。これほど短い期間で起きたものとしては劇的な変化であり、おかげで生き延びることができている。
7. 視力を失いつつある洞窟の甲殻類
image credit:BBC
洞窟には数百万年前には頭から小さな目が飛び出していた甲殻類が潜んでいる。彼らが暗い洞窟を奥へ奥へと移動するにつれて、目はあまり役に立たなくなり、やがて遺伝子プールから消えて行った。
そうした甲殻類の多くには、今でもかつての名残として小さな眼柄がついているが、もちろんまったく役に立たない。何も見えないのだから。そして、その眼柄もゆっくりと消え始めている。
これは研究者にとって甲殻類の脳の変化を知るチャンスでもある。彼らの脳には現在でも視覚のための領域がある。そこもまた役に立っておらず、徐々に消えつつあるのだ。
やがて眼柄ともはや役立たずの脳領域は完全に消えると予測されている。
6. 色が変わりつつあるフクロウ
image credit: nature.com
フィンランドのモリフクロウは色が変わりつつある――おそらくそれは温暖化が原因だ。
このフクロウの羽は茶色か灰色で、親の色は子供に受け継がれる傾向にある。最近までフィンランドの多数派は灰色だった。この辺りの厳しい冬ではこの色が有利だったからだ。一方、茶色いフクロウは長く生きることができなかった。
しかし気温が上昇するにつれて、冬が以前よりは生き残り易いものになっており、茶色いフクロウは個体数を増やしつつある。自然選択が再び彼らに有利に働きだした――フィンランドの森の色を変える小さな進化的変化が起きている。
5. 化学物質に適応しつつあるハドソン川の魚
image credit: National Geographic
ハドソン川には体長10センチほどしかない大西洋トムコッドというタラの仲間が生息している。彼らは豊かな生態系があるここで数百万年も繁栄してきたが、やがて川に化学物質が垂れ流されるようになる。
とりわけPCBが致命的だった。魚の心臓は縮み、鼓動が困難になり、苦しみながら死んで行った。
だがトムコッドはそれに適応し、いまでもハドソン川で繁栄している。その秘密は奇妙な遺伝子の変異だ。これは他の地域では一部のトムコッドしか持たないものだが、ハドソン川の個体は全員が持っている。
ハドソン川のトムコッドは、遺伝子の1つが持つはずの6組のDNAが欠けている。このため化学物質は受容体に結びつくことができない。こうして魚の命を奪う影響力が抑えられた。しかもトムコッドを狙う捕食者は死に絶えている。
4. 牙を失いつつあるゾウ
image credit:The Independent
アフリカゾウは密猟が原因で変化している。これまで長い牙はゾウにとって進化の点で有利だった。ライバルのオスを追い払い、メスを獲得するために便利だっため、それが子孫に継承された。
密猟がそれを大きく変えた。密猟者は高く売れる長い牙のゾウを狙う。その結果、そうしたゾウは子供を作る前に死んでしまうようになった。競争がなければ、短いゾウでもメスを得ることができる。こうして短い牙が子供に受け継がれるようになった。
19世紀半ば以来、アフリカゾウの牙の平均的な長さは半分になった。中には牙をまったく持たずに生まれてくるゾウもいる。1930年代、牙のないゾウは非常に珍しく、全体の1パーセントでしかなかった。
だが密猟が最も酷い地域では劇的に変化している。1997年、ルアングワでは38パーセントが牙を持っていなかった。
3. 鳥用の止まり木を育てる花
image credit:National Geographic
南アフリカに自生するバビアナ・リンゲンス、別名ラッツテイル(ネズミの尻尾)という花はその場所に応じて姿を変えている。この花に少々問題がある。その周囲に鳥を食べてしまう捕食者が存在するのだ。そのため受粉を助けてくれる鳥が寄り付かなくなってしまった。
そこで一部の地域のラッツテイルは鳥が掴まれるような止まり木を進化させた。これは特にタイヨウチョウにとって魅力的だった。この鳥が止まって、花の蜜を飲むにはぴったりのサイズだったのだ。
タイヨウチョウだけに頼らなくてもいい地域では、そこまで大きな止まり木を育てる必要はない。私たちはこれを目にするたびに、小さな進化が現在も機能している証拠を見ていることになる。
2. 毒に耐性を持ち始めたネズミ
image credit:seeker.com
ドイツでは、ネズミを嫌うパン屋がワルファリンという猛毒の毒を仕掛けている。これに齧りついたネズミはもう長くなく、パン屋は一安心だった。
だがアルジェリアのネズミはこの毒に耐性を持っている。そしてドイツのネズミがアルジェリアのネズミと交配し始めた。結果、ドイツのネズミは毒への耐性を持つ雑種へと進化しているのだ。
人間の武器が効かないため、現在この雑種はドイツで数を増やしつつある。ワルファリンを齧ってもケロリとしているのだ。進化を通して繁栄しようとしているということだ。
1. 骨盤が小さくなりつつある人間
人間でさえ、かすかな変貌を遂げつつある。その1つが現代医療のために小さくなっている骨盤だ。
かつて出産するには産道が狭すぎる女性は、子供を産もうとして命を落とした。だが現在では帝王切開によって問題なく出産することができる。
命が救われるようになったことで、人類は自然選択を克服しつつある。狭い産道を持つ女性が子供を産めるようになり、その結果、骨盤が縮んでいるのである。
1960年代以降、手術なしで出産をするには産道が狭すぎる女性は20パーセント増加した。この傾向は今後も続くと考えられている。つまり、さらに多くの女性が出産時にメスに頼るようになるということだ。
via:10 Species That Are Evolving Right Now/ translated hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
肩幅の狭い男が増えてきた気がする
2. 匿名処理班
生き物は大変だなー…と思ったがそういや人間だった…
3. 匿名処理班
退化と進化の違いが分からなくなってもーた
4. 匿名処理班
※1
肩身が狭いからだろう
5. 匿名処理班
筋力が衰えている日本人が多いからね
世界全体では変わらない気がする
6. 匿名処理班
※1
満員電車に対応したな
7. 匿名処理班
中世以前の人の前歯はかみ合っているって聞いた事ある
上前歯が前に出るようになったのは近代なんだって。
スピードの違いこそあれ 生きている生物は皆現在進行形で進化している生物だよ
8. 匿名処理班
肩身の狭い男も増えてきた気がする
9. 匿名処理班
それは気のせいだろ
10. 匿名処理班
オシリスキーとしては悲しい進化
11. 匿名処理班
※1
肩身の狭い、じゃなく?
12. 匿名処理班
猫は人間に好かれるように進化してる
13. 匿名処理班
止まり木でほっこり
14. 匿名処理班
ドットコムに見えた
15. 匿名処理班
今の地球で生き残るには、人間が生み出した環境に適応するしかないってことだな
16. 匿名処理班
ネズミの骨盤と変えてくれ
17. 匿名処理班
※3
退化も進化のうちやで
進化と退化は対立する概念では無い
18. 匿名処理班
人為淘汰ばっかりだな
19. 匿名処理班
確かにネズミの毒耐性の獲得は驚異的だ
毒餌はほぼ効かなくなってる
金網の罠も既に見破っていて中に入らない
だからエサ場を用意してその周りをトリモチシートで囲うと
餌に夢中になって尻尾がトリモチに引っかかって面白い様に捕まる
20. 匿名処理班
進化というよりはまだ選択の状態だな
それより最も進化が短期間で進んでいるのは微生物だけどね
21. 匿名処理班
いつか人間の心の本能も他の人より優位に立つより上手くやっていく方向に進化していくといいな。
22. 匿名処理班
ガラガラヘビの尻尾のガラガラ
あれも小さい個体が増えてるそうだ
大きな音で威嚇すると
人に殺されちゃうから
音の小さいあるいは鳴らさない個体が
生き残る
23. 匿名処理班
※12
進化してーなーおれもなー
24. 匿名処理班
人間によって作られた小型犬の一部は自然分娩できないらしいけど
人類も増えているってなんとも皮肉を感ぜざるを得ない
25. 匿名処理班
骨盤なんかより、親不知とかの方が驚異的。だって生えない人間がいるんだぜ?
26. 匿名処理班
自然分娩出来なくなるって、進化というより欠陥化して言ってると言えるのでは…
手術でお産できない場合はつまり死ぬってコトよね…
27. 匿名処理班
伊集院の本で読んだけど、ゴキブリも毒への耐性が著しく進化してるらしい。
強化ネズミと並んで悪夢でしかない。
28. 匿名処理班
コイウルフ、ツバメ、トカゲと読んでいて人間はどうなんだろう?と思ってたら最後に「骨盤が小さくなりつつある人間」とあり驚いた。
でも納得、ぜんぶ繁殖に関するものだね。
男性女性共に不妊症が増えてるのも、
人工授精の成功率が高くなってきているからかも知れないね。
29. 匿名処理班
※17
そーなんですか!
知らなかった..
教えてくれて ありがとうございます(^ ^)
30. 匿名処理班
たしかに古写真などでみる昔の女性のおしりは現代人よりすごく大きい。
31. 匿名処理班
ヒトの場合、歯の本数が一番のトピックスかと思ってた。骨盤は女性限定の話だけど、歯なら男女問わずだし。
最近は親知らず分の4本、根っこさえないヒトが増えていると聞いたけど、あれは何かの間違いだったのかな?
32. 匿名処理班
野生動物にとっては歴史上淘汰圧が最も強い時代だからな
そしてこれからももっと強くなっていく
人類が定住していない土地を除いて、人類という征服者に譲歩して折り合いを付けられた種族だけしか生き残れない時代になっている
33. 匿名処理班
いまだに先進国で普通分娩が一般的なんて日本くらいなもんだよね。
アメリカでは帝王切開が、フランスでは無痛分娩が一般的だよね。
日本は辛い思いして産まないと愛情が湧かないとか言ってる老害も多いし。
普通分娩を否定するわけじゃないけど、他にも出産方法の選択肢が増えるといいよね。
私は無痛分娩予定だったけど、赤ちゃんが急変して緊急帝王切開だった。
昔だったら死産か私も死んでたかもしれないと思うと今は本当いい時代なんだなぁ