こんにちは、Shin(@Speedque01)です。トランプ大統領が誕生して1週間たちましたが、彼はガンガン大統領令に署名しています。
トランプ大統領は就任前にさまざまな宣言をしていましたが、それは口だけのものではないことがわかってきました。もちろん、大統領令に署名したからといってそれが絶対に履行されるものではないのですが、極めて強い権限を持つものであることは確かです。
米大統領令
大統領が議会の承認や立法を経ずに直接、連邦政府や軍に発令する命令。憲法に明確な記述はないが、法律と同等の効力をもつ。第2次世界大戦時のフランクリン・ルーズベルト大統領は、12年間の在職中に3522件も発令。
オバマ政権では、気候変動対策の強化や化学物質管理の安全性向上など170件近く出されている。議会は反対する法律を作ることで大統領令に対抗できるほか、最高裁判所も違憲判断を出すことがある。
(2014-01-30 朝日新聞 朝刊 2外報)
ルーズベルトさん、さすがに3,522件は発動しすぎでは・・・。
さて、以下でトランプ大統領が1月27日時点で出している大統領令をまとめてみましたので、見ていきましょう。
メキシコ国境にグレートウォール
まず一番インパクトがあったのがコレ。さすがにこれを本気でやるとは思っていませんでした。
大統領令はメキシコとの国境沿いに「物理的な壁を直ちに建設する」と明記した。国境を警備する職員を追加で5000人雇うほか、国境近くに不法移民の収容施設も整備する。こうした施策の実現に必要な作業を始めるよう国土安全保障省などの連邦政府に命じた。
議会の承認が必要な建設費用の見積もりも指示した。メキシコと陸続きで接する全長約3200キロメートルの国境には既に鉄製の柵などがあるが、東西を横断する「壁」を建てるとなると巨額の費用がかかるとみられている。
「メキシコとの国境に壁を作る!」というのは、非常にぶっ飛んだアイディアであり、ある意味とてもわかりやすいものです。とはいえ、本気で実施するとしたらいくらかかるかわからないレベルですし、メキシコとの関係も悪化するどころの話ではないですよね。
しかし、大統領令を発動してマジで実行に移そうとしているトランプ大統領。この人は、本気なのかもしれません。
もちろん、メキシコ側も黙ってはいません。
メキシコのペニャニエト大統領は25日夜、トランプ米大統領がメキシコとの国境沿いに壁を建設する大統領令に署名したことは「遺憾」だとし、建設を「認めない」と述べた。
まあそうですよね。
しかし、こんな状況でメキシコ大統領とは、本当に大変そうです。ペニャニエト大統領はまだ若くて体力もありそうですが、無理はしないでほしいものです。
オバマケア撤廃
また、ずっと主張していたオバマケアに対しても、撤廃に向けた大統領令に署名しています。
オバマ元大統領の失策としてたたかれていたオバマケア。これについては即座に撤廃するとトランプ大統領は述べていましたので、早速実施したということになります。
トランプ米大統領は就任初日の20日、各政府機関に対しあらゆる規制の凍結を指示するとともに、オバマ前大統領の主導で成立した医療保険制度改革(オバマケア)を見直すための大統領令に署名した。
トランプ大統領は就任パレード終了後、すぐに大統領執務室に入り、選挙戦で公約していたオバマケアの見直しに着手した。
本当に即座にやったのですね。この行動力はさすがというところです。
オバマケアについては、下記の記事が非常にわかりやすいです。
オバマケアで保険料値上がり!医療費が高すぎるアメリカ | 看護師がやさしく教える医療とお金の話
一方のアメリカでは、公的医療保険は、低所得者、低障害者、高齢者向けのみです。そのため、公的保険に入っていない人が圧倒的に多数です。この大多数の人たちは、そのままだと無保険状態になってしまいますから、職場を通じて、あるいは自分で、民間の医療保険を契約しないといけません。
しかし、保険料が払えないなどの理由から、2011年時点では、15%もの人が完全に無保険の状態で生活していたのです。
この状況を改善するために成立したのがオバマケア。そのオバマケアの概要はこのようなものです。
- アメリカ国民(永住権を持っている外国人、労働ビザがある外国人も含む)に、一定の基準を満たした医療保険への加入を義務づけ、加入しない場合は罰金を課す
- 低所得者向け公的保険の加入対象者を拡大する
- 政府が定めた貧困レベル以下の人たちに、保険料の税控除を行う
- 従業員50人以上の企業に、職場を通じた医療保険加入を促す
- 医療保険は、政府や州政府が設ける医療保険取引所で購入できるようにする
TPPからの正式離脱
TPP(環太平洋連携協定)も兼ねてからのトランプ大統領が主張していたことです。これも行動が早かったですね。
TPPとはなにか。簡単に言うと、太平洋の周り(環太平洋)の国々が、関税を撤廃したり安くしたりすることで、ヒト・モノ・カネの流れを促進する協定のことです。
太平洋を囲む国々が輸入品の関税をなくしたり、人やお金の行き来をしやすくしたりして、自由な経済圏を作る取り組み。その枠組みを作るため、現在進められている交渉の対象は21分野あり、知的財産、政府調達(公共事業)、金融、物品の市場参入(関税撤廃)など。参加国は日本を含め12カ国。交渉は今回で18回目で、今年中の妥結をめざしている。今回から参加した日本は、原則として合意済みの事項について議論を蒸し返せない。
この協定は、「アメリカのモノを買え、アメリカ人を雇え!!」というポリシーに沿って政策を実行しようとしているトランプ大統領の姿勢と真っ向から反対するものです。そのため、彼はTPPからの脱退を強硬に主張し、大統領令の署名となったわけです。
トランプ米大統領は23日、選挙公約通り、環太平洋連携協定(TPP)からの正式離脱に関する大統領令に署名した。中国の影響が増す中、米国はアジア諸国と距離を置くことになる。
トランプ氏は、大統領令が「米労働者にとって素晴らしいことだ」と指摘。この日行われた労働組合幹部との会談では「すべての人や企業を国外移転させるばかげた貿易協定を停止させる」と述べた。
妊娠中絶を支援する国際団体、ペアレントフッドへの資金供与中止
強硬に妊娠中絶に反対するトランプ氏。彼はかねてから妊娠中絶を支援する国際的NGO団体ペアレントフッドへの資金供給停止を主張していました。そして、その履行を指示する大統領令を出したのです。
トランプ米大統領は23日、ホワイトハウスで3件の大統領令に署名した。環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱方針のほか、連邦政府の採用凍結、妊娠中絶を支援する国際団体への資金援助停止を決めた。
これは実は事前に予測されていたことで、トランプ政権が誕生する前に避妊処置希望者が急増したというニュースもありました。
人工妊娠中絶や避妊薬の処方などを行う医療サービスNPO、プランド・ペアレントフッド(家族計画連盟)によると、米国では11月8日の大統領選でドナルド・トランプが次期大統領に決定して以降、避妊のための処置を求める女性たちの診察予約が急増している。
トランプは選挙戦の間、プランド・ペアレントフッドに対する連邦助成金の支給停止を主張する共和党の方針を支持する考えを表明してきた。新大統領が就任後にこの問題にどのように対応するかは明らかになっていないものの、「公約」を深刻に受け止めている人たちが、処置を求めて医療施設に押し寄せているのだ。
中東・北アフリカ7カ国の出身者および難民の受け入れ停止
これもマジで大統領令にサインしています。ここまで大型の政策に、躊躇なくサインできるというのは驚きです。こんなスピード感だとは、ぼくも思っていませんでした。
トランプ米大統領は26日にも、中東・北アフリカ7カ国の出身者の入国を一時停止する大統領令に署名する。米メディアが相次いで報じた。シリアなどからの難民の入国も一定期間禁じる。メキシコとの国境沿いに「壁」を建設する25日の大統領令に続く措置だが、対象国や国際社会から批判を招きそうだ。
大統領令で検討しているのは、シリアやスーダン、ソマリア、イラク、イラン、リビア、イエメンの出身者へのビザ(査証)発給の停止を通じて米国への入国を一時止める。政情が不安定で、国民の大半をイスラム教徒が占める国々を対象とするもようだ。
難民の受け入れも制限する。シリア難民は無期限で米国への入国を認めない。ほかの国から来る難民も受け入れを120日間停止し、その間に受け入れ可能な国を検討する見通しだ。キリスト教徒を念頭に自国で宗教的な迫害を受けた難民に関しては受け入れ停止の対象から外すとみられる。
「今回対象となっている国からの移民や難民こそがテロの温床である」と強く主張するトランプ大統領。現時点では「一時停止」の措置ですが、その「一時」がいつまで続くのかわかりません。
「人種のるつぼ」「自由の国」だったアメリカ。その姿が急速に変わってきています。
まだまだ序の口の可能性が高い。
インパクトが大きな大統領令を矢継ぎ早に出しているトランプ氏ですが、これはまだまだ序の口の可能性が高いです。
ぼくは、過去のトランプ氏が強く主張していることを39個にまとめましたが、まだまだ大物は残っています。
- 公約1:メキシコ-米国間へのグレートウォール建設
- 公約2:不法移民への取り締まり強化
- 公約3:「サンクチュアリ・シティ」の撤廃
- 公約4:移民の成功可能性に基づいた入国審査
- 公約5:生体認証ビザ追跡システム導入
- 公約6:テロ対象の国からの移民禁止
- 公約7:モスクの監視
- 公約8:シリア難民救済プログラム撤廃
- 公約9:オバマ大統領令キャンセル
- 公約10:ヒラリー・クリントンのメール漏洩問題の継続調査
- 公約11:オバマケア廃止
- 公約12:プランド・ペアレントフッドへの資金供給停止およびロー対ウェイド事件への判決変更
- 公約13:環境保護庁および教育省の役割削減
- 公約14:新たな教育プログラム導入
- 公約15:国内インフラの改善
- 公約16:国家による業界規制の撤廃
- 公約17:NAFTAへの姿勢を再定義
- 公約18:NAFTAによる関税緩和
- 公約19:TPPからの脱退
- 公約20:中国への45%の関税導入
- 公約21:2,500万人の新規雇用創出
- 公約22:安定した経済成長
- 公約23:大幅な減税
- 公約24:家族関連法制度整備
- 公約25:銃規制緩和および撤廃
- 公約26:銃購入のための権利
- 公約27:治安維持強化
- 公約28:サイバーセキュリティ強化
- 公約29:退役軍人省改革
- 公約30:アメリカ軍再構築
- 公約31:石油掘削量増大
- 公約32:OPECからの独立
- 公約33:イラクの石油備蓄接収
- 公約34:拷問の認可
- 公約35:イスラム教委員会設置
- 公約36:ISISの殲滅
- 公約37:ロシアとの協力(特にISIS関連)
- 公約38:ISIS活動地域でのインターネットシャットダウン
- 公約39:アフガニスタンでの米軍維持
OPECからの独立、拷問の認可、大幅減税や銃規制の撤廃、ISIS活動地域でのインターネットシャットダウンなど、大統領令に署名されたらアメリカのみならず世界がひっくり返りそうなものが目白押しです。
今後も、大統領令について注視していきたいですね。