1.開会
2.出席委員の紹介
3.議事 子どもを健やかに育むための具体的な推進方策について
・座長挨拶の後、事務局より、前回の議論の振り返りについて説明を行った。その後、3名の委員からそれぞれ具体的な実践・推進方策等につながる意見・提案の発表があり、引き続き意見交換を行った。
【委員からの発表1】
・青少年育成協議会(青少協)では、地域の子どもたちの健全育成に向け、様々な活動を行っている。小・中学校区単位で支部があり、私は兵庫区内の小学校区にある支部の支部長をしている。
・青少協の全市的な活動としては、「スマイルハートあいさつ運動」を展開している。また、「こども110番 青少年を守る店・守る家」では、「いざ」というときに子どもたちを助ける店や家にステッカーを貼っている。さらに、兵庫防犯ネットの情報をもとに、イエローフラッグを掲示して不審者情報も流している。
・各支部独自の活動としては、「クリーンハイキング」や「大根づくり事業」、「あいさつマラソン大会」などを開催し、地域の顔つなぎをしている。また、地域の子どもから高齢者までが参加する「三世代のふれあい交流会」も実施している。
・私は昭和23年生まれの「団塊の世代」である。昭和になってからの23年間と平成になってからの23年間を比較すると、かなりの時代の変遷を感じる。昭和の23年間は戦争があり、物が乏しく大変な激動の時代だったと聞く。一方、平成の23年間はITの時代であり、また飽食の時代である。今の時代、子育てに関してはもっと個性を伸ばすようなものがあってもいいのではないかと思う。
・近江商人の経営理念で「三方良し」という言葉がある。売り手は儲けばかり考えず買い手に喜んでもらえるよう、そして買い手も売り手と信頼関係を築く。ひいてはそれが世の中に役立つものとなり、世の中自体がよくなるということである。青少年の健全育成についても、学校、家庭、地域+行政の三者がうまく絡み合って調和することが必要だと思う。教育の原点はやはり家庭であり、基本は家庭で教えなければならない。ただ、家庭で教えられないことを学校で補うなど、お互いに不足する部分を補完し合い、一方に任せきるのではなく三方(三者)が結びつくことが必要だと思う。
・青少協の健全育成に係る活動施策の「三方良し」とは何か。それは、(1)居場所づくり、(2)子どもたちの安全安心、(3)地域の連携である。
・居場所づくりでは、大人も子どもも快適な居場所が必要である。家庭的に恵まれない子どももいる。「この子はこれだから」と決め付けるのではなく、違う面、新たな面に気づき、発見してやることで、その子にとって快適な居場所ができる。神戸市には「ユースステーション」があり、子どもたちに開放されている。
・私たちの地域での実践活動としては、地域の各種団体がお互いに協力して夏まつりを開催している。この祭りには、子どもたちが大きくなっても心に残るお祭りであってほしいという願いと、地域の人々が祭りを通じて知り合い幸福になってほしいという二つの大きな願いがあり、平成10年以降、継続して開催してきた。
・夏まつりで、ストライクアウトという小学生がお世話をする店がある。お店では、6年生がゲームのボールを元の位置に戻すしんどい役割をしているが、ゲームに参加している幼児の笑顔を見て、その子たちは本当にうれしそうな顔をしてお世話をしている。小学生が感想文で、「こういうお世話をしている中で、家でお母さんが掃除や洗濯などしんどいことを色々としてくれていることに気づき、自分も少しでも家のお手伝いをしようと思った。」とのことである。こういうきっかけにもなっている。
・第10回目の夏まつり以降、俳句大会を催しており、優秀な作品を表彰している。子どもたちは表彰されるとうれしいようで、いいところを褒めて伸ばす手法で育むのがいいのではないかと思う。最近では、近隣高校のボランティア部や空手部といった生徒が夏まつりの運営をボランティアで手伝ってくれている。大人側もそういった仕掛け・きっかけをつくり、学校にも働きかけて企画することが肝心だと思う。
・2月には餅つき大会が行われる。地域の人たちと一緒に子どもたちが餅をついて丸めて食べる。また、あわせて将棋や百人一首など昔遊び大会も開催する。こうした中で幼老共生の輪ができ、さらに地域の輪が膨らみ、地域全体がよくなるものだと感じている。
・地域住民とともに行う小中連携の美化活動として、昨年、試行的に通学路への草花の植栽を行った。地域の人と子どもたちが一緒にやることで、地域住民の目が学校に向く。そして交流や語らいの場が生まれるのである。また、地産地消ということで、栽培した大根等の野菜を餅つき大会の雑煮に入れたり、さらには学校給食に取り入れてもいいのではないかと思う。
・最近では、現実の社会とは別に、ゲーム・コンピュータにおける仮想の世界が存在する。先日も、こういったサイトで小中学生が逮捕されている。今はボタンを押すだけで削除ができ、実態経験が少なくなっている。基礎を固める前に自分だけの世界に閉じこもり成長していく。コミュニケーション能力が育たず、刹那的になり、今さえよければいいと衝動的になってしまう。子どもたちには、現実の体験をすることが大事だと思う。
・若者は、芸術・スポーツなど、勉強以外でも何か熱中できるものに出会い、そして学び、感動体験を通じて得るものが必ずあると思う。震災時も、子どもたちはみんなで助け合い、気を配り、思いやって地域全体が動いていた。子どもたちには、困難に直面しても決して諦めることなく、元気に頑張って成長してほしいと願っている。
【委員からの発表2】
・600名が乗船できるクルーズ船を経営しており、社員約200名が心を一にして、お客様に幸せを感じてもらう努力をしている。創業15年、これまで330万人のお客様をお迎えできたが、特に大きなクレームもなく、一応、幸せを感じていただいた方がほとんどだと理解している。
・組織において、社員が心を一にするにはどうすればよいか、自分では「仕事(幸せ)の木」という図で表すことができると考えている。人は誰かの役に立ち「ありがとう」と言われると幸せを感じるものである。そして、その人なりに自分を活かして人を幸せにすることが「仕事」「天職」なのだろうなと思う。
・経験として確信することがある。それは、組織の構成員を、ほんとうに幸せにするために、金や物やサービスを供与するよりもっといい方法がある。それは、「構成員の特長を活かしその人らしく組織に貢献させてあげる仕掛けを創ること」である。
・神戸の教育が目指す子ども像に「心豊かに たくましく 生きる人間」を掲げているが、さらに踏み込んで「その人なりに社会に貢献する」を加えられないものかと思う。
・人が誰かのために貢献して幸せになるには、「やる氣(マインド)」が必要であり、これが一番肝心な部分である。この「やる氣」には3つの要素があり、一番大事な根源は、「ありがたいな」と思う「感謝」の心である。次に「今日の自分より明日の自分」という「向上心」である。向上する気持ちがないと「やる氣」は湧いてこない。さらに、組織の理想に共感し、誇りや自信を持ってもらう「共感」が重要だと思っている。
・この3つの要素のルーツは「感動」だと思う。感動なくして「感謝」「向上心」「共感」は生まれない。だから、幼い頃から、いかにして「感動」を植えつけるかが勝負になってくるのではないだろうか。多くの保護者は、一生懸命、子どもに感動体験を与えようと努力されていると思うが、そういうことを全く考えもしない人が徐々に増えてきていないかと懸念している。
・乱暴な意見かもしれないが、親になることの意味も考えず親になる人を減らすために、市独自の出産・育児にかかる助成や手当を渡す条件に、「親業講座」のような講座を受講してもらうなど、親教育の方法も考えなければならないのではないか。
・誰にでもできることとして、「ありがとう」を子どもたちにたくさん言ってやればどうだろうか。当たり前だが、「ありがとう」と褒められる成功体験は、「人のために役立った」という気持ちにさせてくれる。この簡単なことすら全然できていない人をどうすればいいのだろう。
・「やる氣」の三要素の一つである「向上心」の芽、子どもたちの「知りたい」という思いを無視せず、一緒に調べたり、調べる方法を教えてやることが重要だと思う。そうすれば、子どもはちゃんと自分で育っていくと私は信じている。我々は、忙しいからといってテレビやゲーム、携帯電話に子守りをさせていないだろうか。
・人間らしさ、創造力、想像力などは、前頭前野が掌っているそうだ。ある医学者の大学教授によると、前頭前野をだめにするには、テレビやゲームを好きなだけやらせればいいと言っていた。子どもたちをそれらからできるだけ避けてやらなければ、「自制力」や「向上心」も含めて、人間らしい子どもは育たないのではないかと思う。
・「ありがたいねえ」と声に出して言う「感謝」もそうであるが、「共感」や「誇り」を育むためには、組織の良さなどを教えてやることが重要だと思う。家庭なら家のルーツである先祖のこと、神戸市であれば市の素晴らしいところなど、組織には大きな組織から家庭という小さな組織まで色々あるが、すばらしいところをたくさん教えて共感させ、誇りを持たせることが、組織を活性化するポイントだと思う。
・私は震災を機にこの世界に飛び込み、約16年間サービス業に就いているが、それ以前の10年間は子どもが1歳の頃から家で子育てをしていた。その前の10年間は仕事をしていた。この間、色々と考えてきた経緯がある。誤解のないように申し上げなければならないが、「子育てはとてもしんどいが、とても面白い仕事」であることを敢えて申し上げたい。最近では「誰の仕事?」と責任問題のように取り上げられることもあり残念だが、子育てはとても有意義で価値のある仕事だと思っている。
・その「しんどいけれども価値のある仕事」を誰がするのか。みんな色々と配慮し過ぎるが故に明確に言っていないところがあるのではないかと思う。敢えて体験をもとに申し上げると、実はひとりよがりの部分もあったが「自分の大事な子どもは、できれば自分で育てたい」という思いがあった。これは、様々な事情もあり、必ずしも誰もができることではないので、状況に応じて臨機応変に対応すればよいが、忘れてならないのは「子どもの視点」である。いつも親の都合、親の視点で考えていないか、時には振り返って考えてみることも必要なのではないだろうか。
・子育てと仕事の両立は大変である。働きたい・働かざるを得ない母親を支援するために、様々な方法があっていいと思う。特に乳幼児期の子どもの病気は働く母親にとって大変な試練であり、私自身も仕事を辞めた原因はここにあるが、これを周囲でもっとサポートできないか。親戚縁者ができればいいのだが、無理な場合、例えば地域や近所のリタイヤされた方で「見てやろう」という人とつながりを持たせてはどうか。そういう方々にとっても一つの生きがいになる可能性もあると思う。また、現在は病児保育もあるが、施設に連れていくのではなく、専門的な誰かに家に来てもらう制度があるともっといいのになと思う。
・家にいた時期、実は乳幼児期の育児は孤独で、つらくてしんどかった。少し大きくなれば、児童館すこやかクラブなどの制度もあり、大変救われた。それに至るまでの乳幼児を抱える母親の孤立を支えてあげられる「そと爺」「そと婆」などの支援制度があれば大変いいのになと思う。働く母親や家にいる母親が、今何が知りたいのか、子育て情報が的確に提供されていればいいが、一度、再検証してはどうかとも思う。
・また、子育ての段階に応じて、趣味など好きなことを共有しながら、子どもと共に育っている母親のネットワーク、活動グループ支援などをより充実させるとともに、イクメンを誉める制度はあるが、働くお母さんや地域・サークルで活躍しながら子育てをするお母さん、子育てのサポートをする方々も誉める制度をつくってはどうか。
【委員からの発表3】
・神戸には「人は 人によって 人になる」という教育理念がある。カントが「人は教育によって人間になる」という言葉を残しているが、子どもは、教師、保護者、地域住民など、周りの大人によって「心豊かなたくましく生きる人間(目指す人間像)」になる。市では、幼稚園から高等学校まで、8,700名弱の教職員が子どもたちの指導に関わっている。
・科学技術の進歩に伴う情報化や、国際化、少子高齢化・核家族化、共働き家庭の増加など、学校現場を取り巻く状況は大きく変わってきている。職員の組織については、公立学校の教員は若干高齢化しているとの調査結果も出ている。保護者については、一時期「モンスターペアレント」という言葉をよく聞いた。そういう「いちゃもん」と言われるところはなくなったとしても、確かに最近、子どもの話を聞いてそのまま学校へ飛び込んでくる親は多い。放課後の保護者との対応時間も、昔と比べると随分多くなっていると実感する。
・教師が多忙化している。本来、教材研究をしたり、朝・放課後・休み時間などに子どもと遊んだりゆっくり対話する時間があってこその授業・指導だが、なかなかその時間がとれない。そんな中、先生方は時間のやりくりをして子どもとの関わりを大事にしてくれている。
・子どもたちの生活環境は、外遊びが家の中になったり、情報化社会の影響等もあり大きく変わってきたが、子どもの持つ好奇心や素直さ・やさしさは、変わっていないと思う。変わっているのは、周りの大人の影響によるものなので、子どもたちの持つ本来の子どもらしさは大きく変わっていないというのが実感である。
・神戸市教育振興基本計画の中に「こうべっ子 豊かな心育成プラン」が位置づけられている。例えば道徳について、市では独自に作成した副読本を活用している。小学校の場合、道徳の時間は年35時間あり、ほぼ毎週1回は道徳の授業がある。それ以外にも、道徳的な指導を全教育活動を通して行っている。また、体験活動・自主活動等、人権教育など自尊感情を育てる活動、読書活動など、各学校で工夫しながら時間を設けて行っている。
・本校では、あいさつ運動を展開しており、私も時間が許せば、高学年のプログラム委員と一緒に、毎朝校門に立っている。徐々に道行く人たちと顔なじみになり、隣の中学校もあいさつ運動に立ちだしたり、あいさつの輪は広がっているが、これを継続していくことが大事だと思っている。
・また、なかよし班活動として、異学年・異年齢の集団づくりに取り組んでいる。1〜6年生が32班に分かれ、そこに先生が1人ずつつく。年間を通して週に2〜3回、一緒に活動をしている。例えば長縄跳びなどでは、初め跳べない1年生を5,6年生が助けたりして、非常にほほえましい光景が見える。運動会もなかよし班で席に座り、応援し合っている。1年も経過すれば、結束力を感じるようになる。
・東日本大震災に関しては、市内の学校園では震災直後から、学校行事等も含めて様々な募金活動・支援活動が行われている。阪神・淡路大震災等の授業等を通じて、子どもたちの心に芽生えてきた部分だと思う。
・先ほども「夏まつり」や「餅つき大会」の話をしていただいたが、このような場で子ども自身が地域の方に指導していただくだけではなく、若い保護者が地域の方と接することで、子どもへの接し方などを学ぶことができ、大人同士の交流の場にもなっているということを感じる。
・平成16年度から「命の感動体験事業」を実施している。平成22年度は、小学校全166校中44校で実施している。お母さん方にお願いして実際に乳幼児を学校へ連れてきてもらい、思春期前の小学校高学年の児童や中学生とふれあう。子どもが「親から愛されて育てられている」と感じ、自分が生まれてきた価値や自己肯定感を見いだすことができる。また、自分が親になったときの気持ちを体験でき、虐待防止にもつながっている。
・神戸の先生方は、自発的な研修活動で教材研究をしたり、勤務時間後も指導力を深めるための勉強会に参加している。教員の意識調査結果によれば、仕事に生きがいを感じる50歳以上の教員が62%もいる。ある意味すごい数字であるが、今の仕事を続けたいと思う教員は50%台に低下しており、それだけ教員のストレスが大きいのだと感じている。今後、教員も団塊の世代の退職者が増加して世代交代が進む。教員不足となり新たな教員採用が必要となるが、優秀な人材を確保するためには、それなりのものが必要になると思う。
・子どもの学習環境の中でも、教室環境は非常に重要である。ごみを散らかさない、掃除をしっかりすることはとても大事である。また、現在はどの家庭にも空調機があると思うが、学校現場では、市内の全166小学校のうち、普通教室の全てに空調機がある学校は32校だけである。教室数では2,836室中648室、30%以下である。当然、学習効果も半減するし、子どもの健康管理面から考えても、快適な教育環境は非常に大事な要素だと思う。
・最後になるが、私はよく校門前に立って声かけをしているが、子どもたちが赤信号を待つ間、平気で大人が渡って行くことを時々見かける。大人がまず一番の見本にならなければならないと常々思っているし、若い教師には自分の姿勢というものをいつも大事にしようと言っている。だから、大人がぜひ手本になっていきたいなと思っている。
【意見交換】
(委員)
・「顔見知りになる」ことにより、子どもたちに対して注意もしやすくなる。また、若い母親が子育てに困ったときには、やはり地域の力が必要であり、改めて地域力強化の必要性を感じた。
・先日のテレビニュースで、中国で2歳の女児が事故に遭って横たわっているのに、周りの大人や青年たちが無視して通り過ぎるという事件があったが、今の日本で同じことが起こらないかと不安になる。私どもの活動の中でも、無関心な親、子どもを預けたら預けっぱなしで自分は知らんぷりの親が増えてきており、これを何とかしなければならないと思う。
(委員)
・最近、「プレッシャーは味方」だと思うようになってきた。プレッシャーがなければ、世界選手権やオリンピックで世界新記録は出せないと思う。プレッシャーの中にある「不安」を取り除けばいい。プレッシャーがかかったとき、「ありがとう」「ありがとう」と呪文のように言うと、一番大事なプレッシャーだけが残り、不安が飛んでいくのである。
・今の子どもたちは、プレッシャーの中で毎日生活しており、そのプレッシャーにつぶされてしまう子どもも多い。「ありがとう」と言ってそのプレッシャーを味方・栄養にして、不安がどこかへ飛んでいったときに、子どもたちはすばらしい力を発揮する。これが「感謝力アップ」だと思っている。
(委員)
・子どもたちには感動体験が必要だが、単に感動を用意して与え、それをお客様のように体験するだけでは本物の体験にはなかなかならないと思う。その体験をするまで一つ一つ積み上げていくことで、より感動は大きくなる。例えば夏野菜を育てる場合でも、種や苗から植え、毎日お水をやり、そして収穫して味わうという体験など、運動会でもそうであるが、一つ一つ積み上げることの大切さを教育現場では大切にしている。
・病児保育をしていない保育所では、預かる子どもが熱を出すと、勤務中の保護者に電話をかけて迎えにきてもらう。その際、企業の方には明るい笑顔で保護者を送り出してほしいと思っている。子どもの発熱は突発的なものなので、その対処は難しいと思うが、子どもの立場からすれば、やはりご家族の方が迎えに来て、苦しむ子どもたちに「よしよし」と声かけをして病院へ連れていくとか、温かく介抱してあげてほしい。
・最近では病児保育を実施する保育所も少しずつ増え、母親は子どもが病気でも預けてジレンマを抱えながら仕事に出ることが多いが、仕事をしながら子どもを育てると決意した母親には「休む勇気」も必要だと思う。行政がそこまでサービスをすれば、費用も安価なため、時給との比較で保護者は「預けて働いたほうが得だ」と考えるようになる。難しい問題であるが、こういう政策は子どもにとってどうなのかなと常に感じてしまう。
(委員)
・子どもたちは、地域・家族・先生など、人とのつながりの中で育っていく。「人は 人によって 人になる」という神戸市の教育理念にあるように、行政はそうしたまちづくりを進めていくことが重要だと感じる。
・以前の会議で、明治・大正の頃に海外から来日した知識人たちが、当時の日本人を褒めていた「逝きし世の面影」という本の話がでたが、なぜ昔の日本人が海外から高い評価を得たのか、また当時はどのような教育をしていたのかを調べてみた。明治17年頃の小学校の修身の教科書では、最初に「父母の恩は山よりも高く、海よりも深し」とある。また、「教師自身は子どもの模範となるような日常生活を送れ」とされている。これが当時の教師の姿、教育のやり方だったのかなと思う。
・明治23年発布の「教育勅語」や戦後の「教育基本法」の考え方で変わらないのは、「教育の目的は人格の完成を目指すこと」である。「教育勅語」には具体的な人間としてどう生きるかということが書いてあるが、戦後、この人格が学校現場では漠然としてよく認識されずにきているのではないかと思う。
・人間は、先祖・両親から命を受け継ぎ子孫につなげていく縦のつながり、また、家族も含め社会の様々な人の世話になり生きているという横のつながり、さらに、宇宙・自然とつながる円の中心に自分があり、その恵みを受けて生きているということを自覚できれば、当然、先祖や親、周囲の人々、自然に感謝する気持ちが湧いてくる。日本の文化はこのようにして発展してきたのだと思う。手紙の最後に、ご多幸をお祈りしますとか、何々に感謝しますという言葉をよく使うが、そういう感謝と祈りのつながりの中で、この日本の世の中をつくってきたのではないかと思っている。
(まとめ)
・「感動」の大切さが強調されたが、どのように感動を体験させるかが問題である。夏まつりを一緒にやるのも感動を生み出す一つのやり方だと思う。また、感動に関連する物語を読んだり、感動体験の感想文等を発表し、生徒同士が一緒に考えることがあってもいいのではないか。
・映像も重要だと思う。神戸で感動をテーマにした国際映画祭のようなものを実施してはどうか。そして、フィルムライブラリーをつくってグランプリになった作品を配置し、学校等に貸し出して子どもたちに見せるのである。自分自身が色々な行事に入って体験することや、人の体験を聞いたり物語を読んだりして、それに感動するということもあるし、さらに今は映像関係が非常に発達しているので、これを活用した感動体験も重要だと思うがどうだろうか。
(市長)
・神戸はユネスコからデザイン都市に認定され、幅広い分野で世界とネットワークを組みながら様々な取り組みを進めていこうとしているところである。今、ちょうど旧神戸生糸検査所を改造しているので、こういったところでやるのも一つの方法かもしれないし、また別の場所を使って色々な国の状況を知るということも大事なので、少し方策を考えてみたいと思う。
・先日、財団法人PHD協会の30周年記念行事に出席した。そこで披露された話で、故岩村昇先生がネパールで治療活動をされる中、地元の青年が、結核を患った重症のおばあさんを首都カトマンズまで3日間ほどかけて背負って連れて行ったそうである。そして、その青年におばあさんが「何かお駄賃を」というふうに言ったら、「いらない。とにかく人が生きていくために必要なことを手助けしただけだ。」と言った話を紹介され、その際、先生は「生きるとは分かち合いである」とおっしゃった。人のために尽くすことが当たり前のようにできているのである。こういうことを先日聞いたので、紹介したいと思う。
4.閉会