長崎県大村市で昨年1月に起きた傷害致死事件の捜査で、長崎県警が逮捕した男性(53)に自白を強要したり、否定した内容を一方的に調書に記載したりするなど違法性が疑われる取り調べをしていたことが26日、分かった。長崎地検が取り調べを録音・録画した映像を確認して発覚した。
地検は県警の捜査幹部に適正化を要請、取調官は担当から外れた。取り調べの録音・録画(可視化)が不適正な捜査の歯止めになった。
長崎県警刑事総務課は「調査した結果、自白の強要はなかったと判断した。供述調書には署名があり、勝手に書いたわけではない。違法性はなかった」としている。
男性は同居の母親(当時88)に暴行を繰り返し、死なせたとして傷害致死容疑で逮捕された。死因は多発外傷だったが、母親が転倒してできた可能性がある傷も多かったといい、男性は「過度の暴行はしていない」と主張した。
捜査関係者によると、逮捕後の取り調べで、男性は検事に「否定しているのに、取調官が見立てを強引に押しつけて調書を作る」と訴えた。
検事は取り調べ状況の映像を確認。取調官が「(母親の)傷は全部あんたがやったんだよ」などと自白の強要と取れる発言をしていた。男性が明確に否定しても「勘違いだろう」と取り合わず、勝手に調書に記載していたことも判明した。
問題発覚後、地検は弁護人にも事情を説明。県警作成の供述調書は裁判の証拠として利用しないなどの対策を取った。地検は昨年3月、傷害致死罪ではなく傷害罪で男性を起訴。長崎地裁は同5月、懲役2年、執行猶予4年の判決を言い渡し、男性側が控訴せず確定した。〔共同〕