ご近所SNSマチマチが運営する『ご近所未来ラボ』では、「地域活性や街づくりに携わる方々の力になりたい」という思いから、“コミュニティデザイン”についてのリサーチやインタビューを行なっています。
以前、コミュニティマネジメントの実践者として、株式会社ソーシャルカンパニー代表取締役・市川裕康さんを取材しました。市川さんは2016年12月まで、コミュニティプラットフォームの「Meetup」で、コミュニティマネージャーを務められていました。現在も個人で「コミュニティマネージャーズ・コミュニティ(CMC)」などを主宰しています。
↓市川さんインタビュー記事はこちら↓
そんな市川さんが1月23日に主催した「コミュニティマネージャーサミット2017」にマチマチスタッフで参加してきました。会場には、企業ブランドや社内コミュニティから地域・趣味・NPO活動まで、さまざまなコミュニティを運営している方々が集い、知見や共有や交流が行われました。コミュニティづくりの実践者にとって、とても参考になるノウハウが伺えたので、こちらの記事でその模様を紹介したいと思います!
なぜ今「コミュニティマネージャー」が注目されているのか
今年で5回目の開催となった「コミュニティマネージャーサミット2017」。過去4回は「コミュニティマネージャー感謝の日ミートアップ」という名称で開催されていました。この日のチケットは完売し、70名以上のコミュニティマネージャーが会場に集いました。
本イベントが開催されるきっかけとなったのが、2010年に米国で制定された記念日「Community Manager Appreciation Day(コミュニティマネージャー感謝の日)」です。毎年1月の第4月曜日、コミュニティ運営者同士の知見交換や交流を促すことを目的として、米国を中心にイベントが開催されるようになります。日本でも2013年に「コミュニティマネージャー感謝の日ミートアップ」が始まりました。
同イベントを日本でスタートさせたのが、市川さんです。市川さんは「いま、コミュニティマネージャーが注目を集めている理由」について、次のように語ります。
市川裕康さん(ソーシャルカンパニー代表)
市川:UberやAirbnb、EtsyといったWebサービスがユーザーの獲得やマーケティング戦略の一環として、コミュニティを活用しています。数千万人以上のユーザーを抱えるWebサービス成功の裏には、必ずと言っていいほどコミュニティの存在があるんです。
市川さんは、米国で「コミュニティマネージャー」という役職が注目されているひとつの事例として、2014年に米国で始まった「CMXサミット」を紹介。こちらは参加費が600ドル以上なのにもかかわらず、全米から400人以上のコミュニティマネージャーが集うイベントです。第一線で活躍するコミュニティマネージャーたちがノウハウを共有し、成功・失敗事例を学ぶカンファレンスとして、現在も継続的に開催されています。
告知期間フェーズごとに変化するイベント集客戦略
市川さんによる「コミュニティマネージャーサミット2017」開催趣旨の説明の後、Peatix取締役の藤田祐司さん、「connpass」の企画・開発・運営に携わる佐藤治夫さん、CAMPFIREコミュニティマネージャーが登壇し、LT(ライトニングトーク)が行われました。
藤田祐司さん(Peatix取締役)
最初に登壇したのは、Peatix取締役の藤田祐司さん。「Peatixデータから見る、イベント集客のポイント」と題して、Peatixのデータを用いながらイベント告知のノウハウを語りました。
コミュニティの熱量を高く保ち、継続的に運営するためには、オフラインのイベントが重要な役割を果たします。そこでしばし、主催者を悩ませるのが「集客」の問題です。
藤田さんは、一般的なイベントの告知期間を40日と仮定して、集客の告知期間を「告知開始〜1週間後」「2週間〜4週間後」「4週間〜イベント開催直前」の3つに分類。各フェーズごとの効果的な告知方法を共有してくれました。
まず、告知開始から1週間後にイベント運営者がするべきこととして、藤田さんは「コミュニティ内のメンバーや、過去のイベント参加者への告知を徹底するべき」と語ります。
藤田:イベント情報を機械的に発信するのではなく、「なぜイベントを開催するのか」など、背景にある想いを丁寧に伝えるのが効果的です。表面的な情報をSNSで流しても、スルーされてしまうので。
イベント公開から2週間〜4週間後は「参加申込みが少ない停滞期」だと話す藤田さん。この停滞期にとれる施策として「イベントへの参加を検討している人たちに定期的なアプローチを行うこと」を挙げます。
藤田:表面的なイベント情報ではなく、登壇者との打ち合わせ内容や、会場の様子、イベント当日のケータリング情報などを発信していきます。参加を検討している人たちに「楽しそう」と思わせるのが大事ですね。
そして、Peatixの統計によると最も参加者が増えやすい時期が「イベント開催の1週間前」とのこと。最後のひと押しのため登壇者に告知をお願いするだけでなく、「SNSで告知をする際には、登壇者をタグ付けして拡散するのが効果的」だと、藤田さんは言います。
イベントを開催する時に、なんとなく告知を続けるのではなく、時期ごとに打つべき施策を明確化することで、効果的なイベント情報の告知ができそうです。
↓藤田さんの登壇スライドは、以下よりご覧いただけます↓
「すごいコミュニティ」はなぜ集客に成功しているのか
佐藤治夫さん(「connpass」企画・開発・運営)
続いて登壇したのは、エンジニア向けのIT勉強会支援プラットフォーム「connpass」の企画・開発・運営に携わる佐藤治夫さん。佐藤さんは個人でも、Web系IT勉強会の「BPStudy」を2007年9月から毎月1回開催し、2017年1月で113回目の開催を迎えます。
佐藤さんが語ったテーマは「connpass運営が選んだ、このコミュニティがすごい」。connpassで開催されている人気イベントのユニークな点に注目し、そのイベントに人が集まる理由を紹介してくださいました。
まず、佐藤さんは“すごいコミュニティ”を「イベントを月に1回以上開催していること」「集客人数が50人をこえるイベントが全体の35%以上を占めていること」という2つの要素で定義。
イベントの開催頻度が高いにもかかわらず、毎回の参加人数が多いイベントを主催しているコミュニティをリストアップし、その特徴について具体的に紹介していきました。
佐藤:たとえば「IoT縛りの勉強会」というグループが主宰するイベントは、LTにたくさんの登壇者を呼んでいます。登壇者の数を増やすことで、「参加するとさまざまな情報を得られる」と認識されているため、安定的に参加者を確保できているようです。
その他にもさまざまなコミュニティを紹介した上で、佐藤さんは「“すごいコミュニティ”から学ぶ集客のヒント」を、次の7つのポイントにまとめられていました。
- LTの登壇者を増やして、お得感と参加意識をつくる
- 「初心者向け」のイベントを用意し、参加者のすそ野を広げる
- LTと参加者同士の交流を交互に入れる
- 「社内勉強会への招待」という形式にして、外部参加者を招待
- 「速習会」など、キャッチーなネーミングを考える
- イベント名にキーワードを入れる
- イベント開始1時間前の確認メールがドタキャン防止に効果的
↓佐藤さんの登壇スライドは以下よりご覧いただけます↓
コミュニティに対して「自分が貢献できることは何か」を考える
山中直子さん(CAMPFIREコミュニティマネージャー)
最後に、CAMPFIREでコミュニティマネージャーを務める山中直子さんが登壇しました。「クラウドファンディングを通じて生まれるコミュニティの可能性」をテーマに、CAMPFIREが始まってから蓄積されてきた7年分のデータから、コミュニティ運営に活かせそうなノウハウについて語ります。
イベントプラットフォームを運営する藤田さんや佐藤さんとは異なり、山中さんはクラウドファンディングサービスのコミュニティマネージャーという立場。自身を「さまざまなコミュニティのハブとなり、コミュニティを行き来する案内人」と定義されていました。
そんな山中さんは、CAMPFIREでプロジェクトが成功する人の特徴を「借りの未決済状態」というキーワードを用いて、次のように語ります。
山中:クラウドファンディングでプロジェクトを成功させる人は、「借りの未決済状態」をつくることが上手です。新しいプロジェクトを始める際に、これまでに誰かを応援したことがない人は、誰からも支持されず、共感もされません。普段から「このコミュニティに対して自分が貢献できることは何か」を考え、借りを作り続けることが、成功につながっています。
コミュニティに対して価値を還元し続ける重要性を説いた山中さん。では、具体的には何をするべきなのでしょうか。
山中:自身の関心テーマや専門領域について、発信し続けることです。例えば、SNSで記事のリンクをシェアする時に、一行でもいいので自分なりの視点で考察を書いたり。そういった小さな工夫ひとつでも、記事のクリック数は大きく変わります。
コミュニティを醸成していくためのコツは「2回目」のしかけ方
続いて、LTに登壇した3名によるパネルディスカッションが行われました。本イベントのモデレーターを務め、ポップアップショップサービス「SHOPCOUNTER」を運営するCOUNTERWORKSの最所麻美さんから、登壇者に質問が投げかけられました。
最所:継続的にイベントを開催し、コミュニティを醸成していくためのコツはありますか?
藤田:継続的なコミュニティをつくる鍵は、2回目のイベントにあると思っています。初回のイベントは集客にも力を入れるので人が集まると思うのですが、最も注力しないといけいのは、2回目の集まりなんです。そこの壁をこえると、コミュニティは軌道に乗るのかなと。
佐藤:connpassでも、最初に100人を集客するような大規模なイベントを開催すると、その後が続かないケースがあるんです。先ほど紹介した「すごいコミュニティ」の中にも、イベントの開催ペースを月に1回と決め、定期的なイベント開催を心がけているコミュニティがあります。少しずつコミュニティを育てていくのが理想ですね。
続いて、イベント参加者からの質問タイムに。
参加者:コミュニティマネージャーに求められるスキルやマインドセットは何だと思いますか?
藤田:コミュニティによって求められるマインドセットは変わると思いますが、共通しているのは「コミュニケーションが好きなこと」だと思います。また、好奇心が強いほうがコミュニティマネージャーに向いていますね。関心領域が広いと、その分コミュニティを広げていきやすいんです。
山中:コミュニティマネージャーに必要なのは、面白いイベントやコミュニティをつくりたいという想いと、面白いものを見つけてくるスキルだと思っています。自身が面白いと思ったものに対して、相手に関心を持ってもらうには、伝え方を工夫することが求められます。
佐藤:コミュニティマネージャーには、リモートで人を動かすスキルが求められると思っています。本業がありながらコミュニティ運営に関わっている方も多いので、同じコミュニティを運営するメンバーとリモートでコミュニケーションを取ることが求められる場面も出てきます。その場合、なかなか反応が返ってこないこともあるので、リモートでのコミュニケーションに長けている必要があるなと。
パネルディスカッションの後は、企業ブランドや社内コミュニティなどの「仕事コミュニティ」に関わっているグループと、趣味・地域などの「草の根コミュニティ」に関わっているグループに分かれ、イベントの感想を交えつつディスカッションが行われました。
「コミュニティマネージャー」という役職は、社内に一人しかいなかったり、社内でナレッジが蓄積されていなかったりと、孤独になりがちな仕事です。こうした機会があると、普段は誰にも相談できないコミュニティ運営における悩みを共有できて、とても有意義だなと感じました。
……以上、コミュニティやイベント運営のノウハウがギュッと詰まった「コミュニティマネージャーサミット2017」のイベントレポートでした。
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マチマチを活用して、持続可能な地域コミュニティづくりを
「ご近所未来ラボ」では今後も引き続き、コミュニティづくりに役立つような情報発信を、継続的に行なっていきます。ぜひ、チェックしてもらえたら幸いです。「地域でコミュニティを作って盛り上げたい」と考えている方は、実際にマチマチを使ってみてくださいね^^