「星野源のライブがあるんだけど、もしチケット取れたら一緒に行かない?」と誘われた。
星野源が今年全国ツアーをやるらしい。札幌にも7月に来る予定で「コウノドリ」「逃げるは恥だが役に立つ」ですっかり星野源のファンになった彼女はどうしてもライブにいきたいらしい。
いや、いいんだいいんだ。俺も上記ドラマは熱心に観てたし、曲もよく聴く。『YELLOW DANCER』はめちゃくちゃ良いアルバム、たしかに名盤だったし「Snow Men」とか狂おしいくらいに好きだ。だから彼奴のライブに行ってみたいっていう気持ちはある、あるんだけど、ひとつでかい問題がある。
以前、ツイッターを眺めてたらこんなツイートを見かけた。
「星野源のライブに行ったんだけど、女が連れてる男がもれなく星野源みたいな男だった」
納得がいかねえ。
いや、俺もどっちかって言ったら星野源タイプの人間で、(ちょい待て気持ちはわかるが一旦落ち着いて聞いてくれ)大きな括りで塩顔かしょうゆ顔かで言ったら塩顔だ。ほ乳類か爬虫類かで言ったら爬虫類だ。ヤン坊マー坊で言ったらマー坊だ。(ジャルジャルとかよく言われる)
だからどうせ星野源のライブ行ったら、
「あ〜こいつも地味目の男が星野源に憧れてちょっとお洒落頑張っちゃったパターンね」
とか思われるんだろう。
冗談じゃねぇ、1ミリも憧れてねぇ。
俺はあんなパーツ付いてんだか付いてないんだかわからねぇ1分で描けそうなうっすい顔よりも石黒賢みたいな目鼻立ちのはっきりした顔になりたかったんだよ、金子ノブアキみたいにヒゲだって生やしたい。ファッションだって吉田栄作みたいにジーパンと白T1枚をサラッと着こなしてぇ。歌手としてもB'zとかポルノグラフィティみたいにパキッした高音のボーカルのほうが全然好みだし、ダンスだって三浦大知のほうがすげぇし、学生・OL相手の毒にも薬にもならない下ネタよりリスナー層むさい男9割の中堅芸人のラジオのドギツいトークが面白いと思ってる。愛読書は働く男より日本原論。
でも、できねぇ。哀しいくらいにヒゲも、吉田栄作スタイルも似合わねぇ。肩幅が圧倒的に足りねぇ。胃下垂だから太っても全体に肉が付かねえ下腹だけ出る。だからよくわからん柄のタイトめなシャツ着て後ろ刈り上げの前髪ちょっと残しの髪型やってんだよ、別にあいつを見倣ってやってんじゃねえ、こちとら星野源が星野源やる前から星野源やってんだよ。(星野源のほうが年上でした)ただ勘違いすんなよ、好きで星野源やってんじゃねえからな。潤滑な社会生活を営むために歯ぁ食いしばりながら星野源やってんだ俺は。
だから軽々しく「連れてる男がもれなく星野源みたいな男だった」とか言われるのがめちゃくちゃ癪に障る。馬鹿が。誰が憧れるかよ。星野源好きだって言えばサブカル女と喋れるとか思ってる他の男共はどうだか知らんが、少なくとも俺は自分の中にいる星野源に「俺」という存在が飲み込まれないように「星野源にだけはなるまい」という想いを胸に秘めて日々生きてる。
でも、隣にいる君が俺に「それ」を望むのなら俺はなにも言わず、短髪アシンメトリーでサスペンダー肩につけてライブ会場へと向かおう。ここは元から楽しい地獄だ。