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真顔日記

上田啓太がいろいろ書くブログ

キャッチーなメロディをすぐに口ずさんでしまう病気

居候生活

aikoの『恋をしたのは』がずっと頭のなかを流れている。

『聲の形』という映画の主題歌になっていた。これがずっと流れている。そして頭のなかを流れるメロディは口に出されることを求めるので、私は小部屋でずっと歌っている。もっとも、「あ~あ~あ~あ~恋をしたのは~」というところだけで、あとはホニャホニャ的ごまかしによって歌詞を覚えていないことを隠蔽している(隠蔽できとらんが)。

aikoの曲で初聴から覚えられるものは意外と少ない。最近の曲だと『合図』は一発で持ってかれたが、基本的にじわじわと良さが分かってくる曲が多い。去年出たアルバムに収録されている『蒼い日』なんか、最初のうちはなんとも思っていなかったのに、現在はイントロだけで感極まる状態になっている。

とくに注目していなかった曲に「これめちゃくちゃ良いじゃん!」と気づく。aikoを聴いているとひんぱんに起きることである。そして「俺はいままで何をきいてたんだ」となる。aikoふうに言うならば「あたし今まで何をしてたのか」。まあ、aikoの曲の良さに気づくことをaikoふうに表現するというのは、ヘビが自分のシッポを食ってるようなもんで訳が分かりませんが。

頭のなかを流れる曲は定期的に変わる。いつもaikoとはかぎらない。

一時期、浜田省吾の『もうひとつの土曜日』の歌い出しの「ゆうべ眠れずに泣いていたんだろう」という部分だけが異常に流れていることがあり、そのころは居間を横切るたびに私が浜省になるから同居人が激怒していた。中途半端に声マネしているのも問題だった。これはまさに「中途半端」と言うしかないもので、「やや声を低めにして、もったりと歌う」というくらいのことである。

「クオリティ」と同居人は言った。

「上げる努力して」

しかし私は努力しなかった。するわけがない。

日々、小部屋からニセ浜省が出てきては、「ゆうべ眠れずに泣いていたんだろう」と歌い、台所で麦茶を飲んで、ふたたび「ゆうべ眠れずに泣いていたんだろう」と歌いながら帰っていく。同居人目線で見れば、これはまあ、「うんざり」としか言いようがない。

「ゆうべ熟睡してたし」

たまに言われていた。

一度、テイラー・スウィフトの曲が頭の中を流れていることがあった。とくに好きなわけではない(というかそもそもよく知らない)んだが、メロディは関係なしに感染する。曲名は分からないが、「シェキ、シェキ!」と連呼する曲で、それを歌いながら居間に出ていったときは、同居人に爆笑されていた。浜省のときとはちがい、ウケにウケていた。「意外性がすごい」と大絶賛だった。

「テイラー・スウィフト、上田からいちばん遠いところにいるからね!」

べつにウケを狙ったわけじゃなく、メロディが感染しただけ。たなぼた的大ウケ。

しかしまあ、たしかにテイラー・スウィフトと自分のあいだには、人間であること以外に何の共通点もないとは思う。二人で飲みに行けば二秒で話題が尽きる自信がある。私もあなたも人間ですよね、というところから探っていくしかない。あなた、酸素を吸って、二酸化炭素を吐いてると聞きました。じつは、僕もそうなんですよ! そんな話で、テイラーと盛り上がることができれば。 

Taylor Swift

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