【ワシントン西田進一郎、会川晴之】トランプ米大統領は25日、メキシコ国境沿いに壁を建設することを命じる大統領令に署名し、不法移民対策に着手した。また米メディアによると、早ければ26日にも、難民受け入れ数を半減し、中東・アフリカのイスラム諸国からの入国審査を厳しくする大統領令に署名する予定だ。トランプ氏は、移民や難民政策でも「米国第一」を鮮明にした形で、その排外主義的な姿勢は、国内外に影響を与える恐れがある。
トランプ氏は25日、国境警備や不法移民対策を管轄する国土安全保障省を訪問し、二つの大統領令に署名した。メキシコ国境の「物理的な壁」建設と、警備担当職員5000人、送還に携わる入国管理担当の要員1万人をそれぞれ増員する内容だ。不法移民対策に非協力的な自治体への連邦政府の補助金交付を停止することも盛り込んだ。トランプ氏は署名後の演説で「米国は今日から国境を取り戻す」と強調した。
トランプ氏は署名に先立つ米ABCテレビのインタビューで、壁建設は数カ月以内に始まり、費用はいったん米国が負担するが、メキシコ政府が後に全額返済すると説明した。メキシコは支払いを拒否している。ロイター通信によると、31日のトランプ氏とメキシコのペニャニエト大統領との首脳会談は予定通り行われる予定で、壁建設問題は主要議題になる見通し。
一方、米メディアが掲載した難民受け入れに関する大統領令の草稿によると、テロリストが交じる可能性があるとして、内戦下のシリアからの難民受け入れを120日間、凍結。また、米国と敵対する国や紛争が続く▽イラン▽イラク▽リビア▽ソマリア▽スーダン▽シリア▽イエメン--の7カ国からの入国希望者に対し、査証発給を少なくとも30日間、中止する。米国の難民受け入れ数もオバマ前政権の計画から半減させ、年間5万人とする。
イスラム教徒の実質的な入国制限ともいえ、「米国の安全第一」を名目にした排外主義への批判が高まる可能性もある。