YouTuber が語る「日本の英語教育のここがダメ!!」
みなさんこんにちは。
このほど今セメスターの成績がすべて発表されまして、今期も無事、一単位も落とさずに修了できました。ひとつエッセイで満点をもらった科目があったのが嬉しかったです。わたしは会話についてはまったく大したことがないのですが、ライティングに関しては割とよい評価をもらうことが多いです。喋るより書くほうが簡単ですからねえ、辞書や文法書を使えるし、あとで推敲できるし。
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で、今回はせっかくこういう流れですので、外国語学習についての話をします。
YouTube を見ていたら、ちょっと面白い動画を見つけました。
この方はよく知られた YouTuber で、カナダから来日して初歩から日本語を学び、現在も日本にお住まいとのことです。
内容は動画を見ていただきたいんですが、ここでいちおう簡単にまとめておくと、
- 日本の英語教育はあまりにも駄目すぎる
- 高校英語の教科書を見たとき「何じゃこれ!!」と思った。載っている例文がことごとくおかしい。日常では使わないような表現ばかりが載っている
- 単語帳の丸暗記なんてまったく意味がない。英語と日本語は一対一で対応しないので、そんなやり方で覚えられるはずがない
- 日本の教材なんて全部ダメなので、アメリカのサイトやキッズ番組などを見て(日本語を介さずに)英語だけで勉強したほうがいい
- とにかく日本の英語教育はおかしすぎる。ゼロからすべてやり直してほしい。せめて教科書は適切なものにすべきだ……
と、日本の英語教育のダメさをこれでもかと指摘してくれています。いやあもう気持ちいいくらいにボロクソですね(笑)
ただ、こういった意見ってもう何十年も前から見られるものなんですよねー。しかし文科省もさっぱり外国語教育の見直しなんてやる気がないので、いつまで経っても何の改善もされないという。
学校教育がこうなので、たとえば社会人が英語を独習するぞ、というときにさえ「TOEIC問題集を解きまくる!」とか「単語帳丸暗記!」とか「ひたすら聞き流す!」といった「苦行系」「根性系」になってしまうわけですな。
まあそうなってくるとですね、これって学校での英語教育に限った話じゃないですよね。
ちょっとスケールが大きくなりますが、日本人って「効率の良いやり方を考えよう」とか「科学的な方法でやろう」みたいなスマートな考え方が、もうほんとうに肌に粟を生じるほど嫌いなんだと思います。
とにかく「汗と涙とド根性!!」じゃないと気が済まないんですよね。「効率的なやり方を工夫する」なんて絶対に許さなくて、「いくら不合理であろうとも、決して文句を言わず黙って従う、根性と忍耐で打ち克つ!!」みたいなことこそが真の美徳だと考えて疑わないわけですね。まあほとんど強迫観念みたいなものなのでしょう。
こういった「スマートなやり方は敵だ!」という考え方って日本社会のあらゆるところを支配していて、
「協調性を養うには組体操! 部活! うさぎ跳び! 豪雪でも駅伝大会! 素手で便所掃除!!」
「新入社員はサービス残業なんて当たり前! ワーク・ライフ・バランスだと? 意味のわからない英単語を並べて何のつもりだ!! 甘えるな!! 根性根性ド根性!!」
みたいな、竹槍でB29と闘おうとした祖先の血を脈々と受け継ぐみなさんによる我慢大会がきょうも続いているわけですね。まあ愉快なもんです。
(ま、わたしはそんなニッポン国を、遠い北欧の地からアイスコーヒーでも飲みつつ眺めながら『いやあ、大変ですねー。ご苦労様です』とか言いたいがためにこっちに来たようなものなので、みなさんはそのままサービス残業や素手便所掃除をやっててくれていいんですけどねー)
……えーとなんだっけ、そう英語の話でしたね。
で、本来楽しいはずの外国語の学習についても、なぜかこの「汗と涙とド根性!」になってしまうんですよね日本では。「単語帳を丸暗記!」「まるで古文書を解読するような文法学習!」「TOEICの無味乾燥な試験問題で独習!」などと、「意地でもスマートな学習方法なんて採用しないぞ!」という堅い決意のもとに雪中行軍を繰り広げては天に見放されていくわけですなー。かわいそうに……。
日本語専攻のエストニア人学生たちはどうやって日本語を学んでいるのか
わたしもせっかくエストニアに住んでいますので、ここでちょっとエストニアの話をしましょう。
エストニア人はおおむねトライリンガル(三か国語話者)で、ソビエト連邦からの独立後に教育を受けた世代だとほとんどの人が英語を普通に話せます。そのため「エストニア人はどうやって英語を習得するのか」というのは、日本の英語学習者にはそれほど参考にならなさそうです。みんな幼少の頃から自然に英語に触れて成長しますので。
では、英語とは違って言語の系統的にも遠く、触れる機会も少ないであろう日本語だったらどうでしょうか?
わたしの在籍しているタリン大学には日本語専攻の学生がいて、わたしもたびたび交流しています。なかには来日経験が一度もないにもかかわらずたいへん流暢に日本語を話す学生も何人かいます。で、語学の話になるとわたしはよく質問するんですね。「あなたはどうやって日本語を勉強したんですか?」と。
返ってくる答えはだいたい以下のとおりです。
- 好きな日本のTV番組をたくさん見た
- 日本の歌謡曲をたくさん聴いた
- 好きな本や漫画をたくさん読んだ
- 日本のビジュアルノベル(これはわたしは詳しくないのですが、ストーリーを追うタイプのパソコンゲームのことらしいです)をたくさんやった
- 日本語専攻の学生同士で日本語でたくさん話した
こんな感じ。「日本語の単語帳を丸暗記して……」とか「日本語の文法書を徹底的に読み潰して……」みたいな回答が返ってきたことはこれまでに一度もありませんでした。
もちろん彼らも大学で語学を専攻しているわけですから、文法もきっちり勉強しているし、漢字ドリルをやったりしているし、単語の暗記もやっているんですよ。でもそれはあくまで学習のうちの一部であって、メインになっているのはもっと発展的で、能動的で、自分の興味に基づいての学習なのでした。
で、これは言うまでもないと思うんですが、「汗と涙とド根性で単語帳丸暗記!」よりも、「大好きな日本のアニメを日本語で視聴」のほうがよっぽど楽しく勉強できますよね。楽しさだけじゃなくて、学習スピードや効率性もどれほど違うことか……。
「苦行系」が無理なひとはとっとと「楽しみながら学習」に移行しましょう
世の中には「苦行」を「ゲーム感覚で楽しめちゃう人」というのがいます。
「学問には大して興味がないけど受験は大得意!」とか「英会話はさっぱりだけどTOEICのスコアを上げるのが大好き!」とかいったタイプのひとたちですね。よくブログなんかで「苦行系」「根性系」の英語学習法を紹介していたりします。「まずは単語帳を丸暗記!」「つづいて文法書をみっちり!」……みたいにピラミッドを積み上げていく感じのやつね。「苦行系」ってなぜか実態に反して効率が良い学習法に見えてしまったりするので、はてなブックマークが1000とか付いていたりします。
そうではない「苦行大嫌い」「根性論苦手」「ゲーム感覚で、なんて無理無理」なひとがこの手の学習法をやろうとすると、退屈さに耐えきれずに3日間くらいで投げ出して八甲田の麓で死を迎えてしまうパターンが多いのではないでしょうか。
そういう「苦行イヤ」なひとは、根性系メソッドからは早めに見切りをつけて、冒頭の YouTuber さんが紹介していたような、また先に述べた日本語専攻エストニア人学生たちが行っているような「楽しみながら学ぶ」やり方に移行したほうがいいと思います。そっちのほうが絶対効率がよいので、ね。