大阪 警官ネコババ事件





 現在30代半ば以下の方はご存知ないであろうから簡単に書いておきたい。警察官による犯罪を、 警察署ぐるみで善良な市民になすりつけようとした、絶対にあってはならない最悪の冤罪事件である。 このような事件はいくら糾弾しても、し過ぎるということはない。
 なお当方が承知していなかった部分、及び記録がなかった部分について、読売新聞大阪社会部 編の「警察官 ネコババ事件」を参照した。


 事件は昭和63年2月に起きた。2月6日、大阪堺市でフードショップを営む具足みち子さんが、店内に 落ちていたと15万円の入った封筒を槙塚台派出所へ届けた。派出所にいた巡査・西村正博(当時31)は 拾得物受理の書類は作らず、“あ、それやったら、届けが出てるわ” と言って、具足さんの 名前、年齢、電話番号をメモしただけで、具足さんから15万円を受け取り、ネコババしたのである。 この時まだ遺失届は出ていなかった。落としたかどうかも分からないうちから届ける人は通常いない。 落とした男性が15万円がないことに気づいたのは翌7日朝、槙塚台派出所に正式に届けたのは、9日 昼過ぎである。
 西村は具足さんに顔を見られないように中腰でメモしていた。時間も2〜3分であり、具足さんの 記憶にあるのは西村の頭髪と体形だけで、顔はほとんど見ていない。
 2月9日落とし主の男性が、ひょっとしてと具足さんの店に現れ、具足さんが堺南署に「一体どう なっているのですか」と電話をしたことから、拾得届がでていないことが分かった。
 翌2月10日、刑事課長を外し、署長が直接巡査部長を指名して、副署長‐警ら課長が指揮するという 異例な形で捜査は始まった。巡査部長は具足さんが犯人だからそのつもりでやれと言われたという。
 実は前日2月9日の夜、具足さんは別の刑事に調書を取られている。この刑事は具足さんはシロと 確信し、上司の警ら課長にその旨報告した。警ら課長は、それじゃ警察官が犯人になってしまうと 言ったという。
 署長・副署長・警ら課長は栄転の定期異動がせまっていた。そのため何としても堺南署内部から 犯人を出すことは避けねばならなかった。副署長や警ら課長を雲の上の人と考える巡査部長は、 言われた通りに具足さんを犯人にでっち上げるために突っ走った。
 府警本部ではこの構造を掴んでいたと思われます。そのため府警幹部の個人的な怒りから、本部長が 謝罪を表明するたびにこの3人への処分が重くなった。最終的に署長を引責辞職、副署長と 警ら課長を部下を持たないポストまで落とした。

 関係者の皆さんいかがですか、ズバリではありませんか、ハハハ。
 これが有罪率99.9%という我が国の刑事司法の入り口を担う警察の実態です。


 具足さんが届けた時、警察官がいないときは閉まっている派出所内部のドアが開いていた、と 言っても、横領した西村の言うことのみを信頼できるとし、当時派出所に警察官はいなかったとして、 具足さんの言うことを無視した。

 具足さんが届けてからすぐに、派出所の前に白バイが止まっているのを市民が目撃している。 具足さんが届けた時、派出所の前に白バイはなかったと言っていることから、表から見えないところに 白バイを置いていたのだろう。そして具足さんから15万円の入った封筒を受け取り後、白バイを移動 した。このようなチャンスを狙っていたのかもしれない。

 具足さんに当日の警察官の面通しをさせた際、横領した西村にヘルメットを脱ぐように指示 しなかった。そのため具足さんは、体形はこの人に似ているけど・・・、と断定できなかった。

 巡査部長の岡田広満(当時36)は、スーパーで鍵を拾得した人が派出所に警察官がいなかった ので、郵便局(府道から見て派出所のすぐ裏手にある)に鍵を預けたという証言を捏造した。ところが 郵便局長はそのような人はいないと断言した。郵便局職員なら警察の嘘に合わせてくれる、どうにでも なると浅はかな考えを持ったのだろう。残念ながらそうはうまくいかなかった。

 岡田は、派出所へ往復する具足さんを郵便局から見た人がいるという、捏造の証言に合わせる ため、具足さんが府道ではなくわざわざ遠回りとなる裏道を利用した(郵便局から府道は見えない)と する調書を偽造した。府道であれば、派出所までものの1分とかからない(具足さんの店も派出所も 府道に面している)が、裏道は時間がかかる。また当時裏道は、工事中の個所があり利用できなかった。

 岡田は、そのような人はいるはすがないにもかかわらず、具足さんが封筒を持って帰ったのを 見た人が大勢いると虚偽の誘導をした。

 岡田は、具足さんの夫に「夫婦いうのは他人の始まりや。よめはん、何しとるかわからへんで。 浮気してるか何しとるか。お宅もばれへんかったらしたいやろ。おいらでもしたいがな」、「大会社の 社長夫人でも奥さんでも万引きするんやで。お宅も商売やってたら税金ごまかしてるやろ」等々、名誉を 毀損する暴言を繰り返した。方言の違いもあるが、レベルが低い。この程度の者が巡査部長などという 肩書きを付けていて良いものか。

 岡田は、具足さんが封筒を切っているの見たという、いるはずのない “目撃者” を捏造した。 その人は誰かという問いに、“人権” を盾に “目撃者” を明かさなかった。西村が犯行を自供し、大阪 府警が具足さんから損害賠償請求訴訟を起こされ、事件が堺南署にとどまらず大阪府警の問題となって しまった後も、岡田は “目撃者” を明かさなかった。“目撃者” の存在が事実であれば、警察内部の 調べに隠す必要はない。“岡田が言わないから分からない”、で済ましたことは、警察組織自体に身内の 犯罪を隠蔽する体質、冤罪を容認する体質があるためである。

 岡田は、封筒の切れ端が、具足さん方の庭から見つかったと証拠を捏造した。


 読売は、具足さんが届け出た日から1カ月後の3月6日、事実関係のみで第一報を報じた。
 その時の取材に堺南署の副署長・谷口寿一は、「なんで知ってるッ」「だれから聞いたッ」「女から の電話か」「あの女、おかしい」「書くのは待ってくれ。そのうち(女を)逮捕する。逮捕したら お宅だけ真っ先に言うがな」
 署長の井上正雄は、「今書かれたら大変やがな」などと過剰反応を示した。
 逃げも隠れもしない人を調べているのに、なんで「今書かれたら大変やがな」なのか。無実の人を 犯人にでっち上げるのでなく、正しい捜査をしているなら、なんで「あの女、おかしい」「書くのは 待ってくれ」などと過剰反応をするのか。
 大刷りが出来上がった深夜にも、井上から記者へ「おたくの社には何人も知人がいる。君の書いた 記事は没にできる。書くのなら対抗手段も考える」などと言ってきた。朝刊が出てからも「誤報だ。 まもなく主婦を逮捕する」と言ってきた。

 読売の報道を見て府警本部が動き、府警本部の捜査2課がこの事件の捜査を行うことになった。 ん・・・これは・・・、と府警幹部は感じたのだろう。3月6日の朝7時には、井上から堺南署の 刑事課長・古賀忠久に、この事件は府警本部の捜査2課が捜査することになったと電話があった。
 具足さん方を訪れた捜査2課の警部補らは「殺人事件並みの捜査体制をしいています。こんなこと 異例です」とていねいにあいさつしたという。
 井上は府警本部から電話があった時点で、まずいことになったと考えたことだろう。井上に もう少し指導力があれば、利口であれば、西村に15万円を返金させ、拾得届は後から見つかった として、堺南署の内部だけで短期間に収束することが出来た。そうすれば全国的に報道されることも、 大阪府警に汚点を付けることも、自らの人生を棒に振ることもなかった。 誤りは初期の段階で正していれば被害は少なくてすむ(良い言葉 だと思いませんか?)。―森羅万象に共通する真理です。しかしこの真理が唯一通用しないのが 我が国の刑事司法です。通用しないように法を “整備” し “運用” しているのです。冤罪の 被害に遭われた方の損害賠償請求訴訟に対する司法の対応を見ても明らかでしょう。デタラメな 司法判断が行われるのも、その原因は全て自民党政治に起因するのです。

 捜査2課の調べで、犯人は具足さんではなく、西村の可能性が高いということになった。
 監察室と捜査2課の調べに、3月25日西村は横領の事実を認めた。当初横領の意志はなく、保管中に 騒ぎが大きくなって困り、2月13日に自宅で15万円を焼却したと供述したという。横領の意志がない 者が何故 “あ、それやったら、届けが出てるわ” と嘘を付く必要があったのか。

 西村正博は3月26日付けで懲戒免職となったが逮捕はされていない。大阪府警は、「金額 からいっても逮捕する事案ではない」というが、ではなぜ堺南署は具足さんを逮捕する々と大騒ぎ していたのか。

 5月25日具足さんは、その後の大阪府警の対応等に怒り、慰謝料 200万円の損害賠償請求訴訟を 起こした。3月25日深夜の大阪府警による発表後、謝罪に訪れたのは、堺南署に新しく着任した 新署長のみで、新署長はこの件に関し引継ぎを受けていないので分からないと答えたという。 また捜査2課員が具足さんに、西村の嘆願書を書いてくれと何度も依頼していた。
 これに驚いたか大阪府警は、5月17日に遡って、井上正雄を減給 1/100 1カ月、谷口寿一と 馬場博警ら課長(当時)を戒告、古賀忠久を厳重注意の処分とした。

 具足さんの提訴を受けて国家公安委員会は6月23日、新田勇府警本部長を減給 10/100 1カ月、 長尾良次警務部長を減給 2/100 1カ月の処分とした。
 また大阪府警は同日、井上正雄の引責辞職と岡田広満の他署への配置替え(8月2日依願退職) を発表した。

 7月15日、国家賠償請求訴訟の第1回口頭弁論が大阪地裁で開かれ、府警側は請求を認諾(すべて 認めること)した。また大阪府警は同日、谷口寿一と馬場博が部下を持つポストは好ましくないとして、 それぞれ警務部付、警ら部付に18日付で異動させると発表した。200万円は府警本部長ら幹部が 私費で弁済したという。・・・・・・大した金額でなくとも、刑事司法にとって国家賠償を認めること がどういうことなのか伺われて興味深い。

 読売に報道されてからの対応はそれ程悪くなかったのではないかとも考えるが、どのような意図で 善良な市民に罪をなすりつけようとしたのかや、証言や証拠の真偽を大阪府警が発表しなかった点、 堺南署が具足さんを逮捕する々と大騒ぎしたにもかかわらず、西村を逮捕しなかったのは大きな問題 として残る。

 読売が報道しなかったら、弁護士を2人も依頼する状況になかったら、どのようなことになっていたか。 国民は自らの問題として考えなければなりません。 2005年には無実の男性が10カ月も 警視庁に拘留されている。

 社会正義を実現するために、マスコミが如何に大きな力を持っているか、関係者は認識しなければ なりません。正義の実現よりも自身の安泰な生活を、長いものには巻かれろの処世術を大事とするなら、 マスコミの道に進むべきでない。






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