「試合を見れば分かる、中村俊輔がFマリノスから去った本当の理由」2017Jリーグ アジアチャレンジinタイ インターリーグカップ バンコク・ユナイテッド-横浜Fマリノス
タイで1次キャンプを行っている鹿島と横浜Fマリノスが、タイのバンコク・ユナイテッドとスパンブリーFCと交互に2試合を行うインターリーグカップ。その録画がDAZNであったので、昨晩はその試合を見てみた。
前半の横浜は若手を多く起用してきて、まだコンディションもコンビネーションも整っていないのか終始ギクシャクした連携で、守備から攻撃への切り替えが遅くてスムーズな攻撃は出来ていなかったが、それだけに監督のやりたい事ははっきり見えていたように思う。
基本的に守備時は4-4-2のゾーン・ディフェンスで、攻撃時は4-2-3-1になって両ウイングがワイドに張った形になる。そしてボールを奪ったらウイングにサイドチェンジを通し、相手の守備を引き寄せて中央にスペースを作らせ、そこに中盤の選手が入って来てチャンスメイクをする。前半19分の富樫のゴールも、前田、中島とまさにその形から生まれたものだった。
ところが後半から、中澤、扇原、喜田、山中と今期の中心になるであろうメンバーが入って来たとたんに、ゾーン・ディフェンスらしさがチームから失われてしまう。ボールを持ったバンコクの選手に全員が引き寄せられすぎて自陣のあちこちにスペースを作ってしまい、そこに次々に入り込まれてパスを繋がれピンチを作ってしまう。後半6分の同点ゴールはFKを直接叩き込まれたものだが、そこに至るファールは苦し紛れの守備から生まれたもので、前半よりも明らかに全体がバタバタしてしまっていた。
最終的には、中島のインサイドで狙いすましたシュートと、扇原のロングパスに抜け出した仲川がロビングで合わせたゴールで3点を奪って逃げ切りはしたが、前半に見えていたサイドチェンジがすっかり影を潜めてしまい、せっかくサイドでオーバーラップをしているのに中央から無理に崩そうとしてボールを奪われる場面が目立った。特に山中とかね。
本当はかっちりとしたゾーン・ディフェンスのサッカーがやりたいのに、ベテランを入れれば入れるほどカオスなサッカーになって行くのはモンバエルツ監督にとっても頭が痛い事だろう。と言うか、逆に今までのなんちゃってゾーン・ディフェンスで今までの2シーズンをよく我慢してきたなと思う(笑)。
特に中村俊輔が入ると、彼は自身の判断でポジショニングを自由に変えてボールに絡むので、とたんにゾーンの守備組織が機能しなくなってしまう。欧州でも、メッシやイブラヒモビッチのように組織から離れてプレイする選手はいるが、あくまで前線の選手であるし、何より毎試合1点以上取れるスペシャルな存在だからこそ許されるわけであり、中村が欧州の戦術家とは水と油の関係になるのは当然の事だろう。
こういう場合、欧州では監督の立場が優先されるのが常識である。香川を育てた恩人として「良い人」のイメージが付いているクロップも、マインツ監督時代は絶対的エースとして頼っていたモハメド・ジダンを、ドルトムントに移ってからは新加入の香川を重用し、ほぼチームにいないかのごとく徹底的に干してしまった。そこまでどれだけ貢献したベテランであっても、監督にとって必要が無くなればゴミのように捨てられるのが当たり前の世界なのだ。そしてクラブも、監督と契約している以上は方針に口を出さない。
中村俊輔の磐田への移籍については、マスコミによってマリノスを崩壊させた悪者のシティ・グループフロントとモンバエルツ監督から逃げ出した中村を、磐田の名波監督が救ったみたいな美談仕立てにされているが、まあ相変わらずだなと言うしか無い。
えてして日本の場合は、ファンとマスコミ、時にはクラブの首脳でさえ、監督よりも選手のほうが立場が上と思っている場合が多く、監督も自分の戦術よりも選手の希望や都合を優先しがちである。そのため、成績が不振になっても原因があやふやになりやすい。もちろん、そんな日本的ななあなあのやり方で良いとする方向性もアリだが、ACLやCWCなど世界を目指すには困難な道であることは覚悟すべきである。
↓よろしければ、応援の2クリックよろしくお願いします。
サッカー ブログランキングへ |
にほんブログ村 |
2017/01/26 | Jリーグ
関連記事
-
日本にとって真の「クラブ」は、まだ大学サッカーにあるのかもしれない
相変わらずDAZNはサウサンプトンのFAカップやリーグカップをやってく...
-
「セレッソが昨年の雪辱を果たし、3年ぶりのJ1復帰を決める」J1昇格プレーオフ決勝 セレッソ大阪-ファジアーノ岡山
「セレッソが昨年の雪辱を果たし、3年ぶりのJ1復帰を決める」J1昇格プ...
-
「勝ち点差15も足が止まれば一晩でひっくり返る」Jリーグ・チャンピオンシップ第2レグ 浦和レッズ-鹿島アントラーズ
いやしかし、前半の7分に浦和のスローインから電光石火の攻めで、興梠がD...
-
「アウェイゴールでリードを許した鹿島逆転の鍵は、柴崎の復活にある」Jリーグチャンピオンシップ決勝 第1レグ 鹿島アントラーズ-浦和レッズ
昨晩は飛行機事故のショックですっかり存在を忘れていたJリーグチャンピオ...
新着記事
-
「2トップ下の岡崎は、結局は割れ鍋に綴じ蓋」イングランド・プレミアリーグ第22節 サウサンプトン-レスター・シティ
チャンスは作りながらも攻撃陣の決定力不足が深刻でリーグ戦は4連敗してい...
-
「せっかくの武藤の先発復帰も、マインツはケルンに塩漬けされる」ドイツ・ブンデスリーガ第17節 マインツ-ケルン
武藤がようやく長い怪我から復帰して、ほぼ1年ぶりに先発出場したケルン戦...
-
「さしもの長谷部も、GKの一発退場ハンド芸は整えられない」ドイツ・ブンデスリーガ第17節 ライプツィヒ-フランクフルト
昨日は午後9時から、スポナビライブでサウサンプトン対レスターの試合を無...
-
「相変わらず不安定なドルトムントだが、香川の生きる道は見えたかなと」ドイツ・ブンデスリーガ第17節 ブレーメン-ボルシア・ドルトムント
ビュルキやベンダーは怪我、オーバメヤンはアフリカ・ネーションズカップで...
PREV : 日本にとって真の「クラブ」は、まだ大学サッカーにあるのかもしれない
NEXT :