一生に一度は抱いてみたい可愛いコアラ。オーストラリアでしか生息せず全国的には絶滅も危ぶまれているという。今回の殺処分は南東部ビクトリア州で増えすぎた野生のコアラの過密状態を解消するために行われたようだ。かつてはコアラの楽園だったオーストラリアで一体何が起こっているのか。
コアラを絶滅から救うには、大量の殺処分が必要かもしれない
多くを救うには犠牲が必要な事もあるとは言え…
オーストラリアと言えばカンガルーとコアラですが、現在コアラは、ただでさえ絶滅の危機に瀕しているのに、クラミジアの流行により更なる危機を迎えています。そして複数の科学者が、可愛いコアラの絶滅を防ぐには、大量のコアラを安楽死させねばならないと提唱しているのです。
クラミジアは古くからある性病ですが、かかるのは人間だけではありません。BBCによれば、バクテリアは多くの哺乳類、鳥類、爬虫類にも見られ、現在オーストラリアのコアラ達に大きな被害を与えているそうです。概算では大陸のコアラの約50%がクラミジアにかかっていると言われ、狭い集団の中では80%にまでのぼるとも考えられています。その感染が広まる速さと、感染したコアラ達の経験する苦痛や衰弱を考慮し、ワクチンの研究が急ピッチで進められる間感染拡大を食い止めるため、保護論者の中には大量の殺処分を要請している人達もいます。
コアラを襲っているクラミジアは、人間が感染するクラミジアとは別の種類―ただし、感染したコアラの尿から人間も感染する危険性がありますが―で、コアラが感染するとその症状は深刻で、視力喪失、不妊、そしてダーティー・テールと呼ばれる症状を引き起こします。
「ダーティー・テールは本当に悲惨です」とバーネット研究所の感染病博士のDavid Wilson氏。「尿道が炎症を起こして、非常に大きく腫れてしまいます。これは激痛を伴い、多くは膿を出しながら死んでしまいます。」
BBCの記事からの抜粋
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コアラ700頭、極秘で殺処分 オーストラリアの州政府
オーストラリア南東部のビクトリア州政府が、増え過ぎたコアラを「間引き」するため、686頭を秘密裏に殺処分していたことが明らかになった。現地紙の「オーストラリアン」が3月4日に報じた。
国内全体では5〜10万頭に激減しており、州政府の判断に批判の声が上がっている。
コアラの殺処分が行われたのは、オーストラリア南東部ビクトリア州の観光名所、ケープ・オトウェイ。2013年9月から14年3月にかけて3回に分けて行われた。8000頭ものコアラが過密状態で生息し、エサとなるユーカリの葉が減少していたという。
ビクトリア州政府のネビル環境相は4日、「エサ不足による餓死を避けるには不可欠な措置だった」と主張し、批判にもかかわらず今後も殺処分を続ける考えを示した。
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オーストラリアの686頭コアラ大量殺処分の報道に、地元民の反応
「ビクトリア州のコアラはヨーロッパからの入植者が毛皮目的で乱獲した結果、20世紀前半にほぼ絶滅しました。その後、保護機運が高まり、近隣の島で繁殖していた個体を再導入したのですが、土地開発などでユーカリ林の面積が減り、分断されたところへ人為的に住まわせたので、逆に過密状態に陥る地域ができてしまったのです」
そして、国全体で見れば、コアラは絶滅の危機に瀕しているものの、他地域や他州に移すのにはリスクがあるという。
「ユーカリには数多くの種類があります。コアラはそのうちのわずか数種類しか食べず、さらにビクトリア州など南のコアラと、クイーンズランド州などの北のコアラで食べる種類が違う。同じ州に住むコアラでさえ、餌のユーカリの種類が異なる場合があります。そのぐらいユーカリの種類に対する強い好みがあり、しかも嗜好(しこう)は一生変わりません」(A氏)
生えているユーカリの種類が違う他地域、他州へ簡単には移せず、ましてや海外の動物園となると、コアラが好むユーカリを現地で育てられるかの問題もあり、なおさら難しいというわけだ。
では、今回の殺処分に対し、当のオーストラリア人はどんな感情を抱いているのか。同国出身で大阪弁ペラペラのお笑い芸人、チャド・マレーン氏に聞いた。
「コアラって近くで見たら意外にケモノケモノしてるし、汚いし、起きてる時は凶暴やったりするんです。でも、僕らにとってはやっぱり“国の顔”で、特別な愛情を持ってる動物。そやから『殺処分』って見出しが目に入った時、何してくれてんねんって思いました。
けど、よくよく記事を読んでみると、他にどうにもできんかったんやろなあと。ただ、ちゃんとした理由があるんなら堂々とやればいいのに、こっそりやってたってゆうんがセコくて印象悪い。それが地元の人の平均的な感想でしょうね」
しかし、オーストラリアにおいて、今回の報道はさほど話題になっていないのだとか。
「ペットの犬に噛(か)まれたり、道路で車にひかれたり、住宅地のプールに水を飲みに来てそのまま溺れたりして死ぬコアラが、毎年何千頭とおるんです。国内ではそっちのほうが大きな社会問題になってるんですよ」(マレーン氏)
結局、コアラを絶滅の危機にさらしているのは、昔も今も人間だってことのようで…。