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今週の指標 No.1159 基準改定等を反映した2016年7-9月期四半期別GDP速報(2次速報)を踏まえたGDPギャップ及び潜在成長率について

ポイント

2017年1月25日

  1. 基準改定等を反映した2016年7-9月期のGDP2次速報を踏まえたGDPギャップ(注1)は▲0.5%となり、2016年4-6月期(▲0.6%)からマイナス幅が縮小した(図1)。また、今回試算値(▲0.5%)は1次速報に基づく試算値(▲0.7%)からやや縮小したが(表)、方向感には大きな変化はみられなかった(図2)。

  2. また、直近の潜在成長率は+0.8%となり、1次速報に基づく試算値(+0.4%)から上方改定となった。この要因としては、基準改定を通じて、各種の推計手法の開発や、より詳細な基礎統計の取込みのほか、研究開発(R&D)投資の資本化を含む国際基準(2008SNA)に対応したことなどにより、直近のGDP成長率が上方改定されたため、足下のGDPのトレンドの伸びが上向き、全要素生産性(TFP)の伸びとして潜在成長率の推計に反映された結果である(注2)(図3)(図4)。

  3. なお、今回の推計に当たっては、SNAの平成23年基準改定を踏まえた推計方法の改定を行ったほか(注3)、資本ストックの推計に用いるデータを「固定資本ストック速報」に変更するなど、所要の推計方法の変更を行っている(注4)。

  4. 最後に、GDPギャップ及び潜在成長率について、今後は内閣府政策統括官(経済財政分析担当)の試算値として月例経済報告のホームページにて公表を行うこととする(ただし、数値の解説は今後も今週の指標にて行う予定)。

(注1) GDPギャップ=(実際のGDP-潜在GDP)/潜在GDP。GDPギャップのマイナスは供給に対して需要が不足していることを意味する。この推計にあたっては、潜在GDPを「経済の過去のトレンドからみて平均的な水準で生産要素を投入した時に実現可能なGDP」と定義している。潜在GDPの推計方法の概要は、内閣府「日本経済2011-2012」付注1-6を参照。なお、GDPギャップの大きさについては、前提となるデータや推計方法によって結果が大きく異なるため、相当の幅をもってみる必要がある。

(注2) 潜在GDPは、「生産関数アプローチ」により供給側の概念として推計を行っているが、全要素生産性(TFP)は、実際に需要された実質GDPから、資本投入と労働投入を控除して作成した残差実績のトレンドとしてHPフィルターを用いて推計を行っている。このような推計手法をとっているため、TFPや潜在成長率の推計値は直近の基礎統計の動向に強く影響を受ける傾向があり、相当の幅をもってみる必要がある。

(注3) 資本投入について、従来は1国ストックのうち民間部門及び公的企業について、製造業と非製造業(公的企業は全て非製造業と仮定)と分けて推計を行っていたが、研究・開発(R&D)投資の資本化に伴い、今回推計から、1国ストックのうち民間部門及び公的企業を有形固定資産と無形固定資産(知的財産生成物)に分割したうえ、有形固定資産を製造業と非製造業(公的企業は全て非製造業と仮定)に分けて推計を行う方式に変更している(つまり、従来は製造業・非製造業別の資本投入量を推計していたが、今回から、無形固定資産、製造業(有形固定資産)、非製造業(有形固定資産)の3系列に分けて推計を行っている。)。

(注4) 2014年7-9月期2次QEを踏まえたGDPギャップの推計時以降については、内閣府「固定資産残高に係る参考試算値」(暦年値。純概念のストックであり、連鎖方式に基づいた実質値。)を用いて暦年ストックを推計したうえ、四半期値の推計(暦年値の四半期分割及び延長推計)に内閣府「民間企業資本ストック」(四半期値。粗概念のストックであり、固定基準方式に基づいた実質値。)を用いていた。しかし、2017年1月25日から、内閣府経済社会総合研究所より、純概念のストックの四半期速報値である「固定資本ストック速報」(四半期値。純概念のストックであり、連鎖方式に基づいた実質値。)が公表されることを受け、今回推計より「固定資本ストック速報」を用いて四半期の資本ストックを推計する方式に変更することとした(なお、1993年以前の数値については、「固定資産残高に係る参考試算値」及び「民間企業資本ストック」を用いて延長推計を行っている。)。


図1:GDPギャップの推移

表:GDPギャップの推移

図2:GDPギャップの新旧比較

図3:実質GDPの新旧比較

図4:潜在成長率の新旧比較



問合せ先
担当:参事官(経済財政分析-総括担当)付
吉田 充、本橋 直樹 直通:03-6257-1568

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