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 米国のトランプ大統領は、メキシコとの国境に壁を造ることなど不法移民対策を強化する複数の大統領令に25日署名する。週内には、テロ対策として、中東からの入国を制限する大統領令も出す。複数の米メディアが伝えた。大統領選で批判を受けてきた、不法移民排除やイスラム教徒の一時入国禁止などの排外主義的な政策が具体的に動き出すことになる。

 トランプ氏は25日午後(日本時間26日未明)、治安やテロ対策を担う国土安全保障省を訪れ、演説する予定だ。その際、メキシコからの不法移民を念頭に、壁建設など不法移民対策に関する大統領令に署名するとみられる。トランプ氏は24日夜、ツイッターで「明日は国の安全保障で大きな日になる。とりわけ壁を造る!」と強調した。

 ワシントン・ポスト紙などによると、トランプ氏は25日に、不法移民によって子どもを殺害された親をホワイトハウスに招待し、面会する予定という。国境警備のために5千人以上の職員を雇用するほか、不法移民の強制送還などの対策に協力的ではない都市に対し、政府が関与を強められる内容の大統領令も準備されているとしている。

 メキシコ国境での壁建設は、トランプ氏にとって選挙戦のスローガンだった。メキシコからの不法移民を「麻薬密売人」「強姦(ごうかん)犯」などと決めつけ、不法移民によって米国の雇用が奪われたと主張してきた。

 壁の建設を指示する大統領令を出すことで、不法移民対策とともに、治安対策や雇用問題にも取り組む姿勢を強調する狙いがあるとみられる。

 また、ロイター通信などによると、トランプ氏は週内に、シリアやイラクなど中東・アフリカの7カ国について、ビザの発給を30日間停止する大統領令も出すという。対象国はさらに広がるとの報道もある。

 トランプ氏は、イスラム教徒の移民や難民をテロの要因と結びつけてきており、これらの大統領令をテロ対策の一つとして位置づける考えだ。

 さらに、迫害を受ける宗教的少数者を除き、全ての難民の受け入れを120日間停止する大統領令も検討されている。より厳しい入国審査システムが確立されるまで、維持される見込みという。オバマ前政権が想定した17年会計年度(2016年10月~17年9月)の難民受け入れ数11万人を、5万人に抑制する方針だという。

 ニューヨーク・タイムズ紙によると、オバマ政権下で閉鎖されたテロ容疑者を拘束するための秘密施設「ブラック・サイト」の再開や、使用可能な尋問方法の強化を検討する内容の大統領令も準備されているという。(ワシントン=杉山正)