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行政の文書 作成と公開を徹底せよ

 公文書管理法は4月で施行から6年となる。だが、その精神はいまだ浸透したとは言えない。

     内閣法制局が、集団的自衛権行使を容認する閣議決定に備えて作成した想定問答について、総務省の情報公開・個人情報保護審査会が17日付で、開示すべきだと答申した。

     情報公開請求に対して、法制局側は、想定問答は横畠裕介長官の決裁が得られず不採用になったもので、公文書には当たらない、と開示を拒んできた。しかし、審査会は、複数の職員の閲覧・検討に供されるなど組織的に利用されてきたとして、この見解を一蹴した。当然の判断だ。

     法制局は、「法の番人」と呼ばれ、法令解釈を担う。ご都合主義的な法解釈をしたことで、自らその権威を傷つけてしまった。

     行政機関が必要な文書を適正に作成・保管しなければ、国民は情報公開請求の権利を生かせない。公文書管理法は、公文書を民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源と位置づける。情報公開法と併せ、車の両輪のように、国民の「知る権利」を支えるものだ。

     公文書管理法4条は、行政機関の職員に、「経緯も含めた意思決定に至る過程を検証できる行政文書」の作成を義務づける。意思決定の途中で横やりが入っていないかや、正当な手続きを経ているのかを後に検証できるようにするためだ。その目的を骨抜きにする解釈は許されない。

     環境省が、原発事故で出た汚染土の再利用を巡る会合の議事録を、全部開示としながら、実際には発言の一部を削除していたことも最近、判明した。法の恣意(しい)的な運用は、法制局に限ったことではないだろう。

     首相には、公文書管理の改善を勧告する権限がある。安倍内閣は省庁を指導すべきだ。また、法成立時、原則として何でも文書に残す文書主義の徹底が付帯決議でうたわれた。実効性が上がっていないならば、国会は法改正も検討すべきだ。

     公文書作成に消極的なのは、より住民に近いはずの地方公共団体も同じだ。東京都の豊洲市場移転をめぐっては、盛り土をしない空間を作る過程を記した文書がなく、調査の障害になった。

     公文書管理法は、地方自治体に対しても、文書の管理に必要な施策を実施するよう努力義務を課す。だが、都には公文書管理条例がなく、会議録などを作成するかは部課長の判断に任されてしまう。

     毎日新聞が都道府県・政令市67団体に聞いたところ、公文書管理条例を制定済みの自治体は8にとどまった。積極的な条例作りが求められる。行政文書の適切な作成と公開は、国・地方を問わず、行政の成熟度を示す指標となるだろう。

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