世界において「中国」、「中国人」という言葉が罵倒や侮蔑の道具として用いられトラブル化する事例がしばしば起き、その情報が伝えられるたびに中国国内では憤慨の声が爆発する。中国メディア・澎湃は24日、シンガポールの病院で医師が「ここは中国じゃないんだぞ」と中国出身の患者を一喝するトラブルが発生したと報じた。

 記事は、近ごろネット上に掲載されたある動画が多くの議論を巻き起こしていると紹介。動画の内容について「シンガポールの診療所で、中国出身の女性が高熱を出した1歳8カ月の女児を診察してもらった際、出された薬の服用量がよく分からなかったため、診療所に戻って診察室に勝手に入り医師に尋ねたところ、拒絶されて口論になった」と説明した。そして、口論になった際に医師が「ここは中国じゃない! ここにはルールがある」と叫んだと伝えた。

 そのうえで、動画を見たネットユーザーからは「中国を名指しすべきではない。医師にモラルがない」、「1つ質問に答えるだけなら大した時間じゃないのに」といった意見が出る一方で、「差別じゃない。単に事実を言ったまでだ」との声もあったと紹介している。

 記事は、トラブルの原因については「当事者ではないので、動画だけでは判断できない」としつつ、中国では診療を終えた患者が再び診察室に戻って質問する現象が「確かにある」と指摘。「大した問題ではない、という人がいるが、1つ質問をすれば続けて2つ3つとするもの。それが問題だ」とするとともに、さらに大きな問題としてすでに診察室で診察を受けている別の患者のプライバシーが侵害される点について言及した。

 そのうえで、シンガポールの医師が「中国」という言葉を口にしなければ大きなトラブルにならなかった可能性はあるものの、「一体問題はどこから起きているのか、考えるべきではないか。『郷に入れば郷に従え』というのは、ルールを守り、互いを尊重する事なのだ」と論じている。

 当時女児は40度近い熱を出していたとのことで、わが子の身を案じる母親が焦燥していたことが想像できる。しかし、すでに他の患者が診察を受けている診療室のドアを無断で開けて入り、質問するというのは、明らかに他人に対する配慮が欠けている。「中国」、「中国人」を差別的に用いるのは大いに問題だが、「どうしてそう言われてしまうのか」を冷静に考えることも必要だろう。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:123RF)