フランスと同じくドイツもトルコや近隣諸国から多くの移民を受け入れています。その結果、サッカードイツ代表は多くの人種が乱れ、近年ドイツでも議論を呼んでいます、
そんなドイツ代表の民族構成について調べてみました。
ドイツ代表の先発メンバー
まずはドイツ代表の先発メンバーを見てみましょう。EURO2016準決勝のフランス戦のメンバーを選びました。試合は0-2で敗れています。
▼GK
1 マヌエル・ノイアー(ドイツ系)
▼DF
21 ジョシュア・キミッヒ(ドイツ系)
17 ジェローム・ボアテング(ガーナ系)
4 ベネディクト・ヘーヴェデス(ノルウェー系)
3 ヨナス・ヘクター(ドイツ系)
▼MF
14 エムレ・ジャン(トルコ系)
7 バスティアン・シュヴァインシュタイガー(ドイツ系)
8 メスト・エジル(トルコ系)
18 トニ・クロース(ドイツ系)
11 ユリアン・ドラクスラー(ドイツ系)
▼FW
13 トーマス・ミュラー(ドイツ系)
先発メンバーを見てみると写真を見てわかる通りゲルマン系民族のドイツ人が多いです。半数近くがドイツ以外の出身という時代もありましたが、今は再び、白人であるゲルマン系民族が多くなっています。ドイツの移民の歴史に触れつつ、詳しくみていきましょう。
ドイツの移民の歴史
ドイツは現在、移民が人口の約2割を占め、イスラム教徒のテロなど社会問題化しています。
移民の割合をグラフ化しました。EU圏からが多くなっており、フランスとは異なりアフリカからの移民は少なくなっています。
アルバイトの語源となった、ガストアルバイターは1960年代に西ドイツに労働者として移住したトルコ系の移民です。彼らの2,3世代目がドイツの中でも少数ではない民族として台頭してきました。
ガストアルバイターは単身でドイツに渡るケースがほとんどでしたが家族を呼び寄せたことでその勢力が拡大するに至りました。ガストアルバイターは結局単純労働者として工場で働くことが多かったため社会的な地位は高くないケースがほとんどです。
ジェム・オズデミル氏がようやくトルコ系としてははじめてドイツ連邦議会に20年前に当選します。現在は少数政党の党首として、首相を争う立場にまでなっています。
トルコ系が抱える問題点としてはやはり、イスラム教徒であることです。トルコ系のイスラム教徒は元来は平和的で尊重の心をもった方ばかりだったのでした。
しかし、近年はIS(イスラム国)の影響で、本当に一部ではありますが危険なトルコ系イスラム教徒がドイツで事件を起こし、ドイツ国内では危険とみなされています。
こういった事情もあり、移民の受け入れ、特にイスラム教徒への風当たりは強くメルケル首相への抗議運動が各地で起こるようになりました。
イスラム教徒も決して強く溶け込もうとしているわけではないため、距離が広がるばかりです。
アーセナルで活躍するトルコ系のメスト・エジルはアシスト王として君臨していますが、試合前にはドイツ国家は絶対に歌わずに心の中でコーランを唱えていると発言をして破門をよびました。
トルコ以外の国々からの移民
イタリアやギリシャも2国間協定により、多くの労働者を受け入れてきました。西ドイツの経済発展に貢献し、彼らが祖国に帰ることなくのこった子孫が暮らしています。
しかし、イタリアやギリシャへは帰国した人も多く、それほどドイツにおいて影響の大きい移民グループとはなっていません。
旧ユーゴスラビアからも多くを受け入れています。これは旧ユーゴの紛争によりセルビアモンテネグロを中心に命からがら逃げてきた人たちが多くいます。
旧ユーゴでは近年ではアフリカ中東を除くと最大の紛争であったため社会に大きな爪痕を残しました。
ドイツは彼らを積極的に受け入れてきました。ドイツはなぜこれほど移民を受け入れてきたのでしょうか?それは第二次世界大戦時にさかのぼります。ヒトラー政権をはじめドイツ国内は荒れた状況であったため国民が海外に脱出しました。
その際に他国に受けいれてもらった経緯から他国の移民を受け入れるようになりました。
問題は見た目や宗教が違っていてもドイツにある程度なじめばよかったのですが、近年はLCC等の普及で祖国に行きやすくなったり、携帯電話等で祖国との接触回数が増えたこと、また、トルコ人街ができてしまったことでドイツから浮いた存在となることがしばしばです。
そのためドイツ人によって学校でいじめがおき、そのうらみからテロをするといった負の連鎖が起きていました。フランスももちろん白人が排他的な部分がありますがドイツは特に、外からの移民に厳しく当たる傾向があります。
それでは選手の詳細を見ましょう。
各選手の詳細
1 マヌエル・ノイアー(ドイツ系)
ノイアーはバイエルンに所属する現代サッカーにおける11人目のフィールドプレイヤーとして知名度をあげました。
もともとは内田篤人が所属するシャルケの出身で、シャルケでの活躍が認められ、バイエルンへ移籍しました。ドイツ代表としても生ゴールキーパーとしてワールドカップやユーロで高い守備力を見せつけています。
ゲルマン民族は体格がよいことから190cmを超えた恵まれた体格を生かして好セーブを連発しています。レーマンやオリバー・カーンなどが同様のカテゴリに所属しています。
21 ジョシュア・キミッヒ(ドイツ系)
若干21歳のキミッヒはドイツに生まれ、ドイツのU-17から常に代表に選ばれ続け、とうとう20歳にしてドイツ代表のセンターバックのレギュラーになりました。バイエルンミュンヘンに移籍し、若手最高峰のセンターバックとなります。
ドイツは若手の選手を積極的に活用し、ゲルマン系民族ルーツの選手がチームを盛り上げてくれます。
17 ジェローム・ボアテング(ガーナ系)
ボアテングはガーナ人の父と、ドイツ人の母のもとに、ドイツで生まれます。フランス系の黒人選手とは異なり、ボアテングは恵まれた環境で育ったのでサッカーエリートといえるでしょう。
ヘルタベルリンで過ごしたあとにバイエルンで活躍しています。ドイツ代表のセンターバックとして強いフィジカルと高いテクニックでドイツの堅守を誇っています。
U-21時代には、メスト エジル(トルコ系)、マルコ マリン(ボスニアヘルツェゴビナ系)とともにドイツの中心選手として活躍しました。このころから移民が中心選手として活躍することも珍しくなくなりました。
ケヴィン=プリンス・ボアテングは実の兄弟です。ワールドカップでガーナ対ドイツの対決が実現し兄弟対決の実現となりました。ケヴィン=プリンス・ボアテングはドイツで生まれたためドイツ代表を目指していましたが、ドイツでは代表に呼ばれなかったためガーナに国籍変更しました。
このように、生まれはドイツやイギリス、フランスでも欧州では代表になれないため、ルーツのある国に国籍を取得し、代表選手になることがあります。
4 ベネディクト・ヘーヴェデス(ノルウェー系)
シャルケ所属のへーヴェデスですが、ノルウェーにルーツをもちます。ノルウェーは移民を生み出す国というより、旧ユーゴスラビアから移民を受け入れています。ノルウェーではありませんが、スウェーデン代表のズラタンイブラヒモビッチはボスニアからの移民です。
そのため、ノルウェー系の選手が海外の代表に入るのは非常に珍しいことです。
3 ヨナス・ヘクター(ドイツ系)
ケルンの左サイドバックとして活躍し、サイドバック人材難にあったドイツにおいてもレギュラーとなりました。
安定したプレーとスタミナでドイツの攻守をさせます。ヘクターは完全にドイツ系であり、それほど民族的な意味では注目するところは少ないです。
14 エムレ・ジャン(トルコ系)
エムレ・ジャンはガストアルバイターとしてトルコから移民してきた世代の3世です。トルコ系の選手では長らくメストエジルが
7 バスティアン・シュヴァインシュタイガー(ドイツ系、一部オランダ)
強いドイツを支えたシュバインシュタイガーですが、現在、マンチェスターユナイテッドで不遇の時間を過ごしています。バイエルンやドイツ代表では輝かしい実績を残し続けました。
シュバインシュタイガーのことを好きなドイツ人はとても多く、シュバイニーの名を叫ぶドイツ人をバーで多く目にしました。
オランダ系が1/4程度はいっていますが、ほとんどオランダ人としての自覚はないようです。
8 メスト・エジル(トルコ系)
エジルはトルコ系3世です。国歌を一切歌わず、批判の的にさらされます。ドイツが勝てないときはエジルが国歌を歌わずチームの輪を乱すからだとすら言われることがあります。
アーセナルでは不動の地位を確立し、中盤のタクトを操縦するエジルはドイツに欠くことはできません。
イスラム教徒であり、トルコへの強い思いがあるため将来はトルコリーグでプレーをしたいとすら語っています。移民でドイツ育ちであってもトルコは連帯意識が強いためドイツ人としての意識が弱い面があります。
18 トニ・クロース(ドイツ系)
レアルマドリードの中盤をルカ・モドリッチとともにささえるクロースです、クロースはドイツ系の選手であり、ドイツよりもスペインに渡り評価されている感じがあります。
ドイツは守備が堅いため全体的にクロースの役割はクローズアップされにくいですが、レアルは攻撃的なため、マケレレのような守備的選手が重宝されます。
ドイツ人はドイツ国内にとどまることが多い中、スペインで成功した数少ない選手です。
11 ユリアン・ドラクスラー(ドイツ系)
ヴォルフスブルクからパリサンジェルマンにうつったドラクスラーもドイツで華々しいキャリアを歩んでいませんが若干23歳にしてフル代表のスタメンとなっています。
端正な顔立ちから多くのドイツ国民から人気です。
13 トーマス・ミュラー(ドイツ系)
ミュラーもドイツ系のバイエルン州出身、バイエルンミュンヘン所属のサッカー選手です。生粋のバイエルン人であり、ドイツ代表においても得点をきめて安定したプレーをしています。
クローゼの後継者として注目されていますが、決定力がとても強い選手ではなく、ドイツにはもっと得点が決めることができるフォワードが必要と批判されている面もあります。
その他ドイツの移民系サッカー選手
ミロスラフ・クローゼ(ポーランド系)
日韓ワールドカップで怪物ロナウドに次ぐ得点をあげ、ワールドカップ歴代最多得点をもつクローゼも移民です。ポーランド系であり、ポーランドルーツに対してクローゼも例外なく強い思いをもっています。
クローゼは謙虚な選手であり、クリーンなプレーをすることから多くの選手からも尊敬されています。
近年ではナポリで得点を量産していました。ドイツにおいてクローゼは21世紀最高のFWであることは間違いないでしょう。
ルーカス・ポドルスキ(ポーランド系)
ドイツの10番を背負っていたポドルスキもポーランド系です。ポーランド語を家庭では使うほどポーランドへの愛があります。移民として批判されていますが、プレーでだまらせてきました。チームワークを乱すことなく中盤を安定させてきました。
シュコドラン・ムスタフィ(アルバニア系)
アルバニア出身の両親のもとに生まれたムスタフィ。ドイツ生まれであり、ドイツではアンダー世代から活躍してきましたが、早くにプレミアリーグにわたり、有名になりました。アルバニアも治安がよくなかったため、移民が多くいました。
サミ・ケディラ(チュニジア系)
ドイツで生まれますが、父親がチュニジア人です。チュニジアはフランス領だったため基本はチュニジアからフランスが多いのですが、珍しくドイツに移民した父親のもとにうまれました。マグレブ諸国からの出自であるドイツ系の選手はなかなかみませんね。
不自然な国歌斉唱
2010年のものですが、ドイツの国家斉唱の様子です。シュバインシュタイガーが誇り高く歌っていますが、ポドルスキ、エジル、ボアテング、ケディラはまったく口を動かさず、同じドイツ代表とは思えません。
彼らはドイツではなくそれぞれのルーツに誇りをもっているため決して国家を歌いません。ポドルスキは歌わない一方、同じポーランド系のクローゼは口を動かしています。こういった点もドイツで認められている点の1つかもしれません。
1990年代には信じられない光景が国家斉唱でひろがっています。一度ご覧になってください。
ドイツ国内の考え方
ドイツは多民族国家となっていますが、サッカーにおいても人種差別は行われ、試合のときに黒人が差別発言をうけ度々問題になります。
あのエジルに対しても政治からの批判もあり、スター選手ですが生きづらいのがドイツとなっています。
ゲルマン魂が強いドイツにおいては、白人の選手は国におけるアイデンティティとなっており、簡単には民族問題を受け入れられないでしょう。
そして、フランスの黒人に比べ、ドイツはイスラム教徒であるトルコ系が多いことが国の複雑さをあらわしています。
ボアテングやエジル、ケディラなしには今のドイツサッカーは成り立たないので今後も民族問題を抱えつつ、強いドイツが続くことでしょう。
他方、ドイツは国籍が取得しにくく、移民は国籍取得に苦労するため2世、3世でないと基本的には代表になれません。
そのためドイツにある程度は溶け込めている選手が多いという事実はあります。
フランスに関してはこちら。