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俺の遺言を聴いてほしい

これは俺の遺言だ。

結婚相手を選ぶことはきっと、家を買うことに似ている。

散文


* * *

恋人を探すことは、賃貸を探すことに似ている。
世の中にはたくさんの賃貸があって、その中から一つだけを選ぶ。
それと同じように、世の中にはたくさんの女の子がいて、その中の一人を彼女に選ぶ。

都会の真ん中にはキラキラしたタワーマンションが建っているけれど、家賃が払えないマンションに住むことはできない。
キラキラした芸能人と付き合うことを夢見ても、結局叶わないように。

迷った末に住む部屋を決めても、隣の芝が青く見えることがあるかもしれない。
可愛い子をゲットした友達が羨ましくなるように。

住んでいるうちに不満が見つかることもある。
収納が狭かったり、台所が臭かったり。
ディスポーザーが欲しくなることもあるかもしれない。

彼女にも不満が見つかるかもしれない。
夜の相性が悪いかもしれないし、実は我儘なところが見つかるかもしれない。

どんなに上を求めても、色んな人を探してみても。


完璧な彼女は存在しない。
完璧な賃貸が存在しないように。



完璧を目指せばキリがないから、今の自分に合ったものを選ぶしかない。


住んでる家が、自分の実力なのだ。


ただ、賃貸には良いところもある。
乗り換えが簡単なところだ。


成長すると共に収入も増えていく。
収入が増えると、もっと良い物件に住むことだってできる。

自分が変われば、選択肢も増える。
選択肢がないならば、選ばずに住める物件に決めればいい。


賃貸が自分の成長に応じて変わってくるように、
自分の成長に応じて、付き合う彼女も変わってくるかもしれない。

彼女がいない僕は、成長するというか、むしろ退化しているということになるが。



* * *


結婚相手を決めることは、家を買うことに似ている。
分不相応な物件を買うことはできないし、賃貸のように簡単に乗り換えることはできない。

居住用の家だ。
多くの人は長い時間をかけて家を選び、ローンを組み、それと同時に支払いの責任を背負い、長く住めそうな家を選ぶ。
それはきっと、結婚を決意する男の気持ちと似ているのだろう。

長く一緒にやっていけそうな人を選ぶ。
家を選ぶ。

色んな条件を考えて、迷うこともあるけれど、最後の決め手はきっと感覚的なものだ。
この人なら。この家なら。

一度決めてしまえば、後はその家と付き合っていくしかない。

長く住んでいるうちに、床に微妙なシミがあるとか、庭がちょっと狭いとか、嫌な部分も見つかるかもしれない。
でも、基本的には対処方法は3つしかない。

1)直していく
2)気にしない
3)我慢する

これも結婚生活に似ていると思う。
惚れ込んでしまえばアバタがエクボに見えるところも。

最高だと思って家を買ったとしても、時には他の人が住んでいる高級マンションが羨ましくなることもあるかもしれない。
上戸彩と結婚したhiroが羨ましくなってしまうように。

それでも、多くの人は今住んでいる家で頑張っていく。
それは妥協かもしれないし、愛着かもしれない。

はたまた、安心感かもしれない。

結婚するということは、居場所を作ることなのだ。



* * *


結婚は就職に似ている。


「私は会社と恋愛をしたい」

ある有名なサラリーマンが言った。名前を金太郎という。

セリフの文脈は忘れてしまったけれど(たしか転職の面接だった気がする)、会社と同じ方向を見て歩み、寄り添い、共に成長していく様子は恋愛に似ているように感じる。

30代の転職経験者は50%を超え、転職が当たり前のような時代に「就職」と「恋愛」を一緒にするのは少し古臭いかもしれない。
それでも、結婚することと就職することは、共通する部分があると思う。


大学の時、必死こいて就活して、たくさんの会社を受けて、いくつかの内定をもらった。
それぞれの会社にいいところがあって、迷いに迷って、最後は条件を並べてみた。

年収、仕事内容、成長性、職場環境、裁量の大きさ...

みたいな項目を並べて、自分が重視する項目に傾斜を掛けて、各企業についてそれぞれの項目に点数をつけてみた。
そうやって色々悩んで、「その時の一番」を選んだはずなのに、実際に働いてみると悪い部分も見つかる。

やりがいもあるけど、不満が出ることだってもちろんある。
もっと年収が高い会社で働けたらいいな、と思うこともある。

でも結局、完璧な会社なんて存在しないんだ。
完璧なパートナーが存在しないように。

自分が選んだ会社の中を少しでもよくできるように、改善していく。
人間関係を良くするために、改善していくのと同じだ。

条件だけ並べると、もっと良い会社はたくさんある。
同じように、条件だけ並べるともっと美しい女はたくさんいるかもしれない。
上戸彩と結婚した男はたしかに羨ましい。
でも、内定をくれた会社と同じように、結婚相手も自分を選んでくれた人だ。

不平不満を言うばかりではなく、ちゃんと向き合って、関係を良くするように努力するのが良いのではなかろうか。


まぁ、常識的に言うと、会社と自分の立場はあくまで「資本家と労働者」であって、その文脈で言うと、会社はできるだけ労働者を搾り取ろうとするのだけれど。

あれ...?
ふと隣に座る、小遣いが月に5万円のおっちゃんを思い出した。

やっぱり結婚と就職、似てるじゃんか。