1月6日、菅義偉官房長官は、午前中の定例会見で、「4項目の当面の対抗措置」を発表した。
①長嶺安政駐韓大使と森本康敬駐釜山総領事の一時帰
②日韓通貨スワップ協議の中断
③日韓次官級経済協議の延期
④釜山総領事館職員による釜山市関連行事への参加見合わせ
実際、9日に長嶺大使と森本総領事が、日本に一時帰国した。
前出の武藤元駐韓大使が続ける。
「実は私も、韓国政府に抗議して『一時帰国』したことがあります。'12年8月10日、当時の李明博大統領が、竹島に上陸した時です。
私の時は領土問題が原因で、韓国政府も当然予期していたことでしょう。だが今回は市民運動家の行動に起因するもので、韓国政府は予期していなかったと思います。日本として、韓国の慰安婦合意見直し論には応じないという意思を示した適切なアクションでした」
今回の「被害者」とも言える森本釜山総領事は何もコメントしていないが、友人である韓国人ジャーナリストの柳在順氏が代弁する。
「森本さんは非常にマジメな性格の外交官で、1980年代の初めに、ソウルの延世大学で韓国語を勉強しました。当時、東京に留学していた優秀な韓国人女性を私が紹介したら、その後二人は結婚。森本さんは日韓関係発展をライフワークにするようになったのです。
昨年5月に、念願の釜山総領事に就任しましたが、釜山では非常に評判がよい。それが慰安婦像の問題で日韓衝突の矢面に立たされて、いまは悲しんでいることでしょう」
そうしている間にも、慰安婦問題は、日本として看過できない方向に向かっている。
1月16日、ソウルから南に40kmほど下った京畿道の道都・水原市にある京畿道議会で、「独島少女像設置募金開幕式」なる式典が開かれる。独島は、竹島の韓国名だ。
この式典の目的はズバリ、竹島にも慰安婦像を設置しようということだ。
この運動の中心人物である冒頭の閔敬善道議に緊急インタビューした。
――なぜ竹島にまで、慰安婦像を設置する必要があるのか。
「人口1300万人と全国最大規模の京畿道は、'14年から毎年1億ウォン(約1000万円)近い予算を投入して、独島と鬱陵島で文化の祭典を開いてきた。また、日本の『竹島の日』に抗議して、日本大使館前で30日間の示威行動も行ってきた。
日本大使館前では、慰安婦問題のデモとも合流した。その延長線上のプロジェクトとして、少女像の設置に独島は外せないと確信したのだ。
韓国政府と国会は、外交を考慮しなければならないため、独島問題で積極的な行動が取れない。そこで、われわれ京畿道議会の議員たちで昨年10月に結成した『独島愛・国土愛の会』の30人が、決起したのだ。まず京畿道から募金運動を始めて、全国に広げていくつもりだ」
――竹島の領土問題と慰安婦問題は無関係なのではないか。
「そんなことはない。日本の過去の侵略の象徴である少女像と、日本の略奪の野心の象徴である独島は、ともに反省しない日本を示すものだ。だから独島に少女像を設置することは、大きな意味がある。
独島に少女像を設置した日には、全韓国国民の共感を得られるばかりか、世界的な話題にもなるだろう。
最近、釜山の日本領事館前に新たに少女像が設置されたことで、日本の蛮行に対する国民的な怒りが再燃しているではないか。同時に、独島に少女像が建てられれば、日本が過去の歴史を反省する契機となるに違いない」