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【神奈川】

生活保護ジャンパー問題 小田原市に苦情900件超

市幹部(左列)と意見交換した生活保護問題対策全国会議(右列)=小田原市で

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 小田原市の担当職員が生活保護受給者を威圧するようなジャンパーを十年前に製作、代々着用した問題で、市民団体の生活保護問題対策全国会議(大阪市)は二十四日、日比谷正人福祉健康部長に再発防止などを求める文書を提出した。市には九百件を超える苦情が寄せられており、市は第三者を交えて問題を検証するほか、ほかの部署を含めた職員研修を強化する方針。またホームページ(HP)の修正をするなど、信頼回復に向けた対応に追われている。 (西岡聖雄)

 弁護士や学者らで構成する対策会議は、「保護なめんな」(ローマ字)などの文言に加え、そろいのジャンパー姿による家庭訪問を疑問視。制服だと近隣に生活保護世帯と知られる可能性があり「受給を知られたくない人は申請しづらい。このため制服を禁じる自治体も多い」と指摘した。

 対策会議は提出後に会見し、構造的な問題の例に市の生活保護のHPを挙げた。問題発覚前、まず受給要件を詳述し、最後に「生活保護とは」という最も重要な項目を載せる構成だった。

 市は問題発覚後、構成を変えたが「生活保護より民法上の扶養義務の方が優先されます。親族から援助を受けることができる場合は、援助を受けてください」と記載。対策会議側は「親族から虐待されている受給者は親族に相談できないので、これを読んだだけで申請をあきらめる」と話している。

 民法の扶養義務との関係について、二〇一三年の生活保護法改正の付帯決議や国の通知は「扶養義務が要保護認定の前提や要件とはならない」と明記。「生活保護制度は憲法二五条が規定した最低限の生活を保障する最後の砦(とりで)」とも記す。市は付帯決議に基づき、生活保護が憲法で定めた権利であることをHPに載せるか、検討していく。

 また、解約しなくても生活保護を受けられる生命保険があるのに「生命保険などの解約返戻金で最低生活が維持可能な場合もある」と記載していた。申請には保険の解約が必要と受け取られかねず、市はこのくだりをHPから削除した。

 問題発覚後、市に寄せられた電話やメール、手紙は二十二日現在、千七百三十三件。市によると、内訳は文言やジャンパーへの批判が九百四十件。文言は不適切だが「不正を許さない気持ちは大事」といった擁護は七百六十七件あった。

 対策会議の元ケースワーカーのメンバーは「仕事量が多い職場のため、精神疾患にかかる割合がほかの部署より高い」と話し、負担軽減策の重要性にも言及した。

 

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