朝鮮通信使の「行列図」、京大博物館で90年ぶり発見
江戸時代に朝鮮王朝が日本に送った外交使節団「朝鮮通信使」が淀城(現在の京都市伏見区淀)を訪れた際の様子を描いた行列図がこのほど約90年ぶりに京都大総合博物館(左京区)で見つかった。江戸中期、淀藩士が書き残し、関係史料とともに子孫が受け継いできたが、昭和初期に京大の研究者に預けたまま所在不明になっていた。長さ約11メートルに及ぶ絵図を手にした持ち主の渡辺辰江さん(83)は「ようやく見つかってほっとした。大行列が色鮮やかに詳しく描かれていて、当時の淀が京と大坂を結ぶ重要な地だったことがよく分かる」と喜んでいる。
行列図は、1748(延享5)年、朝鮮国王から徳川将軍宛に書かれた国書を携えた正使や副使、随行者ら300人以上の通信使一行が淀城下を訪れた様子が描かれている。作者は、接待役を務めた藩士渡辺善右衛門で、接遇の準備や来訪の状況を詳しく記した来聘(へい)記(3冊)など計6点が渡辺家に伝えられてきた。
辰江さんによると、大正時代に京大の歴史学者西田直二郎が研究用に借り出し、それぞれ書き写して写本を作成した。昭和初期に行列図と淀城下到着図の2点を再び京大に貸し出したが、戦後になって問い合わると所在不明との回答だったという。2004年に再度照会したところ、博物館収蔵庫内で到着図が発見され返却されたが、行列図だけが見つからなかった。
今回発見した横田冬彦教授は「昔の手紙などによると、資料を借りた若い研究者がその後転勤した際、引き継ぎや台帳の記録がきちんと行われずに倉庫に眠っていたようだ。淀藩で通信使を迎えた当時の資料がそろって残っているのは意義深い」と話す。
渡辺さんは地元の人々と淀地域の歴史文化を学び、紙芝居などで紹介する活動を続けている。「先祖代々受け継いできた貴重な資料が戻ってきて本当によかった。レプリカを作製して、淀の歴史の豊かさを伝えていくのに使いたい」と話している。
【 2017年01月24日 13時04分 】