トランプ米大統領が就任直後に、オバマ政権が地球温暖化対策として導入した「気候行動計画」を撤廃し、化石燃料の使用を増やすと表明したことを受け、すべての国に温暖化対策を義務付けた「パリ協定」が形骸化しかねないとの懸念が広がっている。
世界第2位の温室効果ガス排出国の米国はパリ協定に基づき、「2025年に05年比26~28%減」という排出削減目標をオバマ政権で決定している。
トランプ氏は大統領選期間中、パリ協定からの離脱に言及していたが、就任後はパリ協定や米国の削減目標に触れた発言はない。しかし、気候行動計画を「有害で不要な政策」と切り捨て、石油や天然ガスの開発に注力する姿勢を示した。削減目標の達成は難しくなるが、未達成でも罰則がないため、パリ協定を無視するという戦略もあり得る。
米国が経済優先で温暖化対策に後ろ向きになれば、他国にも影響が及びかねない。山本公一環境相は24日の記者会見で「非常に危惧を抱いている。日本の考え方が後退しないよう気を付けたい」と危機感を表明した。
一方、温暖化懐疑論者とされる環境保護局長官候補のプルイット氏は、米議会の公聴会では人間活動による温暖化を否定しなかった。国務長官候補のティラーソン氏は「パリ協定のテーブルに席を維持する」と述べ、トランプ氏の姿勢とは一線を画しているようにも見える。
地球環境戦略研究機関の田中聡志統括研究ディレクターは「州レベルでの排出規制や(再生可能エネルギーなどの)脱炭素市場の拡大が進んでいる。温暖化交渉では各国との協調を検討する可能性もある」とみている。【久野華代】