公務員と言うと「安定した人生勝ち組職種」と思っている人が多いのではないだろうか。
実際は少々異なる。職場や部署によっては、膨大な残業があったり、過労死者・自殺者が出るなどブラックな労働環境の職場もある。
自殺率で言えば、自衛官を除く一般の公務員のなかで警察官が一番多い。日本の警察官は労働組合が認められず権利主張をすることが困難なため、ストレスが溜まるせいか自殺者が公務員の中で最も多いのだ。
過去、国会で問題にもなった際は年間平均33人も自殺者がいるということだった。警察官の10万人当たりの自殺者は13人、国民平均の自殺率は10万人あたり24人という統計があるから多いとは言えないかもしれないが、鬱病を患う警察官も多い。「楽で安泰」と言った公務員のイメージとはかけ離れている。自衛官になるともっと多く、自殺率は10万人あたり27人で国民平均より多い。
部活顧問を抱える教員も中々、休みが取れないので近年問題になっている。そうでなくても近年の教員は多忙になって、残業が常態化している。個人情報に関わるデータをパソコンなどで管理しなければならず、昔のように家に持ち帰ることが出来ないため残業が増えている面もある。
「不夜城」と呼ばれる霞ヶ関(中央官庁)に勤める国家公務員も相変わらず多忙だ。安倍政権が時短を呼びかけているが、霞ヶ関の勤務実態は変わらない。国会の質問に対する待機しなければならないという問題もあって、仕事量は膨大になる。昔から深夜1時~2時までの残業時間になることも珍しくない。
地方で酷いのは小さな町役場など。給料も低い上に選挙の時期になると選挙管理委員会だけでは人手が足らないので、選挙とは無関係の部署の職員まで駆り出される。普段から、サービス残業も多い。
公務員の労働待遇についての所管は、労働基準監督署ではなく地方公務員なら人事委員会(又は公平委員会)、国家公務員なら人事院であるが、労基署のようにブラックな問題が起きたからと言って絶大な権力を持って取り締まりをするわけではない。そもそも人事院や人事委員会は求人を出すことも担当しているため、人事部的な役割を果たしている機関であるからだ。
今や日教組や自治労などの公務員労組も往年の力はない。それが待遇の悪化に拍車をかけている(今日日の若者は労働組合の機能を良く知らず『組合員でなくても自治労に相談できるのか?』と言う人もおり、組合に相談の仕方を知らない職員も多い)。
公務員のブラックな部分というのは世間で意外と知られていないが、現職の公務員の人々の中にはそれが嫌で離職する人も多くいるのだ。
職種によっては、国民平均の自殺率を上まわることもあるブラック役場、「役人は休まず、遅刻せず、働かず」と言われたのは、とうの昔の話である。
■角田 裕育(ジャーナリスト)
1978年神戸市生まれ。大阪のコミュニティ紙記者を経て、2001年からフリー。労働問題・教育問題を得手としている。著書に『セブン-イレブンの真実』(日新報道)『教育委員会の真実』など。
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