ミニマルデザイン(シンプルでクリアなデザイン)がトレンドになってからだいぶ時間が経ちました。さて、次のトレンドというべきものはなんでしょうか。

2016年春、デザインの先端を走るアプリやサービスの中から、ミニマルデザインを次のステージに押し上げるものが出現しました。Facebook、Airbnb、Appleはいずれも同じ方向に向かっています。それぞれのプロダクトをよりシンプルに見せる――「コンプレクション・リダクション」という、モバイルデザインの新しいトレンドを反映したものです。
ミニマルデザイン(シンプルでクリアなデザイン)がトレンドになってからだいぶ時間が経ちました。さて、次のトレンドというべきものはなんでしょうか。

2016年春、デザインの先端を走るアプリやサービスの中から、ミニマルデザインを次のステージに押し上げるものが出現しました。Facebook、Airbnb、Appleはいずれも同じ方向に向かっています。それぞれのプロダクトをよりシンプルに見せる――「コンプレクション・リダクション」という、モバイルデザインの新しいトレンドを反映したものです。

シリコンバレーを席巻する新トレンド “Complexion Reduction”

「コンプレクション・リダクション」。聞いたことがあるでしょうか? 聴いたことがない? 無理もありません、これは私が勝手に名付けたものなのですから。

最近私は、フラットデザインやミニマルデザインとは違う方向性を持つ、あるものの出現に気が付いたのです。

これはただ単にミニマルデザインの延長線上にあるものだという人もいるかもしれませんが、私は分けて考えるべきものだと考えており、僭越ながら名前を付けさせていただきました。

シリコンバレーを席巻するこのトレンド「コンプレクション・リダクション」の特徴は次の3つです。

1. より大きく、より太く(見出し)
2. よりシンプルに、より汎用的に(アイコン)
3. より少なく(使用色)

これら3つのトレンドをを採用すると、私たちのよく使うアプリの操作画面が、あたかも一つのブランドによって統一されたかのような様相を呈してくることになったのです。

Instagramの画面刷新でUI新潮流に気づく

2016年5月初旬、Instagramがその画面を一新したときに、私はこのトレンドに初めて気づきました。

どういう変化でしょうか。青と濃いグレイといった色のの大半が使われなくなっており、その代わりに見出しが強調され、下部のメニューとアイコンが簡略化されました。

白黒のUIと主張の強い見出しを採用することで、文章や写真が際立ち、機能が明確になったのです。

このUIは、かねてより私がファンであったMediumの整然としたUIに似ています。

Mediumは2012年の開始当初から白黒の色づかいを採用、デザイン刷新のたびに、よりシンプルな方向に洗練させてきました。
Mediumは当初から、私の言う「コンプレクション・リダクション」を採用し、その先駆者となっていたということです。

衝撃だったAirbnのUI刷新

FacebookがInstagramの新しい外観を公開した後です。私はAirbnbのアプリを開き、そのUIに衝撃を受けました。Airbnbが4月にデザインを刷新して以来、私はこのアプリに触れてはいなかったのですが、ずっとこの画面に慣れ親しんできたような感覚を覚えたのです。

派手なアイコンの変更などを伴うInstagramのUIの刷新にくらべ、Airbnbの新しいUIはメディアの注目度は低かったのですが、こちらも「コンプレクション・リダクション」の作法に則っている部分は多くあります。

モバイルデザインの刷新としては、「大きく目立つ見出し」「不要な画像や色彩の減少」「アイコンのシンプル化」。これにより多くの場面で視認性の向上をもたらしました。
さらに、モノトーンに統一されたUIが文章や画像をより引き立て、明確な機能性を持つようにになったのです。

Apple Musicの「抑制」されたUI

コンプレクション・リダクションのトレンドに魅了され、採用した中で一番最近の例がAppleです。6月の初めにAppleはWWDCにおいて、「過去最大のiOS」と称しiOS 10を発表しました(iOS 8の際も「過去最大の」と言及されていましたから、少なくともそれ以降という話ですね)。

特に私の目を引いたのはApple Musicのデザインリニューアルです。リニューアルにおける重要な部分はUXの向上と追加機能であったのですが、私が最初に気づいたのは「抑制」されたUIです。

Macworldの記者であるCaitlin McGarry氏もこの新しくなった外観について、「全体としてまったく新しい外観で、画像がより大きくなり、大きく目立つフォントと白く清廉な背景によってアルバムジャケットがより引き立つデザイン」と表現していました。

もうお分かりですね? InstagramやAirbnbで採用された方向性とは少々異なりますが(アイコンが塗りつぶされているのはどういうことなのでしょうか?)、キーとなる要素は一緒です。大きく主張する見出しと、白黒の操作画面です。

2016年6月初旬、AppleはWWDCにおいて、「過去最大のiOS」であるiOS 10を発表しました(iOS 8発表の際も「過去最大の」と言及されていましたから、少なくともそれ以降という話ですが)。これが直近で「コンプレクション・リダクション」トレンドに魅了され、採用された最も顕著な事例です。

私は特に、Apple Musicのデザインリニューアルに目をひかれました。リニューアルの眼目はUXの向上と追加機能でしたが、私は最初に「抑制」されたUIに気づきました。

Macworldの記者であるCaitlin McGarry氏の表現を借りれば「全体としてまったく新しい外観で、画像がより大きくなり、大きく目立つフォントと白く清廉な背景によって、アルバムジャケットがより引き立つデザイン」ということになります。

そうです。キーとなる要素は一緒なのです。大きく主張する見出しと、白黒の操作画面です。アイコンが塗りつぶされているなど、InstagramやAirbnbで採用された方向性とは少々異なりますけれども。

よりユーザーにフォーカスした、全体に関わるデザインへ

よく使うアプリの外見が、どんどん似通ってきています。何故かというと、技術とは模倣合戦だからです。これらのデザインリニューアルはどれも概ね好意的な反応ですから、新しいアプリも古いアプリも、CRのトレンドに参加すると予想します。

白黒の操作画面を「個性の欠如」と批判する人もいますが、こういった批判はすぐに沈静化するでしょう。アプリはそれの持つ機能のためにあります。個性のためにあるのではないのです。

これはつまりあなたの持つiPhoneのホーム画面が、あなたを快適な旅へと誘う、色とりどりのモザイクの扉に過ぎなくなるということです。

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あなたがこのモノクロのスタイルを好もうが好むまいが、これは確かな進化の流れなのです。

プロダクトのデザインプロセスは、古くからの不必要な要素を盛り込みがちだったデザインから、よりユーザーにフォーカスした、全体に関わるデザインへと進化を遂げているのです。

古いデザインプロセスでは、UIデザイナーはUXデザイナーや企画担当からワイヤーフレームを渡され「かっこよくして」とだけ指示されている場合が多くありました。デザイナーは何時間も、何日間も、色を足したり引いたりしたことでしょう。ワイヤーフレームという最良の解決策が目の前にずっとあったにも関わらず、です!

近年のより発達したデザインプロセスにおいては、UXデザイナーとUIデザイナーの間の線引きは曖昧になっていて、デザイナーは個別に負う責任(例えば「かっこよくする」のような)が減っており、ユーザーのために最高のプロダクトを作る、という究極の目標に注力することができるのです。

私達がよく使うアプリの外見はどんどん似通ってきています。技術とは模倣合戦を繰り返すものです。いま生じているデザインのリニューアルはいずれも好意的な反応を得られていますから、早晩これまであったアプリも、新しく作られるアプリも、「コンプレクション・リダクション」のトレンドに参加すると予想されます。

白黒の操作画面を「個性の欠如」と批判する人もいますが、こういった批判はすぐに沈静化するでしょう。アプリはそれの持つ機能のためにあります。個性のためにあるのではないのです。

これはつまるところ、あなたのiPhoneのホーム画面を彩るカラフルなモザイクは、あなたを快適な旅へと誘う入り口に過ぎなくなる、ということです。

モノクロのスタイルをあなたが好もうが好むまいが、これは着実に進化の流れなのです。

プロダクトデザインのプロセスは、昔ながらの不必要な要素を盛り込みがちだったデザインから、より使い手にフォーカスした、全体に関わるデザインへと進化しています。

最近の、より発達したデザインプロセスでは、UXデザイナーとUIデザイナーの区別は曖昧になっています。デザイナーは、たとえば「かっこよくしなければ」といった部分に個別の努力を強いられるのでなく、使い手のために最高のプロダクトを作る、という究極の目標に向けて集中して仕事をすることができるのです。

「コンプレクション・リダクション」のための6つのガイドライン

私の言う「コンプレクション・リダクション」の魅力は十分伝わったでしょうか? もし取り入れたい場合、以下のガイドラインをぜひ参考に。

1. 色彩→減らす
色を除きましょう。差し色として1色くらいは残してもいいが、多用はしないようにしてください。他は白黒に統一します。できるだけコンテンツの色が映えるようにしましょう。

2. 見出し→大胆に
見出しをより大きく、より太く、より黒くしましょう。手始めに、現在使っている見出しフォントサイズを数10ピクセル引き上げて、重量感を持たせましょう。

3. アイコン→シンプルに
アイコンをよりシンプルで、より細く、万国共通で理解しやすいものにしましょう。アイコンでも色の使用は禁物です。アイコンの並び順に迷ったら、次の順番で左から順に並べます:ホーム、検索、メイン動作、次の操作、プロフィール

4. ホワイトスペース→たっぷりと
白い領域を2倍、いえ3倍にしましょう。4倍でもいいかもしれません。これに関しては多くても間違いはないです。

5. アプリアイコン→派手に
アプリアイコンをより明るい色にします。あなたがもし色彩を多用したカラフルなデザインがしたくててウズウズしているのなら、アイコンにその情熱を注ぎ込みましょう。ここにあなたの個性を注ぎ込み、ブランドを確立するのです。華々しく目立たせましょう!
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