大規模に陥没したJR博多駅近くの道路=福岡市博多区で2016年11月8日午前9時43分、本社ヘリから須賀川理撮影
福岡市のJR博多駅前で昨年11月に起きた道路陥没事故で、事故前日に掘削中の地下鉄トンネルを支える鋼材にかかる圧力が基準値を超えていたのに、施工業者が市に報告していなかったことが分かった。そのまま工事が進められ、陥没が起きた。原因究明を進める専門家委員会は対応が適切だったか検証する方針。
事故現場の市地下鉄七隈(ななくま)線延伸工事を実施しているのは大成建設を代表とする共同企業体(JV)。市や専門家委によると、JVはトンネルをアーチ状に支える鋼材に上の岩盤からかかる圧力を7カ所のセンサーで計測し、作業員が常時監視する体制になっていた。土木学会の指針に基づき、通常体制▽現場点検などが必要な「注意体制(レベル1)」▽軽微な対策工事が必要な「要注意体制(同2)」▽工事停止を求める「厳重注意体制(同3)」--まで4段階に区分し、レベル1になると市に連絡する契約だった。
事故前日の7日午後から圧力の異常な上昇が始まり、同日午後6時ごろレベル1に達した。8日午前1時ごろにレベル2、同1時半ごろレベル3に達したが、市への報告はなく工事は続けられた。事故後に要求した資料の中で市側が異常な数値を示していたことに気付いたという。
今月21日に開かれた専門家委員会後の記者会見で委員長の西村和夫・首都大学東京副学長は「要因にも関連するが、ここで結論は言えない」と述べたが、専門家委員会はこうした経緯も踏まえて原因を究明する。【吉川雄策】