鋭い眼光と役を離れた際の柔和な笑顔-。脳リンパ腫で死去した俳優の松方弘樹さんは「仁義なき戦い」など東映のやくざ映画に数多く出演し、男性的な役柄を得意とした。一方、バラエティー番組では気さくで明るい一面を見せた。
チンピラを鮮烈に演じた「893愚連隊」(昭和41年)の中島貞夫監督は「台本を読み込む能力が高く、よく体が動いた。“昭和のスター”の生き方を知る最後の世代だと思う」とコメントした。
代表作の映画「仁義なき戦い」で共演した渡瀬恒彦さんは「年齢も近く、東映の撮影所で共に育ってきました。今は言葉が出ません」。北大路欣也さんは「仕事への情熱、夢と冒険、エネルギッシュに前進し続けた」と松方さんをしのび「さよならは言いたくない。また会おう」との言葉を贈った。
「仁義なき戦い」では組長に反乱を起こす幹部役を熱演。菅原文太さん演じる主人公におびえきった本性をさらけ出す場面などで強い印象を残した。
「育ちの良さから表れる甘さと戦後社会に生きる若者の荒々しい野性味を併せ持つ演技が特徴的」と映画評論家の白井佳夫さん。同シリーズでは役どころを変えて何度も出演し、好演を見せた。
平成15年には「OKITE やくざの詩」で初監督を務め、「60歳で監督になるなんて。本当に幸せです」と話していた。
テレビのバラエティー番組「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」(昭和60年、日本テレビ系)などでは、笑い上戸で甲高い声で陽気に話す意外な一面を見せ、人気を集めた。
また、マグロの一本釣りを趣味とし、300キロ超のマグロを釣り上げるなどして、「だからマグロはやめられない」と語り、筋金入りの釣りマニアぶりを見せた。
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