ずいぶんと古い話ですが、その時の上司ととても折り合いの悪い時期がありました。
仕事に関して良く言えば「議論」、実体は「口喧嘩」の毎日。
今、思えば部下である私が変に片意地を張らずに、言うことを聞く振りだけでもしておけば良かったのですが・・・、腹に据えかねることばかりだったので、常に反発していたのです。
その時、スーツの上着には、「辞表」を忍ばせておりました。
ストレス一杯の毎日でしたので、半分くらい会社を辞める覚悟をしていたのです。
そして、どうしても我慢できなくなったら、その「辞表」を叩きつけてやろう、と思っていました。
結果的に「辞表」を出すことはありませんでした。
そして、かなり前に、「早期退職の同意書」を提出し、3月末には退職しますので、今の会社に「辞表」を出すことはないでしょう。
こうやって、社内ルールとしての定年まで過ごせたことは、良かったのか悪かったのか、いろいろと思うところはありますが、ひとつ、とてもつまらない理由で「辞表を出さなくて良かった」とホッとしたことがあります。
それは「そもそも、辞表を出すのは間違いである」ことを知ったときです。
「辞表」とは何か?
「バカヤロー!ふざけたマネをしやがって!辞表を出せ!」
こんなセリフ、世の中のどこかで、現実に発せられていることと思います。
一昔前だったら、
「お前なんか、辞めちまえ!」とか、「クビだ、クビ!明日から会社に来るな!」
との怒声が飛び交っていたことでしょう。
でも、今、これを言ったらコンプライアンス上、大問題となってしまいます。
なので、よっぽどバカな上司でない限り、「辞めろ!」とか「クビだ!」なんてことは言っていないはず。
その代わりに、退職を促す「辞表を出せ!」という言い方が増えているのでは?と思っているのですが・・・(もしかしたら、全然、そんなこと無いかもしれませんけど、ね(笑))
実は、この「辞表を出せ!」という言い方、多くの場合、間違いなのです。
というのも、そもそも辞表とは、いわゆる役職者がその役を辞するときに提出する書類のこと。
公的な組織の役職者や民間会社でも役員クラス、そして、公務員などの公職に就いている人が、その職を辞するときには「辞表」を使用します。
上述の私が上司と折り合いが悪かった時代、ポケットに入っていたのは、まさに「辞表」というタイトルがついた封筒でした。
公務員でもなければ、もちろん、会社の役員でもない私が、大見得を切って叩きつけたとしたら、
「キミってバカ? これ、タイトルが違うよ」
と突っ返されて、大恥をかいていたことと思います。
「辞表」と「退職願」「退職届」の違い
では、一般のサラリーマンが会社を辞めるときに出すのは何でしょうか?
それは、「退職願」か「退職届」です。
ですから、「辞表」と「退職願」「退職届」の違いは、出す人の立場の違い、ということになります。
なお、「退職願」と「退職届」は、自らの意思で退職する場合、つまり、自己都合で退職する際に提出する書類です。
定年退職や契約社員が期間満了で会社を辞めるときは、出す必要はありません。
また、不始末を起こした社員が、懲戒処分で「諭旨免職」になった場合、これには、
「自分から辞めるのなら、懲戒解雇はカンベンしてやる」
と言う意味合いが含まれているケースがとても多いのです。
このときも、出すのは「退職届」となりますね。
「退職願」と「退職届」の違いとは?
では、「退職願」と「退職届」の違いとは一体、何でしょうか?
簡単に書くと、
- 「退職願」は、退職を願い出ることで、後から撤回できるもの
- 「退職届」は、退職を届け出ることで、後から撤回できないもの
となります。
退職願
待遇改善をなど、会社を辞めるぐらいの覚悟で会社にものを申す際は、「退職願」を差し出します。
会社がこれに応じれば、「退職願」は撤回することは可能で、引き続きその会社の社員として仕事を続けられます。
本当に退職するかどうかは、会社の出方次第との意味合いがあるのですね。
進退伺い
余談ですが、これより軽いのは「進退伺い」。
何かをやらかしてしまった後、「どうしたらよいか、決めてください」と判断を委ねるもの。
一般的には、何らかの問題を起こしたけれど、それを不問にする場合、「形式的に反省の気持ちを表す」ために出す、あるいは、出させることが多いようです。
話は、さらに外れますが・・・。
東京都の小池都知事は現在、自民党員ですが、党に対して「進退伺い」を出していますよね。
これは、都知事選挙で党の方針に逆らって立候補したので、通常だったら「除名」なのですが・・・、そこを小池都知事は逆手にとって、
「自民党を自ら引くべきか、あるいは、党として除名するのか、その判断を党に委ねます」
と言っているわけです。
ほんと、お上手ですよね~。
自民党としては困ったもので、どう決定しても、手痛いしっぺ返しがくるのは分かってますから、保留にしています。
退職届
一方、「退職届」は、退職が決定しているときに出すもので、通常は退職に関する事務手続きに必要なごくごく平凡?な書類です。
一方、会社と刺し違える覚悟で「退職届」とともに、会社に物申すということがあるかもしれません。
でも、「退職届」はそのまま受理されて、本当に会社を辞めなければならないですし、辞めた人間の言うことなど、会社がまともに取り上げるわけがありません。
ただの自爆行為になりますので、ご注意を。
おわりに
以上、辞表・退職願・退職届のそれぞれの違いについて記しました。
もし会社を辞めようと考えているなら、そして、喧嘩別れではなく円満退社をしたいのなら、「退職届」や「退職願」をいきなり出すのはやめましょう。
まずは、直属の上司に対して「退職する」旨を口頭で伝えることが穏便に退職する第一歩となりますので。
では、また。