「広島極道は芋かもしれんが、旅の風下に立ったことは一遍もないんで」

 「おんどれらも吐いた唾、飲まんとけよ」

 菅原文太や小林旭、梅宮辰夫ら主役スターの、脳天唐竹割りなせりふがスパークしました。金子信雄ら癖のある脇役が、やり過ぎなほど怪異な演技で笑わせました。東映のやくざ映画「仁義なき戦い」は、1973年に第1部が大ヒット。わずか2年でシリーズ5作が製作されました。

 映画が傑出して新しかったのは、しかし「群像劇」としてでした。深作欣二監督は、画面に所狭しと人物を詰め込み、若いやくざのぎらつく野望を充満させました。なんとしてもはい上がりたい--。演じた無名の若手俳優たちも、目をぎらつかせてスクリーンを占拠し、躍動しました。

 小倉一郎さん(61)もその一人。第4部「頂上作戦」で声のかかった冴えないチンピラ役に、必死にすがりついていました。

 「東映所属の俳優だったのに他社の映画に出たことがばれ、クビ。食いっぱぐれてた」

 東映作品は7年ぶりでした。

 深作監督は、ほんの脇役や、通称・大部屋と呼ばれる端役の俳優にも、優しかったといいます。

 「ドアに立ってるだけの役者に『もうちょっと気味悪く立てや』なんて声をかける。ああ、おれたちも重要なんだって、発奮するわけ」(小倉さん)

 

 (続きは8月3日付け朝刊の別刷り「be」をお読みください。)