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中小企業だからこそWLB~企業子宝率が表わす職場風土~

 しばしば、慢性的に人手不足の中小企業ではWLBに取組むのは難しいといわれる。たしかに、育児休業制度などの導入状況を見ると、中小企業は大企業と比べて遅れている。しかし、中小企業では難しいと結論づけるのは早計だ。実は、中小企業だからこそWLBしやすい面もある。6年前、筆者が中小企業庁から委託を受けて調査した結果、企業規模別にみると、従業員数が20人以下の零細企業において、両立が「しやすい」と回答する割合が最も高く、100-300人で最も低く、それよりも従業員数が多くなると、徐々に高まる「下に凸のカーブ」を描いた(調査結果は、『平成18年版 中小企業白書』に所収)。 また、実質的な子育てと仕事の両立を示す指標として、6年前に筆者は『企業子宝率』を考案した。これは、1人の女性が生涯に産む子どもの数を推計する「合計特殊出生率」の計算方法を参考に、企業の従業員(男女を問わない)が、在職中に持つことが見込まれる子どもの数を算出したものだ。昨年は、福井県の依頼で県内企業を対象に、企業子宝率の調査を行なった。企業子宝率は、中小企業ほど高く、大企業では低い傾向がある。

 さらに、WLBの取組みは、企業の現場に足を運んで職場の雰囲気を体感し、経営者や人事担当者の生の声を聞くことで見えてくる部分は非常に大きい。そのように考えて、筆者は精力的に企業ヒアリングを続けてきた。これまで国内外の先進企業800社のを訪問ヒアリングしてきたが、半数以上は地方の中小企業だ。大企業、中小企業いずれもWLBに関して先進的な取り組みをしている企業としていない企業とに二極化しており、中小企業ほど二極化の傾向が強い。

 中小企業で、従業員がWLBしやすい要因は、5つある。①「能力」を評価し、キャリアロスが少ない、②役職の階層がフラット、③職住近接の職場環境、④職場に子どもを連れてこられる雰囲気、⑤女性活用をめぐる多様性 従来の大企業型のWLBは、育児休業制度を筆頭に、制度を整備していくことに腐心する傾向がある。特に、厚生労働省が主導するWLB策は、制度の整備を進めるとともに、次世代育成支援の行動計画などを策定させた書類を形式的に提出させることで、実践を担保しようという考えのように思える。しかし、書類を提出するだけで実践が担保されるわけではないし、PDCAサイクルをまわしていく手法は、どちらかといえば大企業向きだ。

 むしろ中小企業の実践は、行動計画の枠組みには収まらない柔軟さと、経営トップが皮膚感覚で把握している従業員ニーズに即して、鶴の一声で、組織業務体制をどんどん変革していくダイナミックなものである。とうてい書類の提出だけで把握しきれるものではない。また、大企業では制度に人を合わせようするのに対して、中小企業では人に合わせて制度や取組みを進める。中小企業の方が、社員と経営者の距離が近く、社員一人ひとりにきめ細やかな対応ができる利点がある。先進的な取り組みをしている中小企業の多くは、WLBに取組もうとしたわけではなく、何とかこの人(多くは優秀な女性社員)に就労継続してほしい、そのために会社は何ができるかと考えた結果に過ぎない。

 大企業も事業所単位でみれば、従業員規模は中小企業と大きな違いはない。したがって、中小企業モデルのWLBを大企業の事業所単位に応用していくことも考えられる。大企業の本社から地方の事業所に同一制度を押し付けるという中央集権的な方法ではなく、各事業所長へ大幅に権限委譲すればいい、そして各事業所が知恵を絞って両立しやすい環境をつくることを競い合うように仕向けるべきだ。これからは中小企業の特性を活かしたWLBの取り組みを普及していく必要がある。

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