春闘が事実上スタート 賃上げと働き方改革が焦点

春闘が事実上スタート 賃上げと働き方改革が焦点
経団連と連合のトップらが春闘に向けた考えを説明する「労使フォーラム」が開かれ、ことしの春闘が事実上、スタートしました。労使交渉ではどの程度の水準の賃上げが実現するかに加え、長時間労働の是正などの働き方改革も焦点となる見通しです。
労使フォーラムで、経団連の榊原会長は、「デフレ脱却や経済成長の実現に向けて賃上げの勢いをことしも継続する必要がある」と述べ、4年連続の賃上げを呼びかけました。そのうえで、基本給を引き上げるベースアップだけでなく、ボーナスや手当なども含めた年収ベースの賃上げを検討するよう求めました。

一方、連合の神津会長は「経団連としては年収ベースでの賃上げで対応しようとしているが、それは違うと思う。やはり月例賃金が重要だ」と述べ、ベースアップにこだわって賃上げを求めていく考えを示しました。

春闘では、アメリカのトランプ新政権の発足などで経済の先行きに不確実性が増す中、ベースアップも含めどの程度の水準の賃上げが実現するかが焦点となります。

また、ことしは大手広告会社、電通の社員が過労のため自殺した問題などを受けて、長時間労働の是正につながる賃金や人事制度の見直しなどの働き方改革も労使交渉の焦点となる見通しです。

春闘は、来月以降、各企業の労働組合が経営側に要求を出し、大手企業が相次いで回答を出す3月をヤマ場に交渉が進められます。

中小企業では賃上げの動きも

ことしの春闘でもベースアップを含めた賃上げの水準が焦点になる中、中小企業では人手不足を背景に人材確保のために賃上げをしている傾向が見られます。

日本商工会議所が去年6月に全国の中小企業2973社を対象にした調査では、今年度、賃上げを行ったり、予定したりしている企業は54.9%に上りました。

賃上げの理由について複数回答で尋ねたところ、「業績が改善しているため」と答えた企業は28.6%にとどまった一方、「人材確保・定着やモチベーション向上のため」は78.7%に上りました。

日本商工会議所産業政策第二部長の小林治彦さんは、「中小企業では必ずしも収益が上がっているからではなく、人手不足感から実力以上の賃上げを行っている。人手不足は深刻化しているのでこの傾向は続くだろう」と指摘しています。

2年連続のベア検討

東京・武蔵村山市にある機械加工メーカーも経営が厳しい中、去年に続いて2年連続のベースアップを検討しています。

社員20人余りのこの会社では、大手電子機器メーカー向けに医療機器などの精密部品を製造しています。ここ最近の需要の落ち込みで取引先からの受注が減り、売り上げは去年に比べて2割ほど減っているといいます。さらにアメリカのトランプ政権の誕生で景気の先行きはより不透明になったと感じています。しかし、少子高齢化で人手不足が見込まれる中、人材を確保するためには賃上げが必要だと考えています。大手企業にひけを取らないようベースアップとして去年と同じ水準の2000円ほど基本給を引き上げることを検討しています。

40代の男性社員は、「賃上げはやる気につながるし、社員としてうれしいです。生活面でも楽になるし仕事の努力への評価だと思っています」と話していました。

藤元佳子社長は、「取り巻く経済状況は厳しいが社員が安心して働き、会社を担う人材を育て確保していくために、基本給を上げることは必要です。働き方改革もあり生産性が今以上に求められるが仕事の効率化を図り、売り上げと利益の確保に努めたい」と話していました。

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