5位: ショートショートの神様・星新一の初期の傑作
星新一のショートショート集『ボッコちゃん』に並ぶとされる星新一初期作品とされる『ようこそ地球さん』。
名作といわれる収録作の「処刑」は、人を殺した人間は銀色の玉を持たされ、流刑地としてある星に連れて行かれるという未来の話です。その玉にはスイッチがあり、一回押すとコップ一杯分の水が出てくる仕組み。しかし何回か押すと、爆発するという仕掛けがほどこされているのです。生きていく上で必要不可欠な水を手に入れるため、罪人はスイッチを押しますが、そのたびに爆発。罪人は次第に運命を受け入れていき、スイッチを押すことへの抵抗が薄れていき……
名作といわれる収録作の「処刑」は、人を殺した人間は銀色の玉を持たされ、流刑地としてある星に連れて行かれるという未来の話です。その玉にはスイッチがあり、一回押すとコップ一杯分の水が出てくる仕組み。しかし何回か押すと、爆発するという仕掛けがほどこされているのです。生きていく上で必要不可欠な水を手に入れるため、罪人はスイッチを押しますが、そのたびに爆発。罪人は次第に運命を受け入れていき、スイッチを押すことへの抵抗が薄れていき……
ようこそ地球さん (新潮文庫)
作者 | 星 新一 |
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出版社 | 新潮社 |
出版日 | 1972年06月19日 |
収録作「殉教」では、ある博士が死後世界と対話できる機械を発明します。博士は聴衆を集め、亡き妻を呼び出して対話してみせたあと、聴衆の門前で自殺。しかし機械の中からは、「死後世界は美しく素晴らしい楽園だった」という博士の声がします。聴衆は驚き疑いますが、また別の男が試してみたところ、やはり死後の世界は存在しているようで…
『ようこそ地球』には、そのタイトルに似合わないような「死についての問いかけ」や「生きることの意味」のような物語が多数収録されています。淡々と語られながらも、深く問題提起をする作品が多く見受けられ、星新一特有のブラックユーモアがあふれる作品集になっています。
『ようこそ地球』には、そのタイトルに似合わないような「死についての問いかけ」や「生きることの意味」のような物語が多数収録されています。淡々と語られながらも、深く問題提起をする作品が多く見受けられ、星新一特有のブラックユーモアがあふれる作品集になっています。
4位: 地球によく似た星の刹那的な恋
『ハローサマー、グッドバイ』の舞台は、地球によく似たとある惑星。人類は寒さを恐怖に感じており、戦争をしていました。機械文明としてはまだまだ未熟なこの世界では、機械は貴重なため、猿に似たロリンという動物が重宝されています。夏季休暇、主人公のアリカ・ドローヴは両親と共に、港町パラークシへ訪れ、彼が一目惚れしたブラウンアイズとの再会を果たします。彼女との友好を深めていく一方、戦況は悪化。季節は夏の終わり、粘流の季節が訪れようとしていました。そんな世界の秘密は、ロリンが握っていると明かされていき……
ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)
作者 | マイクル・コーニイ |
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出版社 | 河出書房新社 |
出版日 | 2008年07月04日 |
軽く清々しい少年少女のラブストーリーと思いきや、ラストにかけて続く展開は重く切ない物語です。この物語でキーとなるロリンという謎の動物からは、目を離さないことをおすすめします。
「これは恋愛小説であり、戦争小説であり、SF小説であり、さらにもっとほかの多くでもある」と作者自身が発言している通り、様々な要素を含んだ秀作小説である本作。世界の終わりと青春ラブロマンスが程よく混在しており、普段SF小説を読まない人にも、軽いだけの恋愛小説に飽きた人にもおすすめできる一作です。
「これは恋愛小説であり、戦争小説であり、SF小説であり、さらにもっとほかの多くでもある」と作者自身が発言している通り、様々な要素を含んだ秀作小説である本作。世界の終わりと青春ラブロマンスが程よく混在しており、普段SF小説を読まない人にも、軽いだけの恋愛小説に飽きた人にもおすすめできる一作です。
3位: 一見すれば理想郷、よく見れば地獄
ディストピア小説の先駆け的作品である『すばらしい新世界 』。ディストピアとは、トマス・モアの『ユートピア』の理想郷のような楽園思想の逆のことを言い、反ユートピアの要素を持つ社会のことを意味します。
西暦2049年、「九年戦争」という最終戦争が勃発・終結後、世界は「世界統制官評議会」という組織によって支配されていました。なんと宗教が改変され、イエス・キリストの代わりに自動車王フォードが崇められているなんてことも。その世界の人間は管理しやすいように、あらかじめ決められた階級に見合う選別・培養・教育をされています。教育により、その環境に疑問を持たせない「すばらしい新世界」で、人類は長らく「平和」を享受していたのでした。そんな社会体制になり何百年も経過し、ついに疑問を持つ人間が現れて……
西暦2049年、「九年戦争」という最終戦争が勃発・終結後、世界は「世界統制官評議会」という組織によって支配されていました。なんと宗教が改変され、イエス・キリストの代わりに自動車王フォードが崇められているなんてことも。その世界の人間は管理しやすいように、あらかじめ決められた階級に見合う選別・培養・教育をされています。教育により、その環境に疑問を持たせない「すばらしい新世界」で、人類は長らく「平和」を享受していたのでした。そんな社会体制になり何百年も経過し、ついに疑問を持つ人間が現れて……
すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)
作者 | オルダス ハクスリー |
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出版社 | 光文社 |
出版日 | 2013年06月12日 |
ユートピアの「ような」世界の欺瞞に、皮肉を交えて進むストーリー。徹底的に管理されていた世界を読んでいくことで、読者自身が自分の生き方について考えていくことができるでしょう。「すばらしい新世界」は果たしてあるのでしょうか。
様々な面において、管理社会の恐ろしさ物悲しさを訴えてくれる作品です。
様々な面において、管理社会の恐ろしさ物悲しさを訴えてくれる作品です。
2位: どんなに発達していても、まだ始まったばかりだった
突如地球にやってきた宇宙人オーバーロードは、人類を遥かに凌ぐ科学技術力を有していました。彼らは侵略や戦うためではなく、人類を発展進化させるためにやってきたといいます。しかしそんな宇宙人オーバーロードの上には、オーバーマインドという知的生命体がさらに存在していて……
幼年期の終り (ハヤカワ文庫 SF (341))
作者 | アーサー・C・クラーク |
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出版社 | 早川書房 |
出版日 | 情報なし |
SFの巨匠アーサー・C・クラークの名作の一つに数えられる本作『幼年期の終り』。「第1部・地球とオーバーロードたちと」「第2部・黄金時代」「第3部・最後の世代」の3部構成です。第1部は地球外知的生命体オーバーロードによる宇宙船との接触を描いています。第2部では、第1部より50年後に初めてその生身の姿を人類に見せた時期、第3部は人類の幼年期の終わりの様が描き出されます。
高度に成長したかに見えた人類は未だ「幼年期」であり、そこから上の次元に上昇していくという設定は、哲学的ですらあります。また衝撃的なのは、宇宙人オーバーロードの代表カレルレンの、人間とは似ても似つかない怪物のような姿でしょう。しかしその聡明さは人間よりも高く、慈善的なのです。ぜひ本作で、いろいろな思いを巡らせてみてくださいね。
高度に成長したかに見えた人類は未だ「幼年期」であり、そこから上の次元に上昇していくという設定は、哲学的ですらあります。また衝撃的なのは、宇宙人オーバーロードの代表カレルレンの、人間とは似ても似つかない怪物のような姿でしょう。しかしその聡明さは人間よりも高く、慈善的なのです。ぜひ本作で、いろいろな思いを巡らせてみてくださいね。
1位: 人が管理される未来の恐怖を過去として描く
『すばらしい新世界』と共に、ディストピアという言葉を世界に知らしめた作品『一九八四年』。ジョージ・オーウェルという、イギリス人作家による本作は、ビッグ・ブラザーという独裁者が統治する近未来が舞台です。
この小説での世界は、「オセアニア」「ユーラシア」「イースタシア」という3つの超大国によって分割統治されています。ビッグ・ブラザーへの反抗思想を持つことは犯罪であり、それを取り締まる思考警察なるものが存在します。「オセアニア」の真理省記録局職員ウィンストン・スミスは思考警察に怯えつつも、独裁者ビッグ・ブラザーに反感を抱いていました。そんなとき、革命思想を持つ秘密結社「兄弟同盟」のスパイで真理省党内局高級官僚のオブライエンに、そそのかされて……
この小説での世界は、「オセアニア」「ユーラシア」「イースタシア」という3つの超大国によって分割統治されています。ビッグ・ブラザーへの反抗思想を持つことは犯罪であり、それを取り締まる思考警察なるものが存在します。「オセアニア」の真理省記録局職員ウィンストン・スミスは思考警察に怯えつつも、独裁者ビッグ・ブラザーに反感を抱いていました。そんなとき、革命思想を持つ秘密結社「兄弟同盟」のスパイで真理省党内局高級官僚のオブライエンに、そそのかされて……
一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)
作者 | ジョージ・オーウェル |
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出版社 | 早川書房 |
出版日 | 2009年07月18日 |
無理にビッグ・ブラザーを崇拝させたり、恋愛や結婚というものはいけないものだと教えられたり……。徹底的に管理された監視社会がいかに恐ろしいか教えてくれているようです。本作は冷戦下の米英では大ヒットしたようで、ディストピア小説のバイブル的位置づけの作品となったのです。
ちなみに、作品テーマの一つでもある洗脳。オブライエンとはその洗脳のスペシャリストです。たとえば彼は、2+2は5と考えさせるのです。5にはずがないのに、それを可能にしてしまうのが洗脳という恐ろしさです。
様々な作品のオマージュとして使われることが多く、知っておいて損はない作品といえる本作。ご紹介した『一九八四年』は新訳版であり、読みやすくなっていますので、買うなら新訳版がおすすめです。
ちなみに、作品テーマの一つでもある洗脳。オブライエンとはその洗脳のスペシャリストです。たとえば彼は、2+2は5と考えさせるのです。5にはずがないのに、それを可能にしてしまうのが洗脳という恐ろしさです。
様々な作品のオマージュとして使われることが多く、知っておいて損はない作品といえる本作。ご紹介した『一九八四年』は新訳版であり、読みやすくなっていますので、買うなら新訳版がおすすめです。
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