内閣府は17日、日本経済の見通しや課題についてまとめた報告書「日本経済2016―17」を公表した。デフレ脱却には賃金上昇の継続が必要と指摘し、短時間労働者の増加で総労働供給や労働生産の伸びが緩やかにとどまっていることについては労働供給制約への対応が必要と訴えている。
年末年始のこの時期に毎年公表する報告書は「ミニ経済白書」とも呼ばれる。今年の報告書は、「日本経済の現状とデフレ脱却に向けた動き」と「新たな産業変化への対応」の2章から構成した。
報告書ではデフレ脱却には賃金上昇の継続が必要とした。そのうえで、最低賃金の引き上げはパートタイム労働者の約1割の賃金を直接引き上げるだけでなく、最低賃金より若干多い金額を得ている労働者の賃上げにもつながっていると指摘した。
雇用情勢は改善しているとした。もっとも失業率の低下の理由については、人口減による労働力人口の減少が影響しているとの見方を否定。失業者数の推移から13年以降では就業が進んだことが失業者減につながったと分析した。ただ、週29時間以下の短時間労働者の割合が増えており、より長時間働きたい女性などの働き方を後押しする改革が必要と言及した。
第4次産業革命に関しては「情報サービスは参入障壁が低く、大規模な資本がなくとも開発、再生産が可能であるため、継続的なイノベーションが期待」できるとした。一方、日本が米国やドイツと比べ、企業のイノベーション能力や産学連携、研究開発(R&D)を促す先進的製品の政府調達などで遅れているうえ、労働生産性上昇率の低さや、対名目GDP比でのICT(情報通信技術)投資が米国よりも少ないことを課題として指摘した。
景気について「緩やかな回復基調が続く」と指摘。消費については「16年後半に持ち直しの動きがみられる」と言及した。〔日経QUICKニュース(NQN)〕