●選者:小澤實さん
●ゲスト:中村好文さん(建築家・家具デザイナー)
こたつねやほこりうかべるこさかづき(窮鼠)
中村さんの俳号「窮鼠」
ひたひたに胡麻摺るのみのうつわなり(小澤實)
●兼題:「マスク」または自由
鞄抱き終電がへりマスクして(小澤實)
○一席
マスクして会ひたき人に会ひに行く (大久保文子さん)
選者:冬の厳しい中、会いたい人に会う。マスクに思いが伝わる。
響きの素晴らしさが素晴らしい。上5中7下5あ音で統一されている。
○二席
マスクとり二礼二拍手一礼す(小野豊さん)
選者:神前、敬虔な気持ちでマスクを取る。
○三席
マスクしてどちらとも言へないに丸 (大綱健治さん)
選者:マスクして感覚が鈍る。
どちらか決められない現代の気持ちを表している。
●俳人のことば:渋谷道
炎昼の馬に向いて梳る
梳(くしけず)る
初鰹はるかな沖の縞を着て
●入選の秘訣
俳句の中の時間の流れについて
添削前:手術終へきて緑のマスク外す
添削後:緑いろのマスク外しぬ手術終へ
選 者:リズムを整え、切れを入れる。
時間とかかわりなく、印象的なものを先に出すと強調される。
●「季語の歴史」
季語「マスク」が使われ続けることにより季語が成熟した例
〇大正時代は、風邪をひいてはいけない人がマスクをした。
吉田屋を出てひとりの奴のマスクかな (梅史)
マスクして稽古見て居る役者かな (みの介)
〇現代(マスクして感覚がにぶった)
マスクして振り返るには来過ぎたる(岡本眸)
我々の動作は、まさにこの通りで、マスクのままでは神様に失礼だろうということで、帽子をとるのと同じ考えですね。
ところが、ご神体を運ぶ神官や、神輿をかつぐ人々は、我々とは逆にマスクをするのですね。神様に息を吹掛けては失礼だということなんですね。
前々より、面白いことだとは思ってましたが、この句を機に改めて思い起こしました。