『【「お金出さないと買えない」は悪じゃなくて正常】
わたし小学生みたいな脳しかないから実際はもっと色々複雑だと思うけど、出来る限り単純化して書いてみた。Nさんが個人で無料で誰かに何かをあげたところで市場は潰れないと思うけど、その考え方って誰も得してないよね(得した気になった錯覚だけ 』
しぃたま@育児絵描き系母(@pota141113)さん | Twitter
https://twitter.com/pota141113
…というツイートが回ってきまして、また、多くの方がこの考えに賛同していると聞いて、
どう説明すれば分かり合えるのか、
また、何が原因でこんなにこじれているのか(いや、ほとんどは僕のキャラクターが原因なんだけど)、少し考えてみました。
まず、このイラストが大きく間違っているのは、僕は「別の場所で稼いでいるから、お金いっぱいあるんだー」と言って、絵本を無料で配布などしていないという点。
何度も申し上げますが、絵本『えんとつ町のプペル』は今日も2000円で売られているのです。
子供が『えんとつ町のプペル』を買おうと思ったら、頑張ってお小遣いを貯めなきゃ買えないんです。
『金持ちNさん』たる僕が「お金はもう要らないよ」と言ったのは、紙の絵本という物質ではなくて、データの部分。
事情があって買えない人でも『えんとつ町のプペル』が読めるように"Web上のみ"無料したわけです。
つまり、本屋さんの立ち読みをWeb上でできるようにしたわけです。
その上で、
「お金を出して買いたい人は、本屋さんで本を買って、無料で読みたい人はWeb上で無料で読んでね」
と、「お金を払う・払わない」の選択権をお客さんに委ねたわけです。
これに対して、「お金が回らなくなる!」「クリエイターが食いっぱくれる!」と叫ぶ方が大勢いらっしゃるので、「お金を持ってないチビッ子でも読めるようにする」という(皆さんが言う)綺麗事は一切抜きにして、今から、おもくそビジネス(お金)のお話をしますね。
…ていうか、最初からビジネスの話だけをしていたら、もう少しご理解いただけのかもしれませんね。ごめんなさい。
今回の件はビジネス用語でいうところの『フリーミアム』という戦略。
(by ウィキペディア先生)
絵本の場合だと、Web上で受けとることができる『データとしての絵本』と、本屋で売られている『物質としての絵本』の価値は、実は、イコールではありません。
なぜなら絵本は『読み聞かせ』という、親と子のコミュニケーションツールとしても機能しているから。
「スマホで無料で見ることができるけど、読み聞かせをするとなると、紙の絵本の方が…」
というのが、Webには無く、超アナログな紙の絵本が持っている『高度な機能』なわけです。
Webで無料公開とされているのに、本屋さんで2000円で売られている紙の絵本の付加価値は
『物質である』という部分。
絵本『えんとつ町のプペル』は、ここに料金が発生しているわけです。
そして、「紙の絵本を買いたい」となってもらうには、まずは、とにもかくにも知ってもらわねばなりません。
なのでWeb上で無料にしました。
その方が買ってもらえるから。
その方が『お金が回るから』。
僕は今、36歳なのですが、デビュー当時から応援してくれているファンの方が、子を持つ親になっているんですね。
僕は毎年、数千枚のライブチケットを手売りしていたり、ライブをしたり、オフ会をしたり、個展をしたり、一緒に汗を流して町を作ったりしていて、おそらく(…いや間違いなく!)日本で一番、ファンの方と直に触れ合っていると思うのですが、
そこで、お母さんになった子達の悩みを聞くと、お母さんはとにかく頑張っていて、朝から晩まで本当に忙しくて、自由に使えるお金も、自由に使える時間も、本当に無いんです。
絵本は安くありません。
なので、『絵本を買う』となると、絶対にハズすわけにはいかないので、まずは本屋さんで(若干、店主の目を気にしながら)最後まで立ち読みすることが少なくありません。
ただ、当たりの本に出会うまで、何冊も何冊も、何日も何日も本屋さんに通う時間もありません。
これが、結果的にどうなるかというと、「子供の頃に読んだ絵本を買う」という決断に至ります。
絵本業界は、もう何十年もそのループを繰り返しています。
おかげで今でも本屋さんの絵本コーナーでは、もう何十年も昔に出版された作品(『ぐりとぐら』や『はらぺこあおむし』)が今でも平気で平積みされています。
昔の作品が素晴らしいのはもちろんですが、仕組み上、新陳代謝が起こりにくいのです。
仕組み上、若手の絵本作家さんが、なかなか入っていきにくいのです。
クリエイターが食いっぱくれ続けているのです。
これを突破するには、Web上で無料公開し、時間の余裕のないお母さんに"自宅で立ち読み"してもらい、まずは「買うか・買わないか?」のステージまでもっていかないといけません。
絵本とフリーミアム戦略は、とても相性が良いと僕は考えます。
というか、もはや、その方法でしか、この絵本業界に何十年も続いているループを抜け出せないと考えています。
『フリーミアム』はインターネットが生んだ概念で、インターネットが登場する前は存在しませんでした。
この絵にはインターネットがゴッソリ抜けているのです。
これに対して、堀江貴文さんがTwitterで「アホだな」とバッサリとお斬りになられていたのですが、たしかに、この絵だけを見るとアホだと思ったのですが、ただ、このイラストを描かれた方の他のツイートを見ていると、たしかに今の時代の流れをご存知ない点は多々見られたのですが(『評価経済』という言葉を知らないのは驚いた。)、アホというより、職人気質な方だと感じました。
なにより、誠実な方だと感じました。
それを思ったのが、この方がリツイートされていた、こちらのツイート。↓
『キンコン西野の「自分の本をお金のない人にも見てもらいたいから無料にして払いたい人だけ払う」ってのは別にいいんですよ。西野の問題だし。ただ、「金の奴隷解放宣言」と謳って創作という「労働」を無償にするべきだとも捉えられてしまうことを主張したのが大問題と言っているんですよ(原文ママ)』
このツイートに対して、また別の方から、こういうコメントがありました。↓
『これの何処に「労働」を無償にするべきだとも捉えられるような要素が有るのか。
自分もお金が無ければ回らない仕事は数多く有るが、無償で公開しても問題が無いと判断した作品をできる範囲で公開するというだけで、この人は創作という労働を全て無性にしろとは言っていない。(原文ママ)』
もちろん、僕の言い分は、後に紹介させていただいたツイートの方ですが、前のツイートのように捉える方が今回は本当に多かった。
ずっと、これに対して「なんでなんだろうなぁ」と思っていて、つい先程、スッキリしました。
つまり、僕が『お金の奴隷解放宣言』というブログで書いた、この文章(原文ママ)が原因ですね。
↓
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
これが、
「西野は『労働は無償にすべき!』と言っている!!」
とか、
「クリエイターにお金が回らなくなる!」
という意見が大量に発生する原因となっていたわけですね。
なるほど。
「お金が無い人には見せませーんってナンダ?糞ダセー」の後にある、こちらの文章(原因ママ)が切り取られていたわけですね。
↓
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
あのイラストを描かれた方も、先程のツイート
を書かれた方(1人目の方ね)も、ネットニュースか何かで切り取られたモノを真に受けて、"正義感"から行動を起こされたのだと思います。
部分的に無料化した方がお金が回る場合があります。
部分的に無料化した方がクリエイターが救われる場合があります。
少なくとも今回の『えんとつ町のプペル』はWeb上のみで無料公開したことによって、Amazonや楽天で1位になり、本屋さんでもたくさん買っていただけました。
お金は回りましたし、次回はスタッフさんにお支払いする給料を増やすことが決定しました。
フリーミアム戦略をとるかとらないかは、個々の自由です。
ただ、僕がやらなかったとしても、アメリカや中国(漠然としたイメージで言ってます)といった海外の連中がオラオラやってくるでしょう。
もう、本当に、
「市場が崩壊するー!ルールを壊すなー!」
とか言っている場合じゃなくて、
その時に備えて、作品の強度を上げることに集中して、あと、本当にもう少しだけ、インターネット登場前後で、スマホ登場前後で、お金の価値や流れが若干変化したことを、問屋さんだけでなく、クリエイターさんも学ばれた方がいいと思います。
ここを学ぶことを放棄すると、クリエイターさんはどんどん苦しくなり、どんどん生活が困窮していきます。
あなたの為を思って言っているのではなくて、あなたの人生がジリ貧になると、
日本がジリ貧になると、
僕にとっては損失だから、自分の為に言っています。
絵描きのライバルは絵描きではなくて、可処分時間を取り合っている全てのエンタメだから。
僕の場合だと、まずは絵本業界が盛り上がった方が効率が良いし、まずは日本が盛り上がった方が効率が良い。
なので
「こういう時代になってきたよ」
「そのやり方もあるけど、こういうやり方もあるんだよ」
と、これからも何度も言い続けると思います。
「子供に届けるため」といった綺麗事を抜きで、今回は完全にビジネス目線から書いてみました。
伝わったかなぁ。
『えんとつ町のプペル』を無料で読みたい方はコチラ↓
『えんとつ町のプペル』を買いたい方はコチラ↓