【寄稿】「恐中」と「反日」がもたらした韓国外交の矛盾

 太平洋の向こう側に米国がいなかった朝鮮王朝時代までは、地域の秩序の絶対者である中国に従うしかなかった。20世紀になって日本による植民地支配、民族分断、6・25戦争(朝鮮戦争)を経験し、千辛万苦の末に国を樹立した歴史を、韓米同盟の役割なしに説明することは難しい。21世紀の韓米同盟は、中国、日本、ロシアを相手にする上で韓国の戦略的価値を極大化する「てこ」の役割を果たさねばならない。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時の「北東アジアのバランサー」論は、米国との関係を弱めても中国との関係を強化すれば安保上の利益でバランスが取れるという発想から生まれたものだ。今なお同じように考えている人々が主軸をなす共に民主党は、堅固な韓米同盟がなければ韓国が中国からどれほど大きな苦痛を受けるかということに、特に関心がないようだ。

 中国を必要以上に恐れ、日本を無条件で拒否する韓国人の普遍的な感情は、韓国外交戦略の定石にそぐわない。韓国政府は昨年末、南東部・釜山の日本総領事館前に旧日本軍の慰安婦被害者を象徴する少女像を設置するという市民団体の計画を知りながらも、国民の非難を恐れてこれを制止しなかった。日本が興奮して過敏に反応していると批判はしても、15年12月の慰安婦合意でソウル・日本大使館前の少女像の撤去(または移転)に向け努力すると約束された日本が、自国公館前に新たな少女像を置かれてどう感じるだろうかと指摘する人はいなかった。大衆迎合主義(ポピュリズム)に走る政治家たちは、世論の反日感情だけを信じ、効力もないことをがなり立てるばかりだ。中には、与党と野党が珍しく声を一つにしていると称賛するメディアさえある。安保だけでも韓国、米国、日本の3カ国が一貫して同じ姿勢を取っていれば、平壌と北京は決して今のように行動できないはずだ。

 きちんとした国家戦略もないまま、時流に迎合し、国民感情に便乗して権力を手にしようとする輩(やから)がのさばっている。国の将来が心配だ。

金泰孝(キム・テヒョ)成均館大学教授(政治外交学科)
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