新しい歌舞伎座が開場したのは2013年春だった。今年で5年目となる。
2010年代が「世代交代」をキーワードとなる時代になることは、役者たちの年齢構成からして明らかだった。このタテの変化に加え、「劇界再編」というヨコの変化も始まっている。
まずタテの世代交代では、昨年までに、中村鴈治郎(57歳)、中村雀右衛門(61歳)、中村芝翫(51歳)の襲名が続き、これで50歳以上の役者の襲名はほぼ終わった。いよいよ40代、つまり1970年代生まれの役者たちが、大名跡を襲名する時代に入る。
来年2018年1月に、市川染五郎(44歳)が10代目松本幸四郎を襲名することが発表された。
同時に当代の幸四郎(74歳)が2代目白鸚に、息子の松本金太郎(11歳)が8代目染五郎になるという、父子3代同時襲名となる(http://www.kabuki-bito.jp/news/3724)。
幸四郎家に先かげて、今年の5月には坂東彦三郎家でも父子3代4人が同時襲名する(http://www.kabuki-bito.jp/news/3638)。
8代目坂東彦三郎(73歳)には、長男・5代目亀三郎(40歳)と次男・亀寿(38歳)がいて、5月に、彦三郎が楽善(らくぜん)になり、亀三郎が9代目彦三郎、亀寿が3代目亀蔵、そして亀三郎の3歳の長男が6代目亀三郎になる。
楽膳という名の役者はこれまではいないので初代となるが、三代目彦三郎の俳名だそうだ。
染五郎と同世代の看板役者では、尾上松緑(41歳)はすでに「松緑」となっている。
近年中に襲名が予想されるのが、市川海老蔵(39歳)の團十郎襲名と尾上菊之助(39歳)の菊五郎襲名だ。
尾上菊五郎家は、父子三代同時襲名となる可能性が高い。
報じられているように、天皇家の代替わりが2018年から19年にかけてであれば、團十郎・菊五郎の襲名は、どちらかが「平成最後の襲名」で、どちらかが「新元号最初の襲名」となるのではないだろうか。
今月(17年1月)は、新橋演舞場で、市川右近(53歳)の三代目市川右團次襲名披露興行が行われている。同時に右近の長男タケルが二代目右近を襲名した。
この襲名は「世代交代」というよりも、「劇界再編」として考えたい。
澤瀉屋は市川猿之助の屋号で、その一門もこの屋号で呼ばれる。右近もいままでは澤瀉屋だったが、右團次の屋号が高嶋屋なので、以後は屋号も変わる。
「市川」姓を名乗る役者はもとをたどると、代々の團十郎の門弟だ。それゆえ、團十郎・海老蔵を「市川宗家」と呼ぶ。屋号は成田屋だ。
当代の海老蔵と猿之助の間には師弟関係はないが、初代猿之助は9代目團十郎の門弟だったので、やはり間接的には師弟関係となる。
だが成田屋と澤瀉屋の間には過去にいろいろあった。半世紀以上前の1963年に3代目猿之助(現・猿翁)が襲名する際のことで、成田屋は11代目團十郎の時代である。
松竹の不手際で、宗家である團十郎に詳細を知らせずに襲名披露興行を進めたために、團十郎が怒り、猿之助襲名披露興行に出ないという事態となった。
團十郎はその2年後に急死した。