殺したいほど憎い上司でさえ
あれだけ厳密にタイムマネジメントして
朝四時起きして出社する部長が、
彼が勝ち取ってきた椅子を離れ、取りにくるのだ。一袋298円の菓子を。
高いところまで昇りつめてきた男の疲労と孤独と弱さ。
それを見ると、この男も私と同じ人間で、
私と同じように菓子を食べて育ち、そしてうまくいけば私より先に死ぬんだなあと思える。
そう考えるとすっとして、他に開封されている袋がいろいろあるのに
愛してやろうと思える。
いいよ、アルフォート全部持ってけ。
なんとなく男と書いたけど、
そういえば役職についている女性がおやつ箱をあさる姿を見ることって、あまりない。
「男だてらに」「気張って」ゴリゴリ働いてきた人が多いので
無防備な背中を見せて、菓子を漁ることなんてできるわけないのかもしれない。
やはり女性が組織で上がっていくことは、厳しい国なのだと思う。
まあ、高い菓子は食うんだけどな。
殺したいほど憎くなってきたらコンビニに走り
そして、ルマンド、エリーゼ、バームロールを漁る上司の背中をみて
もうちょっとがんばるかと思いなおす。