2015年12月の韓日慰安婦合意の内容をめぐる評価は分かれるが、これほど敏感な内容の合意に至る過程では、被害者や国民を説得し、理解を求めるという繊細なプロセスが韓国政府に足りなかった点は弁明の余地がない。朴槿恵(パク・クンヘ)大統領、尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官(外相)は合意前後に慰安婦の被害者女性らを訪ねることもなかった。彼らが被害者女性の手を取り、「100%満足はできないが、現実的な側面も理解してほしい」と真剣に協力を求めていたら、論争がこれほど拡大することはなかったはずだ。
では今後どうすべきか。批判、責任追及だけでは問題が解決できない以上、今後の対策づくりも始める必要がある。
まず考えるべき選択肢は、野党が主張するように次期政権が日本に10億円を返還し、慰安婦合意の無効を宣言することだ。大統領選に出馬する文在寅(ムン・ジェイン)、潘基文(パン・ギムン)両有力候補もそうした可能性を示唆している。国家間の約束を覆すことによる外交的圧力は大きいが、国民感情からみて合意履行が到底難しいと判断するならば、それを受け入れるしかない。しかし、「再交渉」は想像ほど容易ではない。「最終的に解決される」と宣言した安倍政権が応じる可能性は極めて低い。日本が「韓国の政権が交代してももう覆されることはないという点をどう保障するのか」と言ってくれば、返す言葉がないのは韓国政府だ。
ならば、日本に圧力をかけ、再び交渉の席に引きずり出すことができる唯一のてこは米国だ。歴代の首相で最も右翼傾向が強い安倍首相が慰安婦合意で謝罪と反省を表明したのは、米国が背中を押したからだ。伝統的に人権問題に関心が高い米民主党政権、特にヒラリー・クリントン元国務長官は慰安婦問題で韓国にかなり友好的だった。慰安婦の英訳を「comfort women」から「enforced sex slave(強制された性的奴隷)」に変更し、日本の犯罪行為を強調したのもクリントン氏だった。