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【東京】

「難民問題 何ができるか」 ベルリン映画祭最高賞の伊監督、立教大で訴え

シンポジウムで話すジャンフランコ・ロージ監督と難民問題に取り組む学生ら=豊島区の立教大で

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 母国イタリア最南端の孤島で難民問題を撮り、昨年のベルリン国際映画祭で最高賞に輝いた「海は燃えている」のジャンフランコ・ロージ監督(52)が来日し、20日夜に豊島区の立教大で開かれたシンポジウムに参加した。「命懸けで海を渡る難民の過酷な人生と、到着先の島の人々の生活は互いに交わることがなく、分断されている。それは世界の現状の縮図だ」と訴えた。

  (辻渕智之)

 作品は、アフリカや中東から船でたどり着く難民の姿と島の日常を並行的に描くドキュメンタリー。シンポに集まった約二百人の学生らは試写を見た後、監督に感想や疑問をぶつけた。

 日本で難民と交流する東大大学院一年の渡部清花(わたなべさやか)さん(25)は「東京に暮らす難民の人たちも、日本人や日本人コミュニティーと触れ合う接点がない。生まれた国や置かれた状況は違っても、交わる接点ができたらうれしい」と話した。

 大学で難民の存在を伝える活動をする立教大三年の川口航(わたる)さん(20)は「映画で難民よりも島民を描く時間の方が長いのはなぜ」と質問。監督は「主人公である島の少年は、私たちの世界のメタファー(隠喩)だから。例えば大人になることへの少年の不安感は、海を越えてやってくる未知なるもの(=難民)に対する、私たちの世界の不安と重なり合う。少年を通して問題を表現した」と答えた。

 監督は学生らに向け、「難民という現象は世界中で起きている緊急の問題。この悲劇に対し、自分はどんな位置に立っているのか、何ができるか考えて。多くの国がより責任感をもって彼らを受け入れられるように」と呼びかけた。

 「海は−」は二月十一日から渋谷のBunkamuraル・シネマで上映される。

 

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