就任演説をするトランプ新大統領=AP(右)と、衆院本会議で施政方針演説をする安倍晋三首相=国会内で2017年1月20日、川田雅浩撮影
日米両政府は、安倍晋三首相とトランプ新大統領による初の首脳会談を2月前半に行う調整に入った。複数の日米外交筋が20日、明らかにした。日本側は、早期の会談実施で米国のアジア太平洋地域への関与を促し、米国中心の地域バランスを維持できるよう主導したい考え。トランプ氏と閣僚候補の発言が食い違うなど新政権のアジア政策はいまだ不明確で、「全体像が見えない」(外務省幹部)との懸念があるためだ。
首相は20日の施政方針演説で「日米同盟こそが我が国の外交・安全保障政策の基軸。これは不変の原則だ」と強調。「トランプ新大統領と同盟の絆をさらに強化する」と述べ、首脳同士の信頼関係構築に意欲を見せた。岸田文雄外相も外交演説で外交の三本柱の最初に日米同盟強化を掲げた。
首相は首脳会談で、価値観を共有する日米同盟の重要性について確認する考えだ。政府関係者は「日米同盟の意義の大きさについて早く戦略を共有したい」と語る。首相は今月中旬の東南アジア・豪州歴訪で対米連携を各国首脳と確認。今月に入って河井克行首相補佐官や外務省幹部を米国に派遣し、トランプ氏周辺と認識をすり合わせてきた。
首相はトランプ氏と昨年11月の大統領選直後にニューヨークで会談。政府内では当初、トランプ氏の政権運営について「いずれは現実路線を取るだろう」との見方が多かったが、楽観論は今では影を潜めている。
トランプ氏は日米が主導した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱する意向を表明し、自由貿易の後退は確実だ。政権発足直前の会見では対日貿易赤字への不満を示すなど、経済分野で両国の不協和音が生じる可能性が高まっている。外交・安保分野でも、大統領選中に日本による米軍駐留経費の負担増を求めたほか、米国のアジア太平洋地域への関与が低下するとの見方も出ている。
政府は当初、今月下旬の会談をトランプ氏側に打診したが、政権発足の準備などでトランプ氏側の受け入れ態勢が整わないことから、2月第1週か第2週の週末で再調整している。【影山哲也】