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この日から「米国第一」のみがビジョンになる――。 就任演説でのこんな…
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この日から「米国第一」のみがビジョンになる――。
就任演説でのこんな宣言とともに、米国でトランプ政権が発足した。
おおむねツイッターなどを通じて発せられてきた内容であり、想定の範囲内だった。そう冷静に受け止められたようだ。
しかし、世界最強の超大国のトップに就任後、最初のメッセージである。「貿易、税金、移民、外交問題に関するすべての決定は、米国の労働者や米国民の利益になるものにする」「防御が大いなる繁栄と強さをもたらす」。自国優先と内向き志向の言葉の数々に、改めて驚きと懸念を禁じ得ない。
通商分野では早速、転換を打ち出した。日米など12カ国で合意済みの環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱し、メキシコやカナダとの北米自由貿易協定(NAFTA)では再交渉を求めるとホワイトハウスのホームページで公表した。
世界貿易機関(WTO)を舞台にした自由化論議が暗礁に乗り上げるなか、取り組みを再起動する役割が期待されたTPPの発効は、完全に見通せなくなった。NAFTAの見直しも、トランプ氏が標的とするメキシコに動揺が広がれば、日系を含む自動車メーカーなど立地産業への悪影響が予想される。
トランプ氏は「すべての国々が、自己の国益を第一に考える権利がある」と強調する。
その通りだろう。しかし、それぞれが目先の利益を追って対立するのではなく、協調しつつ人やモノ、カネの行き来を自由にしていけば、経済が発展して得られる富は大きくなる。第2次大戦後、当の米国が主導して築いてきた様々なルールを通じ、そのことを追求してきたのではなかったのか。
貿易や為替をめぐる著しい不均衡は、それ自体が持続的な成長への妨げになる。修正することは必要だが、その作業は協調を土台とした冷静な交渉を通じて進めるべきだ。
一方的に要求をぶつけても何の解決にもならず、貿易戦争のような不毛な対立を招くだけだろう。ましてや米国は圧倒的な経済大国である。力ずくで他国をねじ伏せるような姿勢をとれば、その弊害は計り知れない。
自由な市場が米国に投資を呼び込み、雇用を生んできた。活力の一翼を担ってきたのは移民だ。開かれた国であることが米国の魅力であり、強さである。
トランプ氏はそのことに早く思いを致してほしい。日本を含む各国も、粘り強く米国に説いていく必要がある。
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