昨日、
「有名作品を無料公開すると、無名な作品のクリエイターや、方々にシワ寄せがくる!」
といったような批判が、
情報自体をお客さんに無料公開して、別の場所(CMやグッズ等)でマネタイズするビジネスモデルのTVアニメを主戦場とする声優の「明坂聡美さん」とそのファンの方から、無名の有料アプリを駆逐した超有名無料アプリの『Twitter』を使って届いてきたのだけれど、
そのあたりの謎は、今後、彼女がCD(有料)を出して、その曲をTV(無料)でフル尺で歌った時に、また詳しく話を聞くとして、
明坂聡美さんをはじめ、多くの人が誤解をしているのかなぁと思った点について少し。
ここを絶対に押さえておかないといけないのだけれど、『えんとつ町のプペル』は″情報は無料だけれど、物質は有料"という点。
今回、僕がやったのは、「お金を払って読みたい人は有料の本を買って、無料で読みたい人は無料のインターネットで読めるモノにする」というアプローチ。
ここが綺麗サッパリ抜けてしまっている方が少なくない。
本屋さんでは今日も2000円で売られているのだ。
Amazonでももちろん2000円で。
【Amazon】
ここを押さえていただくと、「無料公開するんだったら、図書館に寄贈しろ!」という言い分の筋の悪さが見えてくると思う。
僕が無料にしたのは情報としての絵本であって、物質としての絵本ではないので。
有料のモノを寄贈するかどうかは、そんなことはコッチが、コッチのタイミングで決めるし、そして、そんなことは僕一人の判断で易々と決められることではありません。
それこそ、有料の絵本を売って生活を立てている人(本屋さんやネットショップの人達)がいるから。
僕は友達に本屋さんを経営している男がいるので、本に関して動く時は、まず、その男の顔が浮かんでくる。
なるべく本屋さんに足を運んでもらいたいな、と思ってしまう。
一生懸命お小遣いを貯めて本を買う経験を子供にさせてあげたいと思う。
明坂さんは
「少ないお金を一生懸命貯めて買うから、お金の大切さや物の価値を理解するのに『じゃあタダであげよう』なんて言っていたらその感覚がなくなってしまうよ。」
とも指摘されていたけれど、本屋さんで売っている『えんとつ町のプペル』は相変わらず2000円なんです。
僕がやったのは、「キミ、絵本を買えないの? じゃあ、僕が(物質としての)本を無料でプレゼントしてあげるよ」ということじゃないの。
「情報としての絵本のお金はもう要らないよ」ということ。
子供の教育のことを考えてもね、
その方が、本屋さんに足を運ぶ子供が増えるのよ。
その方が、キチンと値段が付いている本に触れ、物の価値を理解する機会が増えるのよ。
情報としての絵本を無料公開してみた。
『恩送り』を根づかせる意味でも、『マーケティング』の面でも、その方が得策だと思ったので。
無料公開することによって、より多くの人に届くし、買わない人も増えるだろうけれど、買ってくれる人も増えると思ったので。
そして、計上されるのは、買ってくれる人の数だ。クリエイターの生活を支えるのは、買ってくれる人の数だ。
知られないと買われない。
今回、絵本の情報を無料公開したことによって、Amazonや楽天の書籍総合ランキングが1位になり、本屋さんでもたくさん買っていただいたそうだ。
「無料で読んでみたら、手元に置いておきたくなった」と言って買ってくれた人もいたし、
「無料で見せてくれて、ありがとう」というお礼で買ってくれた人もいた。
これが全てだよ。
当初から掲げている『えんとつ町のプペルを100万部売る!』という目標は、今も捨てていない。
ただ、無料で見たい人は、もう、お金なんて要らないからインターネットで無料で見ればいい、と思っている。
全てにお金を絡めるのではなくて、お金を絡めるか否かは、消費者が決める。
お金の奴隷解放宣言ね。
ここをゴチャ混ぜにして語る人が、あまりにも多い。
いや、僕の説明が下手だったのかな?
それにしても、「クリエイターの不当労働」まで絡めてくる輩まで現れた。
いやいや、インターネット上で無料公開した方が本が売れる(結果的に売れた)んだったら、むしろ逆じゃん。
クリエイターさんに入る収入は増えるじゃん。
本をインターネット上で無料公開するケースがこれまでにあまり無かったから(いや、『ブラックジャックによろしく』なんかは、とっくの昔から無料公開なんだけど…)、すんなりと頭に入ってきにくいのかもしれないけれど、冒頭でお伝えしたとおり、音楽ビジネスなんかは、今回のモデルそのまんま。
そうだね。
音楽を例にすると分かりやすいかも。
新曲CDが出たら、テレビで歌う。
番組の放送尺・視聴率もろもろの関係で、曲の1番しか歌えないケースがほとんどだけれど、アーティストサイドは、なるべくフル尺で歌いたいと願っている。
視聴者はそのタイミングではお金を払っていない。
その曲を″手元に置いておきたい″と思ったタイミングで、レコード屋に行き、CDを買う。または、ネットで購入する。
またはライブに行く。
ネットで無料で聴けるにも関わらず、応援しているアーティストの活動を支援する意味でCDを買うファンもいる。
「ありがとう」という気持ちでCDを買うファンもいる。
音楽はすでに、「お金を払って買って聴きたい人はお金を払ってCDを買って、無料で聴きたい人はネットで無料で聴く」というモデルが完成している。
YouTubeの公式チャンネルで、曲のフル尺を公開しているアーティストも少なくない。
遅かれ早かれ、すべての情報は無料化されていく。
人は体験にお金を払い、そしてグッズ(物質)にお金を払うようになる。
その辺りのことは、Facebookに投稿した記事をまとめた、こちらの本に全部書いてます。
【Amazon】
無料で読みたい人は僕のFacebookの記事を遡って読んでいただいて、
有料で読みたい人は本屋さんに足を運んでみてください。
そして、本屋さんには、素晴らしい作家さんの本がたくさん並んでいます。
おもわぬ出会いをしてみてください。
話をまとめます。
クリエイターさんは、「情報を無料にするな!」と叫ぶことに時間を割くのではなく、その時間を使って、情報が無料化される時代を読んで、高品質の作品を作り出すべきだと僕は思う。
自分の作品作りに時間を使うことが、自分や家族やスタッフを守ってくれる最善の策だと思う。
情報が無料化されればされるほど、作品の強度はこれまで以上に求められる。
最後に。
声優の明坂聡美さんへ。
吊し上げるような形になってしまってごめんなさい。
あなたが、あなたの周りのクリエイターさんのことをとても大切に想っていることは、痛いほど分かります。
優しい人だということも分かります。
ただ、この情報の無料化の波は、あなたには止められない。
もちろん僕にも、地球上の全クリエイターにも止めることはできない。
あなたの身の回りにあるモノは、そのほとんどが情報の無料化による贈り物だ。
テレビで見て、買った化粧品もあるだろう。
YouTubeで聴いて、買ったCDもあるだろう。
当たり前じゃなかったんだよ。
テレビもインターネットも何もかも。
その都度都度で、今回のあなたのような人から「テレビで無料で見せちゃうと、映画館に人が来なくなる!演芸場に人が来なくなる!」という声は上がったんだよ。
そして、その時代の流れを受け入れて、自分の価値を別に見いだした人達が前に進み、
反対の声を上げることに精を出した人が遅れをとった。
ここに抗っていると、ここに噛みついていると、あなたの首が絞まることになる。
果ては、あなたが守りたい人が守れなくなってしまう。
あなたを無視することもできたんだけれど、
あなたがクラウドファンディングで支援してくださったことを知っているので、今回、長々と書かせていただきました。
オヤジの戯言だと思って、頭の片隅にでも置いておいてください。
あなたの活動が上手くいくことを願っています。
頑張ってね。
僕も頑張ります。
そして、ごめんなさい。
※今回、『えんとつ町のプペル』の無料公開で入ってきた広告収入はSpotlightさんの許可をいただき、被災地の子供の学びを支援するNPO団体に全額支援することになりました。
『えんとつ町のプペル』を無料で読みたい方はコチラ↓
『えんとつ町のプペル』を買って読みたい方は
コチラ↓