1月21日
ザ・コンサルタント
昼は真面目に働く会計士、夜は殺し屋。うん、男の子なら大好きな設定ですね!!それを口が半開きのせいで、見た目頭よさそうに見えないケツアゴマッチョ(けなしてません、むしろ愛です)、ベンアフことベン・アフレックがスマートに演じる!・・・のかどうなのか。
いいですよね裏の顔を持つ男。かつてそんな役をベンアフはデアデビルやバットマンとして演じていましたが、今回はアメコミではございません。
とにかく、なぜ彼は頭もいいし金ももってるのに、裏稼業に精を出すのかってのが最大の見所なんですかね。今回一般試写会にて鑑賞してきました。
作品情報
あらすじ
田舎町のしがない会計コンサルタント、クリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)に舞い込んだ、大企業からの財務調査依頼。彼は重大な不正を見つけるが、なぜか以来は一方的に打ち切られる。その日から、何者かに命を狙われるウルフ。
実は彼は、麻薬カルテル、武器商人、殺し屋、マネーロンダリングの達人など、世界でもっとも危険な顧客を抱える“裏社会の掃除屋”でもあった。数字に関して天才的頭脳を持ち、完璧な闇の計算術で悪人たちの裏帳簿を仕切る一方、命中率100%の狙撃の腕と暗殺術を身につけた彼は決して彼らの餌食になることはない。
アメリカ政府も彼の存在に目をつけ、身元を洗うが、名前は偽名、本籍・私生活も不明すべてが謎につつまれたウルフの正体をつかめない。
そして彼の周りで大量に挙がる死体の山――大企業の不正を暴き、マフィアと違法な取引を重ね、国に追われてまで危険な仕事に手を出す、この男の真の目的とは?(HPより抜粋)
監督
監督はギャビン・オコナー。
今作で監督作は8本目と割と多い方だと思うのですがほとんど未鑑賞です。しかも一昨年話題になった「ウォーリアー」を先日見て彼を知ったくらい。これがまた良作で!もっと早く見ておけばよかったと毎度ながら後悔。
こういう男の映画を撮る人なのかなぁ?と過去の作品を調べてみると、意外とデビュー作は恋愛映画ということに驚き。他にもカートラッセルが主演の「ミラクル」では、アイスホッケーアメリカ代表がオリンピックで金メダルを取るまでの軌跡を作ったりしてるけど、後のほとんどは家族色の強い作品を作っているようです。
警察一家に生まれた男が、捜査を進めるうちに家族の絆を揺るがす真相にぶち当たり、選択を迫られる犯罪ドラマ「プライド&グローリー」や、愛する家族を守るため銃をとり立ち向かった女性をナタリーポートマンが演じた西部劇「ジェーン」が去年公開されました。
そして、対照的な人生を歩んできた兄弟が、お互いに宿命を背負い挑んだ総合格闘技で戦う悲痛な運命を描いた「ウォーリアー」では、負けるわけにはいかない兄と勝ち続けなければいけない弟、元の家族に戻りたい父それぞれに共感し、そのもの悲しさを感じながら、プロさながらのファイトを見せたトムハーディとジョエルエドガートンのぶつかり合いに心躍らせ、クライマックスは涙を流してしまうほど熱く痛く感動しました。
今後は、新聞社の社長とその運転手が、改造車と格闘術で悪を倒す「グリーンホーネット」を前回のコメディ路線から一転、シリアスなストーリーとして監督が手掛けるとのこと。これまた期待です。
キャスト
主演のクリスチャン・ウルフを演じるのはベン・アフレック。
去年は「バットマンVSスーパーマン」に出演し、新しいブルースウェイン像を見せてくれたベンアフ。今後もジャスティスリーグや、バットマンなどDC専属俳優として続くことを考えると、一時期の落ちっぷりが嘘のような人気ぶり。その分引き締まった体をキープするのも大変そうだなぁと。
そして彼にとってもっと嬉しいことは弟のケイシーアフレックがもしかしたらオスカーを獲るんじゃんかろうか、ということ。「マンチェスター・バイ・ザ・シー」での好演が評価され、軒並み賞レースでノミネートされているので、これ獲ったら兄貴はさぞ喜ぶことでしょう。
しかも今年のベンアフはこれだけじゃない!彼が監督と主演をした、禁酒法時代のボストンを舞台とした(地元を愛してますねぇ)、一人のギャングの激動の人生を描いたドラマ「夜に生きる」が5月に公開予定と、演者として監督として、そして兄として今年は何度も彼の名前を聞く年になりそうです。
彼についてはこちらをどうぞ。
財務調査の依頼をした会社の経理担当デイナを演じるのはアナ・ケンドリック。
あのマッドマックスフューリーロードを抑えて全米1位を記録した人気青春コメディの続編「ピッチ・パーフェクト2」が代表作となった彼女。
彼女の特徴は美貌とグラマラスなバディはもちろんのこと、ブロードウェイミュージカルで鍛えられた歌声にあります。アカペラで1位を目指す青春コメディ「ピッチパーフェクト」でのパフォーマンスは、Youtubeで世界中で再生されたり、彼女たちが歌う楽曲が大ヒットと話題になるほど。おとぎ話のその後を描いたディズニー映画「イントゥ・ザ・ウッズ」でもメリルストリープやエミリーブラントに決して劣らない歌唱力で魅了してくれます。
もちろん演技も素晴らしく、解雇宣告人が社会人1年生の女性とキャリウーマンと出会うことで、身軽で気ままだった人生に疑問を感じ見つめなおしていくヒューマンドラマ「マイレージ・マイライフ」で典型的現代っ子の女性社員を演じたことがが評価され数々の賞でノミネートされています。
他にもウルフの正体を掴もうとする財務省の役人レイモンド・キング役を、アカデミー賞大本命「ラ・ラ・ランド」の日本公開が控えるJ・K・シモンズ、殺し屋ブラクストン役にNetflixドラマ「デアデビル」でパニッシャーで人気となったジョン・バーンサル、ラマー・ブラック役にジョン・リスゴー、財務省の女性アナリスト・メリーデス・メディナ役をシンシア・アダイ=ロビンソンが演じます。
なぜ彼は天才的頭脳なのか、なぜ無敵の暗殺術を身に着けたのか、なぜ裏社会を目の敵にするのか、なぜ法を犯すのか、巨額の報酬はどこへ?とにかく謎だらけな男の真の目的は何なのか???
ここから鑑賞後の感想です!!!
感想
ウルフのキャラが面白いのに、会話劇7:アクション3の比率が残念。
以下、核心に触れずネタバレします。
まずは率直な感想。
基本的には、回想シーンと現在を行き来しながら、財務省の分析官がウルフの存在を突き止めていくミステリーな展開と、不正調査を途中で中止されたことに納得のいかないウルフが、真相追及を経て黒幕を暴く、というお話なのですが、どうにも会話が多く、中だるみしてしまう部分が多かったように思えます。
ウルフの腕前を披露するための射撃シーン(銃声デカすぎ)や、メリーデスの過去の罪や経歴などを話す序盤なんかは正直端折っても良かったのかな、とも感じました。
確かにウルフの過去が少しづつ明かされていくことは大事だし、クライマックスに向けての伏線の回収に驚きを見せるうえで、各人物側のエピソードも必要なんだけど、もっとうまく簡潔にできたような気がします。編集なのか脚本なのか。とにかく盛り上がりに欠けたのが残念な要因です。
個人的にはやはり夜は(昼間もガンガン殺してたけどw)殺し屋なのだから、アクションモリモリにしてほしかったんですよ。黒幕までたどり着いてガンガンアクションするんですけど、それ以上に苦笑レベルのサプライズが上回っちゃって、どんなアクションしたか思い出せないw
飯で例えるなら、アクションていうおかずが少なくて、ごはんが余っちゃう、みたいな。
あ~やっぱ下手だなぁ例えんの。 ユーキャンに例え上手講座とかねえかな。
ウルフのキャラは最高!
ただその弛んだ意識を引き締めたのはウルフの萌えすぎる行動でしたw
実はウルフはアスペルガー症候群という、普通の人よりコミュニケーション能力が劣る病気を抱えていました。幼少期から父の教えを受け、人並みの生活は遅れるほど克服はしたものの、少々難ありといった行動が、体格の大きさというギャップもあり非常にかわいらしく映っていました。
というかただのシャイなおじさんにしか見えませんでしたけどもww
監査するため出勤すると、過去15年分の資料を徹夜で用意してくれたデイナが会議室で寝てしまっていました。普通なら声をかけて肩を揺らして起こすんだろうけど、ウルフの場合、まず大きくドアを閉める!ガラス窓を叩く!そして机をたたく!咳払いをする!まだ起きない!!最後の奥の手!ん~っ!!椅子を揺らす!!
触れても怒らんけぇ・・・。
ようやく起きたデイナはウルフを手伝うよう命令を受けたが、ウルフはかたくなに拒否!
手伝わせてあげぇや・・・。
そして不正を暴いちゃったもんだから、ウルフとデイナは殺し屋であるブラクストン一味から狙われます。何とかデイナを助け、ホテルでいい感じになるんだけど、ウルフはまず座らない。ひたすら腕を組み立っているか歩き回る。
落ちつけぇや・・・。
二人は数学が好きということと、いわゆる日陰の道を歩いてきたという共通点があり、過去バナをすることで距離が縮まっていきます。
デイナがすっとウルフに近寄り、キース!キース!キース!な雰囲気になるのに、ウルフは思い出したかのように真相に近づく術を見つけてしまいます。
女に恥をかかせるなや・・・。
他にも、自分の顧客である老夫婦が殺し屋に狙われる場面でも、間一髪で仕留めるのはいいが、軽く手を振って帰ってしまう。
ワケを説明したれや・・・。
といたように素っ気ない、その気ない、笑わない。でもどこかかわいく見えてしまう,萌えウルフを堪能していただけたらと思います。
そもそも、殺し屋の顔と会計士の顔のオンオフをきちんと分けられるベンアフの演技のさじ加減に拍手ですよね。
作中に出てきたもの
ソロモン・グランディ
ウルフが正気を保つために、ある歌を歌うのですが、イギリスの古い童謡で「マザーグース」の中の一つ、ソロモン・グランディという歌を歌っています。これは、人生の誕生から死ぬまでを一週間=7曜日で例えた歌だそうです。ウルフはこの歌をリズムも音程もテンポを声量も一定にして歌い、整えていました。
ちなみにどんな内容かというと、
月曜に生まれ、火曜日に洗礼を受け、水曜日に結婚し、木曜日に病気になり、金曜日にそれが悪化、土曜日に死に、日曜日に葬儀をする、といった内容です。
人の一生など、一週間で例えられるほど短くはかないものと皮肉も混じった意味なんだとか。ソロモングランディという名前も、ソロモンは賢いという意味で、グランディは庶民的な意味を持つ言葉だそう。
作中での深い意味はないとは思いますが、韻の踏みやすい歌ということでウルフも整えやすかったのだと思います。
ポロック
ウルフが倉庫として使っていたトレーラーの寝室の屋上に飾られていた絵画はジャクソン・ポロックという画家の絵でした。
こんな絵。
彼は20世紀の抽象表現主義の代表的な画家だそうで、アクション・ペインティングと呼ばれる画法で脚光を浴び、彼を起点にニューヨークこそ美術の中心と考えられるようになったんだそう。
美術に関しては知識もなければ絵心もものすごくないんですが、中学の時こんなような技法で描かされたような。
てか、作中でこれ見て最初ヴァンヘイレンのベストアルバム!?と思いましたが、配色が同じなだけで全然違いましたw
そうそうジャクソン・ポロックは「エクス・マキナ」でオスカー・アイザック演じる変態CEO・ネイサンの家の壁にも、彼の絵が飾られていましたね。
ルイス・キャロル
ウルフが使っていた偽名はルー・キャロル。後に彼からとったのでは?とメリーデスは予測していきます。
「不思議の国のアリス」の作者として有名な方ですが、数学者という肩書もありました。そして、てんかんを患っていたとも言われています。数学が得意で発達障害を持っていたとなると、ウルフも親近感がわくわけですね。
モハメド・アリ
幼少のころのウルフが黙々とジグソーパズルを組み立てているシーンが冒頭映し出されます。表は真っ白(むしろピースを逆にして作っていた)でしたが、裏には伝説のプロボクサー・モハメドアリがノックアウトする写真の絵が映っていました。
モハメドアリもまた失読症という発達障害を抱えながらも、ボクシングの頂点に立った男。ウルフも無意識に彼に憧れ、どんなハンデも乗り越えられるという意味合いを込めた演出だったのではないでしょうか。
まとめ
正直宣伝に煽られた感じがします。裏の顔を持つ男がものスゲー頭脳で相手を欺き、超絶アクションで敵をぶっ倒していく、ウルフ無双なのかな、と。
アクションもカット割りのせいもあってか、動きが鈍く感じキレのないアクションに見えてしまった気がします。というか全体的に少ないんですよアクションが!
話も黒幕は大方予想がついてしまうかもしれませんが、終盤での苦笑的サプライズ(これウォーリアーでしょww)、そして、ウルフをサポートする謎の女の正体が出てきたときはちょっと感動しました。
うまくいけばシリーズ化できたかもしれませんが恐らくないでしょう。いやどうだろ。
というわけで以上!あざっした!!
満足度☆☆☆☆★★★★★★4/10