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【主張】「辺野古」判決 知事は和解条項の尊重を

【主張】「辺野古」判決 知事は和解条項の尊重を

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古沖への移設をめぐる国と県の訴訟で、最高裁は国側の勝訴を言い渡した。

 移設に反対する翁長雄志(たけし)知事が昨年10月、前知事による辺野古沖の埋め立て承認を取り消した処分は違法であると、最終的な判断が下された。

 日米同盟の抑止力を確保する点でも、国と自治体の役割分担の観点からも妥当な判決といえる。

 国は移設工事の再開に向けた準備に着手する。翁長氏は早期に、承認取り消しを撤回する手続きをとってほしい。

 懸念されるのは、翁長氏が判決を受けて「今後も辺野古に新基地を造らせない公約実現に向けて取り組む」と述べたことである。

 前知事が許可した岩礁の破砕許可は来年3月末に期限が切れる。この許可の継続や、一部工事の設計変更を認めない手段をすでに検討しているという。

 しかし、国と県は今年3月の和解で「(確定判決の)趣旨に従って誠実に対応する」と約束した。徹底抗戦は司法判断の意義を無視するだけでなく、国との信頼関係を大きく損なう。

 実際に対抗手段がとられれば、国は県に対する損害賠償請求を検討する。

 地方自治法に基づく代執行の手続きをとる事態も起きる。再び、和解前のように双方が訴訟をぶつけ合うのだろうか。

 尖閣諸島など安全保障環境の悪化を考えれば、対立の悪循環に陥っていいはずがない。

 沖縄の基地負担軽減の成果も、翁長氏は考慮に入れてほしい。22日には国内最大規模の米軍専用施設である北部訓練場の過半が日本側に返還される。

 県民を含む日本国民を守る安全保障政策は、自治体ではなく国が担う。海兵隊など沖縄の米軍は、安全保障条約に基づき日本と地域の平和を守るために存在していることも思い起こしたい。

 判決に先立ち、米軍は名護市沖への不時着を受けて飛行停止していた垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの運用を再開した。事故原因となった空中給油は、改善措置がとられるまで停止を続ける。

 政府は、米側の説明に合理性があるとして受け入れたが、地元の反発や戸惑いは残る。事故の究明や再発防止の徹底を、引き続き米側に強く働きかけるべきだ。

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