親が元気なうちにやっておきたい贈与
たとえば、節税対策のひとつが「生前贈与」の活用。贈与を受けた人は、贈与税を支払わなければならないが、税制優遇制度を利用すれば相続時の税負担を軽減することも可能だ。
「相続時精算課税」は、60歳以上の親や祖父母が、20歳以上の子供や孫に贈与した場合、2500万円までは贈与税が課税されず、相続時にその生前に贈与した財産の相続税を納税するという制度。「暦年課税」は、年間110万円までの基礎控除の範囲内でコツコツ贈与していくというものだ。19年3月までは、30歳未満の子供や孫に教育資金を贈与した場合に、1500万円まで非課税になる「教育資金の一括贈与」もある。こうした制度を利用すれば、節税しながら少しずつ財産を移転できる。
また、葬儀費用は相続税の債務控除となり、遺産から差し引けるので、節税したいなら盛大な葬儀を行うのもひとつの手段。通夜や告別式の費用、戒名やお布施など寺院関係の費用まで、葬儀にかかった費用の多くは債務控除として認められる。弔問客からの香典は非課税だ。一方で、香典返戻費用や初7日、49日の法要費用、墓地整備買い入れ費用などは控除される葬儀費用に含まれないので、注意が必要だ。
こうして無事に遺産分割協議が決着し、それぞれの持ち分に合わせた相続税の申告と納税が済むと、残された家族に託された手続きも一段落する。
10カ月もある、と思っていても、相続税の納税期限はすぐにやってくる。うっかり忘れると、必要以上に高い税金を支払うことになったり、不要なクレジットカードの年会費を払い続けることにもなりかねない。ひとつひとつ確認しながら手続きをしておこう。
マイナス財産があるなら相続放棄や相続限定承認も考えよう
▼相続財産にはどんなものがあるか
【プラスに作用するもの】
●土地・建物
●借地権・貸宅地
●現金・預貯金・有価証券
●生命保険金・退職手当金・生命保険契約に関する権利
●貸付金・売掛金
●特許権・著作権
●貴金属・宝石・自動車・家具
●ゴルフ会員権
●書画・骨董
●自社株
【マイナスに作用するもの】
●借入金・買掛金
●未払いの所得税・ 固定資産税・ 住民税等の公租公課
●預かり敷金・保証金
●未払いの医療費
【非課税財産】
●お墓・永代供養代金・香典・ 国などに寄付した財産
●生命保険金・ 退職手当金のうち一定額
▼わが家は相続税がかかるのか?
基礎控除額= 3000万円+600万円 ×法定相続人の数
⇒基礎控除額より課税遺産の総額が低ければ、相続税はかからない
生前贈与でも、死亡から3年前までさかのぼって相続税対象に
▼親にお願いしたい非課税贈与の一例
●その都度贈与
祖父母や親から20歳以上の孫か子供への贈与。1年間で110万円までの贈与は非課税。贈与者の死亡から3年前分までの贈与は相続税の対象になる。
●教育資金贈与
この目的で祖父母や両親が、30歳未満の孫や子供名義の専用口座に一括で振り込んだ1500万円まで(子供1人につき)が、申告書を提出することにより非課税に(認められないものもある。期限は2018年度まで)。使い切らなかった分は30歳のときに課税対象に。
●結婚・子育て資金の一括贈与
この目的で祖父母や両親が、20~49歳の孫や子供名義の専用口座に一括で振り込んだ、1000万円まで(子供1人につき)が、申告書を提出することにより非課税に。金融機関には領収書の提出も必要(認められないものもある)。使い切らなかった分は50歳のときに課税対象に。
注意点:贈与者が死亡したら使い切らない分が相続税の課税対象に。早めの贈与、支出が吉。
大山広見
実績件数日本一の相続専門の税理士法人レガシィの代表社員税理士。年間100件以上の相続税申告事案の責任者を担当。『フローチャートだけでチェックする! 相続税と贈与税の実務手順』の執筆リーダーなども務める。
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